毎日食べる「ランチ」にどれだけ情熱を注げるか。それが人生の幸福度を左右すると信じて疑わない、編集部員や食いしん坊ライターによるランチ連載。話題の新店から老舗まで、おすすめのデイリーランチをご紹介!

〈ニュースなランチ〉

パン TOKYO 百名店選出の「カーラ・アウレリア」がベーカリー複合施設としてリニューアル

写真:お店から

「大丸東京」に出店し「食べログ パン TOKYO 百名店」にも選出された「カーラ・アウレリア」。2023年1月15日(日)、15年の歴史に幕を閉じたが、この度ベーカリー激戦区の清澄白河で、新たなベーカリー施設として生まれ変わった。それがベーカリー、ラボキッチン、レストランからなる「Farm to Me SUGAR FACTORY」だ。

藤枝敏郎シェフ 写真:お店から

手がけるのは、種子島に自社農園を持ち、国内の製糖メーカーでは数少ないサトウキビの栽培も行っている大東製糖。ベーカリーを取り仕切るのは「フォション」などで経験を積み、前身「カーラ・アウレリア」を牽引してきた藤枝敏郎シェフだ。

含蜜糖(蜜分を含んだ茶色い砂糖)のミネラルを含んだ味わいや、マスキング効果を活かしたパンづくりは引き継ぎつつ、パン職人・藤枝氏が産地を訪問し、厳選した安心・安全で信頼できる国産小麦粉を100%使用。リニューアルに際し、日本一のおいしさを目指して、製法や材料のブラッシュアップが行われた。

写真:お店から

注目は、バゲット・カンパーニュ・ライブレッド・ブリオッシュ・高加水パンという5つのキーブレッドだ。例えば高加水パンは大麦の焙煎をアルファ化する前に止めることにより、吸水率を格段に高め、トレハロース不使用でありながら水分由来の軽やかなジューシーさとモチッと食感を誇る。大麦や全粒粉を使ったライブレッドも、白砂糖ではなく、まるい甘さの含蜜糖を使うことで、味わいの馴染みが良く、自然な美しい色合いに仕上がる。

このほか、自社のサトウキビ畑で裏作として栽培された安納芋を使ったパンなど、惣菜パンも含め常時40〜50種類ほどのパンがそろう。

人気イタリアン「アル・ケッチァーノ」奥田シェフ監修! パンと料理のマリアージュが楽しめるベーカリーレストラン

写真:お店から

建物の3階にある開放的な隅田川ビューのレストランは、地産地消のイタリアン「アル・ケッチァーノ」の奥田政行シェフが監修。料理長を任されたのはイタリアの星つきレストランで修業後、奥田シェフが監修した石川県白山市の「イル・ケッチァーノ」(現在閉店)で料理長を務めた相良忠政シェフだ。

相良忠政シェフ 写真:お店から

パンと料理のマリアージュをテーマに、日本各地の食材を活かした料理をコース仕立てで味わえる。しかもランチコースは、キーブレッド5種の食べ放題とそれに合わせたスプレッドが6種、サラダとスープ、料理が2種類ついて2,200円。これに本日のデザートと、ティーブレンダーが厳選した紅茶かコーヒーがついたランチフルコース(3,600円)もある。

バゲット、カンパーニュ、ライブレッド、ブリオッシュ、高加水パンはそれぞれ、リベイクして温かい状態で提供される。スプレッドは、新潟県沿岸の海水を汲み上げて作った「月の雫の塩」をトッピングしたバター、ピンクペッパーをのせた北海道のチーズ工房「ファットリアビオ」のリコッタフレスカ、白ワインで煮込んで作り上げた庄内ポークのリエット、ごまペーストや複数のスパイスがアクセントのヒヨコ豆のなめらかフムス、てんさいの砂糖で焚き上げた甘酸っぱい長野産ルバーブのジャム、シチリア産オーガニックオリーブオイルの6種類。スプレッドの内容は毎月変わるとのことで、通う楽しみが増えそうだ。

自家製のルバンダネとサワーダネの2種類の発酵ダネを使ったマイルドな酸味のカンパーニュには、庄内ポークのリエットを。フランスのイズニー社の発酵バターと卵、素焚糖を使うことで保水性を高めたブリオッシュには、ルバーブのジャムやリコッタというように、おすすめのマリアージュも提案してくれる。自分好みのパンとスプレッドの組み合わせを探すのもまた楽しい。

写真:お店から

サラダは、キビ酢と玉葱のドレッシングを使用このキビ酢は、原料のサトウキビから大東製糖が栽培・製造したものだ。

写真:お店から

スープは、山形県米沢のカボチャを使った冷たいスープが登場。どちらも余分な味付けはせず、厳選された素材の良さを生かしたシンプルで丁寧な調理がなされており「アル・ケッチァーノ」のエッセンスを感じる味わいだ。

「西森さんのフルーツトマトとファットリア・ビオさんのモッツァレラ、生ハムのカプレーゼ」(写真左)、「庄内豚の田舎風テリーヌとキャロットラペ」(写真右)

料理も月替わりで2種類が出される。

取材日のメニュー「西森さんのフルーツトマトとファットリア・ビオさんのモッツァレラ、生ハムのカプレーゼ」は、高知県の西森さんが手がけたフルーツトマトの甘酸っぱさと、国産チーズの名手「ファットリア・ビオ」のモッツァレラチーズがキーブレッドと相性抜群。「庄内豚の田舎風テリーヌとキャロットラペ」は、主役となるパンの味わいに寄り添うよう、一般的なテリーヌよりも油分を抑えるため、豚レバーではなく山形さくらんぼ鶏のレバーが使われている。密度の高いみっちりしたテリーヌは、ピスタチオやクルミのナッティな香ばしさもアクセントだ。添えてあるキャロットラペにも先述したキビ酢が使われている。

コーヒーは、ブルックスが手がける「Farm to Me」オリジナルのダークロースト。紅茶は「沖縄ティーファクトリー」を手がけるティーブレンダーの内海智子氏による「サンセットブレンド」を、サモワールで淹れてくれるという本格派だ。精糖メーカーが手掛けているだけあり、コーヒーと紅茶には数種類の砂糖が添えられる。 もちろんイタリア産や山形県産など、料理に合うワインもあるので昼飲みも叶う。自社栽培のサトウキビで造った自家製ラム酒のカクテルなど、この店ならではのアルコールドリンクも見逃せない。

隅田川ビューの屋上テラスで、購入したパンを味わうことも!

さらに建物の屋上には、隅田川を大パノラマで見渡せるテラス席がある。こちらでは1階で購入したパンやドリンクを味わえるほか、レストラン利用の人も、例えばディナータイムなら夜景を眺めながらお酒を楽しむことができる。レストランスタッフに屋上利用の旨を伝えれば、持ち運びできるカップにカクテルなどを作ってくれるとのことなので、秋の夜風を感じながらのんびり過ごすのに最適だ。

窓一面隅田川ビューの開放的でゆったりとした空間が広がるベーカリーレストランの「Farm to Me」。ディナーだけでなく、ランチも予約が可能なので、並ぶことなく特等席で優雅なランチを楽しんでみては。

※価格はすべて税込

撮影・取材:中森りほ

文:中森りほ、食べログマガジン編集部