〈食べログ3.5以下のうまい店〉

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー!
食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。
食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。

点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

そこで、グルメに精通したあの人にお願いして、まだまだ知られていないとっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回は、京都在住のライター・中井シノブさんが通う、気軽なのに本格派の料理を味わえるビストロをご紹介。

教えてくれる人

中井シノブ

京都在住ライター。京都を中心に関西の飲食店を取材紹介する。取材店は1.5万軒以上。趣味は外飯、外酒、猫とまったり。「本願寺新報」「あまから手帖」でコラム記事を連載中。

われらが「トレイントレイン」の魅力はたくさんある!

2022年に開業するや、瞬く間に京都人御用達店になったビストロ「トレイントレイン」。早めに予約しなきゃと、京都の人たちが言うその人気の理由は? ここでは「トレイントレイン」の魅力を一つひとつ紹介していきたい。

元は旅館だった町家を改装した店舗。今もその看板が残る

まずは、便利なロケーション。「トレイントレイン」がある御幸町通三条は、地下鉄東西線「京都市役所前」や阪急電鉄「京都河原町」、京阪電車「三条」など、いずれの駅からも歩いて10分以内。映画館や飲食店などが集まる繁華街河原町界隈や、ビジネス街烏丸御池からも近いという京都人にとっても観光客にとっても、訪ねやすくありがたい場所なのだ。

さらにいうなら、「トレイントレイン」がある御幸町通は、京都のファッションストリート。古着店やセレクトショップなども多く、週末には老若男女が闊歩する。

シックでいて、足を踏み入れた途端心が浮き立つ店内。さあ、今日は何を食べる?

町家を改装した落ち着く空間、親身でいて熟達したサービスも、ついつい長居してしまう理由なのだが……。店主の濱一矢さんは、かつて木屋町で人気を博したイタリアン「ラ・マスケリーナ」で接客担当を務めた人。客一人ひとりに向き合い、好みを聞いて対応する、そんなサービスが話題となって人を呼び、木屋町のカリスマと言われたほど。ところが、濱ファンがたくさん居るにもかかわらず、彼はさらなる成長を目指した。「京都とは違う場所で経験を積みたい」と東京へ移住したのだ。

伝説のサービスマン濱さんと名フレンチで腕を磨いた篠原シェフという最強タッグ

店主の濱一矢さん(左)とシェフの篠原健太郎さん(右)。ふたりの掛け合いも楽しい

そんな濱さんが、8年の歳月を恵比寿のフレンチで過ごして京都に戻り、2022年2月、自店を開業した。かつての濱さんを知るファンは、こぞって店に駆け付けた。「おかえりなさい、帰ってきてくれてありがとう」と。もうひとつうれしいことがあった。濱さんが開業するにあたり、東京で一緒に働いていた料理人の篠原健太郎さんも、京都へ。篠原さんは、和歌山の「オテル・ド・ヨシノ」など正統派のフレンチ畑で腕を磨き、東京で濱さんと出会い、京都で開業する濱さんの思いに賛同したという。

まずは、多彩な小皿料理で乾杯!

手前左から時計回りに「紫とうがらしの味噌和え」「キノコのマリネ」「鶏レバーのムース」。3品1,100円

息の合ったふたりが目指すのは、牛ステーキやラムチョップなど王道のビストロ料理も出すけれど、ちょっとつまんでワインを飲める小皿料理もある居酒屋のようなビストロ。「鶏レバーのムース」や「キノコのマリネ」「紫とうがらしの味噌和え」。ビールもワインもハイボールも、どんなお酒にも合いそうな小皿料理は、毎日15品ほど。少量ずつでよければ3種セットや5種セットもあるから、ひとりでもあれこれ注文できてありがたい。

ワインやお酒に造詣の深い濱さんが、ワインもセレクト。料理に合うワインを丁寧に説明してくれるから、思わず「じゃ、そのワインで」とお任せしてしまうことが多い。ひとりなら濱さんとの会話も楽しめるカウンターがおすすめだが、家族や友人と一緒なら料理をたくさん注文して、テーブル席でワイワイ楽しみたいところ。