【第3週のカレーとスパイス】イタリアン×インネパ=大優勝のうまさ! カレーマニアが発見した、希有な存在のインドネパール料理店「ぽるこネ。」

面白いお店を見つけました。最初にわかりやすく説明すると「イタリアンとインネパの融合」です。

インネパというのは、ネパール人シェフの手によって日本人向けにアレンジされたインド料理風のメニューをメインに、アジア各国の料理を出すお店の総称で、カレーマニアの間で「インドネパール」を略して「インネパ」と呼ばれるようになったという経緯があります。日本に存在するインド料理店に見える店の多くは本格インド料理ではなく、実はインネパ店だったりします。

そんなこともあってインド料理原理主義者には敬遠されることも多いインネパなのですが、中には非常に面白い個性的な料理を出し、味のレベルが高いお店も少なくありません。というわけでむしろハードコアなカレーマニアの中にはインネパ店巡りを好んでする方も少なからず存在し、かく言う僕もその一人です。

そんな僕が久々に気に入ったインネパ系のお店が「ぽるこネ。」なのです。

そもそもこのお店がスタートした経緯からして実に面白いのです。こちらは五反田にある豚料理に力を入れたイタリアン「ぽるこ」の姉妹店。ぽるこのスタッフがまかない用にと旦那さんの作る料理をお店に持っていったところ、オーナーがそれをいたく気に入り、その旦那さんをシェフに迎えて新たなお店を出そうとできたというもの。オーナーは、料理のおいしさもさることながらネパール人の優しい人柄にも感銘を受け、日本に来た意味を持ってもらいたくてお店を開いたと語ってくれました。

昼にはネパール名物ダルバートをはじめさまざまな定食。夜はタンドール料理やオリジナル料理、〆に日替わりのカレーもあります。

お通しのナン

ディナータイムに行ったのですが最初にお通しとしてナンが出てきてびっくり。食べてみるとインネパ店によく見られる甘味が強いナンとは別物の、軽やかかつもっちり感もある絶妙なナンで期待が一気に膨らみました。

「海老とブロッコリーのサンボル」

最初に前菜として「海老とブロッコリーのサンボル」800円を。マヨネーズソースであえた海老とブロッコリーにココナッツファインがあしらわれ、これによって一気にアジア感が高まるという仕上がり。この柔軟なアイディアとセンスの良さに感心。

「ぽるこネ。煮込み」

店名を冠した「ぽるこネ。煮込み」800円はラム肉と野菜をトマト煮込みにしたもの。こちらもアジア料理感と西洋料理感どちらも感じる仕上がりで、こちらのお店のスタンスを感じるものでした。

タンドール料理で何か面白いものはないかとメニューを見ればサルシッチャ(イタリアのソーセージ)のタンドールがあるじゃないですか。しかもタレッジョ(イタリアのウォッシュタイプチーズ)のソースがかかるという。これは面白いということで「自家製サルシッチャの芳醇タレッジョソース」1,200円を。

「自家製サルシッチャの芳醇タレッジョソース」

出てきたものを見て笑みがこぼれました。シークケバブにチーズソースがかかった、いわゆるチーズケバブなのです。しかし言われてみればシークケバブはサルシッチャと遠くない料理であり、ソースもタレッジョ特有のクセは中和されて食べやすく、味自体は間違いなく良いものであり、この仕上がりにも楽しさを味わうことができました。

「本日のカレーライス」

〆に「本日のカレーライス」800円を頼むと、2人で1人前を頼んだ僕らを見て最初からハーフサイズを2つ出してくれるというありがたい心遣い。

カレーはチキンとマッシュルーム。これもインネパ的カレーに洋食的感覚がミックスされたものであり、こちらのシェフの味付けセンスの良さを感じる仕上がりでした。ご飯もカルダモンと炊いたバスマティライスであり、カレーライスとして十分においしいもの。

デザートに頼んだ「チャイノコッタ」300円は、チャイのパンナコッタなのですがこのネーミングセンスが素晴らしく、食べてみれば味も素晴らしいという。

インネパ店はありふれているとも言える程各地に多数存在していますが、その中でこのようなスタイルのお店は希有。そして希有なスタイルのインネパ店って実は当たりのお店である確率が高いのです。カレー好きな方、インネパと敬遠せずに色々と食べ歩いてみてください。手始めにここからいかがでしょうか?

