〈食べログ3.5以下のうまい店〉

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー! 食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。

食べログでは、口コミ数が少なかったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり、点数が上がると予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

そこで、グルメなあの人にお願いして、まだまだ知られていないとっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。今回は、ライター・大石智子さんがリアルに通う、本格派ベトナム料理店をご紹介。

教えてくれる人

大石智子

出版社勤務後、フリーランス・ライターとなる。男性誌を中心にホテル、飲食、インタビュー記事を執筆。ホテル&レストランリサーチのため、毎月海外に渡航。バー巡りも欠かさない。スペインに行く頻度が高く、南米も好き。拠点は東京だが地元である静岡にも毎月滞在し、主に中部エリアを食べ歩く。柴犬愛好家。Instagram(@tomoko.oishi)

ひとりでもふらりと入れる、お洒落なカフェのような雰囲気

「Diner Vang KACHIDOKI(ダイナー・ヴァン 勝どき)」は勝どき駅から徒歩2分に立地。清澄白河に1号店があり、その2号店として2022年12月にオープンした。勝どき店はガラス3面からなるお洒落なカフェのような外観で、地元住民がふらりとフォーやワインを求めて立ち寄ることも多々ある。

オーナーがもとはフラワーショップを営んでいたこともあり、店先にはセンスのよい鉢が並んでいる

1テーブルだけだがテラスも設け、そこでは愛犬を連れて食事することも可能だ。

木の家具と陶器が調和したセンス溢れる店内。ベトナムでは黄色が縁起のいい色とされているため壁は黄色。店名の「ダイナー・ヴァン」も“黄色のダイニング”を意味する
 

大石さん

勝どき駅前の公園の先にあるベトナム料理屋さん。その公園というのが夕方になるともの凄い数の子供たちが遊ぶので辿り着くまでが平和な雰囲気(笑)。オーナーの石井りかさんの家族がベトナムのハノイに住んでいることもあり、現地で買い付けた雑貨や器が並び可愛い空気感です。カウンターの下のタイルは美濃焼だそうで、焼き物が盛んなハノイ近郊でよく見る雰囲気のものを探したとか。石井さんが青山にあるミュージックバー「BAROOM」をプロデュースしていることもあり、このお店のプレイリストも趣味がいいです。

厨房に立つのは、出汁にこだわるハノイ出身のシェフ

シェフのチャン・ビエット・ホワンさんはハノイ出身。ハノイの伝統料理の店で腕を振るっていたところ「ダイナー・ヴァン」のベトナム人スタッフのひとりに声をかけられ、勝どき店開業のために来日した。

1927年創業のホーチミンの老舗ホテル「レックス ホテル サイゴン」で昔使われていた食器類が並ぶ

麺類のスープには20時間煮込んで作る出汁を使い、調味料はすべてベトナムで買いつけ。パクチーや、ベトナムのミント、ラオラム(ドクダミのようなハーブ)は茨城にある石井さんの親族の畑で栽培したものを使っているのでフレッシュさも満点だ。

 

大石さん

料理の随所でベトナムのミントやラオラムが香るので、現地気分に浸れます。清澄白河もそうですが、お店のスタッフが全員ベトナム人というところも海外気分。予約困難店もいいですが、個人的にはアジア料理は思いついた時に食べたい。ここは予約なしで入って1時間以内でサクッと帰るという現地の人の日常みたいな夕食ができるのも魅力的です。オーナーもそんな気軽さを前提にお店を作ったと聞きました。