大石さんが心をつかまれた料理はこちら! 

まずは前菜で飲み、ベトナム酒場的に利用するのもあり

750円以下の前菜が5種あり、ハーブをたっぷり使ったサラダが3種あるので、酒場感覚でそれらをつまみながら飲み始めるのが常連流。多くの料理にマムトム(海老の発酵調味料)などベトナムらしい旨味を加える調味料が使われ、食欲を増進させる。全品ベトナムで買いつけた可愛い食器で提供されるため気分も明るくなる。

乾燥したライスペーパーを水で濡らして巻く「牛肉のライスペーパー巻き」1,450円
上は「トム ラン ムーイ(海老の香味揚げ)」1,250円、下は豚肉や干し海老のオイルで温野菜を食べる「コー クエッ(ベトナム風バーニャカウダ)」1,200円
 

大石さん

生春巻はどこも具材が同じになりがちですが、ベトナムではもっと色んなものを自由に巻いているとのこと。ここで生春巻の具材となるのは牛肉とレモングラスのサラダのボー タイ チャーン。そこに野菜を足して、友達とお喋りをしながら自分で巻く時間が楽しいですね。ベトナム風バーニャカウダは豚肉や干し海老がごろっと入るオイルで食べるので、野菜料理にしてお酒がよく進みます。

アヒルの唐揚げをレモングラスの素揚げと一緒に食べる料理は現地ではおなじみの一品だが、日本ではかなりレアだという。

ヴィッ ラン モーイ(アヒルとレモングラスの唐揚げ)」1,500円
 

大石さん

レモングラスの風味が利いて軽さのある肉料理ということでローヌのロゼをおすすめされたのですが、本当に合います。ロゼの爽やかさがレモングラスに繋がるし、肉のボリュームにも負けないです。

滋味深いスープやタレにはまる麺類は必食!

〆の麺が7種揃う充実ぶりで、ラインナップは以下の通り。頭文字がフォーから始まるものが定番の平麺、ブンから始まるものが丸い細麺となる。

・フォーボー(牛肉のフォー)1,200円
・フォーガー(鶏肉のフォー)1,050円
・フォートロン(汁なしフォー)1,200円
・ブンボーサオ(汁なしつけ麺)1,200円
・ブンダウマムトム(発酵海老ソースのつけ麺)1,400円
・ブンボーフエ(フエ地方の辛い麺)1,200円
・ブンリュークア(蟹出汁トマト麺)1,200円

ソースと麺、具材をよく混ぜて食べる「フォー トロン(汁なしフォー)」1,200円
北部(さっぱり系)と南部(甘め)のフォーをミックスした味つけの「フォーガー(鶏肉のフォー)」1,050円
 

大石さん

牛のフォーは焼いた牛スネ肉から出汁をとり、鶏のフォーは鶏ガラから出汁をとるなど、スープも別々に作られているのが丁寧な印象。そのスープがおいしいので、いつも汁を熱いうちに一気に飲んでしまいます(笑)。ベトナムのように薬味はカゴでの別添え。途中、卓上にあるニンニク酢やチリを加えて味変するのもはまります。ひとりごはんの夜なら、前菜1品にフォーを頼んでワイン1〜2杯なんて日も。麺の種類が多いので、気候や気分に合わせて選べるのもポイントです。ガツンとした味が好きならブンダウマムトムやブンボーフエがおすすめ!

ナチュールを気軽に飲めるワイン処としての側面もあり

ベトナムビールの「333」やベトナム焼酎も置くが「ダイナー・ヴァン」はワインも充実。基本的にはナチュールで、軽やかながら華やかさも備えるワインを集める。フランスをメインに、イタリアやギリシャも用意。

ドメーヌ・ロッシュ・ビュイシエールのコート・デュ・ローヌ(左から2番目)はじめ、自然派の造り手によるワインが揃う
 

大石さん

ベトナム料理はハーブや発酵食品をたっぷり使うので、そこに通ずる酸味や香りを帯びたナチュールがよく合う気がします。こちらでは常にナチュールをグラスで4種類ほど提供しているので料理に合わせて飲むのもいいですし、泡をボトルで頼むのも好きです!

勝どきというと少し離れた住宅街の印象があるが、同店は銀座丁目交差点からタクシーで5分ちょっと。友人に「今晩、夜ごはん一緒に食べない?」なんて声をかけて店が決まっていない時、ふらりと入れる良店としてブックマークしておこう。

急なデートのお誘いとしても、ここのお洒落さとカジュアルさはあり。ベトナムの風を感じられる店内で気取る者は誰もいない。野菜やハーブたっぷりの料理を前にひたすらお喋りするにちょうどよいのだ。ゆるりと心地よい時間と、本格的でエキゾチックな料理をお楽しみあれ。

※価格はすべて税込。

撮影:長尾真志
文:大石智子、食べログマガジン編集部