【第4週のカレーとスパイス】ランチは早くも行列!「ダバインディア」の系譜を継ぐインド料理店がまたもや誕生「Indian Street Food & Bar GOND」

カレー好きなら誰もが知る行列の人気店「ダバインディア」が閉店したことは本連載でも先日お知らせしました。そしてダバインディアのスタッフ、シェフが独立してできたお店がその際にご紹介した「TOKYO BHAVAN」なのですが、続いてもう一つダバインディアから生まれたとも言える「Indian Street Food & Bar GOND」が新御茶ノ水駅近くで開店しました。

こちらはダバインディアを手がけていた株式会社チョティワラが運営する新店舗。過去にも「カイバル」「ハリドワール」などインド料理マニアを喜ばせてきたお店を運営してきた会社で、現在は「グルガオン」と「GOND」の2店舗が営業中という形になります。

開店したてということもあってか、ランチタイムは早くも大行列。しかし、その行列さばきが見事で、できるだけ待ち時間を少なく回転させるさまざまな配慮と工夫を見て、流石長年行列店を運営してきただけのことはあるなと感心しました。

「本日のカレー3種」

「本日のカレー3種」1,200円は主食を選べます。ナン(大)、ハーフナンとイエローライス、そして100円追加でチョティワラ系の名物であるチーズクルチャとイエローライスに変更も可能とあらば、チーズクルチャを選ばないわけにはいきません。

チーズクルチャ

カレーは日替わりで、この日のカレーは辛口がチキンキーマ、中辛がオクラと豆のカレー、マイルドが海老カレー。このあたりのメニュー構成は姉妹店であるグルガオンと同じでわかりやすいです。

カレーの味も初心者にわかりやすく、マニアも納得できるという絶妙の着地点。辛口と言っても辛すぎず、甘口ではなくマイルドという設定も良いです。サラダはインド料理のカチュンバル的テイストでさっぱりと、カレーも重すぎない仕上がり、だからこそチーズクルチャが活きてくるのです。トロトロにとけたチーズのビジュアルとにんにくの香りが食欲を増進させます。イエローライスにも工夫があり、主食がおいしいからこそカレーのおいしさも増すという形。

ランチも良いですが店名にもある通り、こちらの売りはインドのストリートフードでお酒を飲むこと。

「ダヒワダ」
「ペッパーソルトハイボール」

「ダヒワダ」600円は南インドの甘くないドーナツをヨーグルトソースに絡めたもの。さっぱりとした味は前菜として最適であり「ペッパーソルトハイボール」750円との相性も良好。食欲に火がつきます。

「ゴンドチキン65」

続いて店名を冠した「ゴンドチキン65」1,100円を。こちらは南インドの軽食。わかりやすく言うなら南インド風スパイシー鶏の唐揚げ的な料理で、こちらは揚げてからさらに炒めているという手の込んだもの。しっかりとスパイシーなのですが野菜もたっぷりで、合わせて食べれば辛さも程よくなり、辛いものが好きな人は唐辛子も一緒にかじれば良いという形で、やはり初心者でもマニアでも楽しめる形になっているのが素晴らしいです。

店内はインドの先住民族が描いたゴンドアートがそこかしこに飾られて異国感漂う雰囲気。コンセプトもしっかりとしていて、どこに何を届けるのかというのが明確であり、長年人気インド料理店を手がけてきた企業だからこそのクオリティであり、安定感です。

超人気店ダバインディアから派生した2つのお店。どちらも素晴らしいので食べ比べてみるのもおすすめですよ。

※価格はすべて税込です。

写真・取材:カレーおじさん\(^o^)/

文:カレーおじさん\(^o^)/、食べログマガジン編集部