フレンチをベースに自由な感性をしのばせた料理に心も胃袋もつかまれる!
ベースはフレンチにあるが、双川シェフが作る料理はボーダーレス。居酒屋でヒントを得たメニューもあれば、伝統的なフランス料理を軽やかにブラッシュアップしたものもある。創作性が高い料理は肝心の味が置いてきぼりになることもままあるが、突飛すぎず凡庸にもならない双川シェフの料理には、長年の経験のもとに成り立つバランス感覚が光る。
たとえば、ホッキ貝のマカロニサラダは一見シンプルなひと皿だが、軽く炙ったホッキ貝の香りとシャキシャキとした食感が、マカロニサラダの魅力をぐっと底上げしており、こうしたさりげない“ひねり技”をアイディアというのだと納得する。
卵と牛乳、クリーム、チーズのみで作るキッシュロワイヤルはフランスのロレーヌ地方に伝わる伝統料理を潔くアレンジ。具材を使わず、ふるふるとした“新感覚”の食感に仕立てる手腕に感嘆のため息がもれる。
「メニューの表記ではあえて多くは語らず(笑)、召し上がっていただきながら、そうきたか!とお客様に思っていただけたらうれしいです」と言う双川シェフ。気がつけば、自由な発想と想像をはるかに上回る楽しさにすっかり心を奪われ、魅惑の“マジックアワー”にどんどん引きこまれていく。
料理にさりげなく寄り添うワインのセレクトにも惚れ惚れ
そして、双川シェフの料理を支える“パートナー”はやっぱりワイン。セレクトは双川シェフの修業時代をともにした奥様の緑子さんが担当しており、その合わせ方には無理なく違いを引き立てあう“あ・うんの呼吸”が感じられる。もしワイン選びに悩んだときは、優しく朗らかな緑子さんに相談を。料理にぴったりと、どこまでも自然に寄り添うワインは口福と同時に、しあわせな気持ちを運んでくれるはずだ。
新旧さまざまな店が立ち並ぶ麻布十番で、癒やしとときめきを深夜まで。気心の知れた相手とはもちろん、ひとりでもゆったりとくつろげるカウンターレストランは通えば通うほど愛着がわくこと間違いなし。優しくおだやかな気持ちに包まれる「たそがれ」時のように、ささやかなしあわせに満たされる時間に、つかの間、身をゆだねたい。