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とんかつの「つかんと」と住所非公開レストラン「atirom Tokyo」がコラボ
低温調理で驚くほどやわらかいと評判のとんかつ「つかんと」と、料理人や生産者とのコラボレーションを行う住所非公開のレストラン「atirom Tokyo」がタッグを組み、期間限定の洋食店「つかんと七洋軒P.O.」を2023年1月にオープンさせた。
メインシェフは「atirom Tokyo」の高橋七洋さん。洋食の名店「小川軒」や銀座のワインバー「シノワ」などを経験したシェフだ。フレンチやイタリアンではない、日本ならではの本格的な“洋食”が六本木で楽しめるようになった。
洋食と言えばコレ!? パスタじゃなくて「スパゲッティナポリタン」

同店のメニューは洋食が中心。しかしその根底には「東京料理」というコンセプトがある。まだオープンしたばかりなので「東京料理」の定義は少しずつ変化をしていくだろうと高橋シェフは言うが、一つには世界のさまざまな料理を取り込み一体化させて生まれる新しい料理だとのこと。そしてそのベースともなるのが「洋食」なのだ。
その洋食らしさが際立っているのが、同店の「ザ・スパゲッティナポリタン」。太めのスパゲッティに赤い皮のソーセージを使ったナポリタンは、誰もが思い浮かべる昔ながらの喫茶店のナポリタンだろう。トマトケチャップの風味が懐かしさを誘いながらも、フレッシュなトマトソースも合わせているので穏やかな酸味もあり、味わい深さが数ランクアップする。奥行きのある風味だからこそ、赤ワインにもぴったりだ。
ちなみに、写真の量で1人前。かなりのボリュームとなる。ハーフポーションもあるので、色々楽しみたい人はハーフにすると良いだろう。
特製デミグラスソースたっぷりのハンバーグ

丸くふんわりと形作られた「七洋軒のハンバーグ」は、しっかりとこねられたソフトでジューシーなタイプ。多くの洋食店で提供される少し苦みを利かせた重量感あるデミグラスソースとは異なり、さらりとしている。軽めなのにコクがあるのがポイントだ。ここにとろりと溶けたサムソーとレッドチェダー、2種類のチーズがかけられ、二重、三重の旨味を演出している。

ハンバーグにはデミグラスソースのほか塩もあり、甲乙つけがたいおいしさであることから、どちらも人気。1つ90gと食べやすいサイズなので、好きなほうを選んで1人1つで頼んでおきたいメニューだ。
しかもなんと、ハンバーグと同じ肉ダネで作るメンチカツもあるという。衣が肉汁をギュッと閉じ込め、よりジューシーに仕上がっているので、こちらもぜひ味わってほしい。
やっぱり頼んでしまう「つかんと」のやわらかとんかつ

同店に来たらやはり頼みたいのが「つかんと」のとんかつだろう。低温調理でじっくり火を通してから揚げるため、驚くほど柔らかくしっとりとした食感になる。「つかんと」自慢の新感覚のとんかつだ。長年、洋食に携わってきた高橋シェフ曰く「昔からのとんかつとは違う、進化したとんかつ。これも東京料理だ」とのこと。

とんかつはロースまたはヒレを選ぶことができ、とんかつに付けるソース類もまた「つかんと」同様のものが用意されている。

ソースは九州の甘みのある醤油で割った「つかんと」特製のもの。そのほかに八丁味噌や柚子胡椒、カラシ、藻塩、オリーブオイルなどがある。ソースでいただくならご飯がほしくなるが、スタッフのおすすめはオリーブオイルだ。特にオリーブオイルに藻塩を入れてその場で作るオリジナルオイルは、ソースでいただくとんかつとはまた違った料理と言える。お供にするならご飯ではなく、ワインだろう。
まるでリゾットのようなハーブたっぷりのオムライス

こちらも洋食の定番であるオムライス。しかし、同店のオムライスは少し違う。言うならば大人のオムライスだ。高橋シェフが「飲んだ後に食べたくなるオムライスを目指した」と言う通り、添えるなら同店自慢、白の自然派ワインだろう。
たっぷりのバターでハーブ入りの卵にサッと火を通す。表面は固まっているが、中は半熟の状態でチキンライスを包んでいくので、スプーンで頬張るとそこだけ卵かけご飯のようなとろみがある。チーズは入っていないのに、チーズのようなコクがあるのはバターのおかげだ。

そこにフレッシュトマトで作ったサラリとしたソースがかけられ、一緒に食べればまるでリゾットのようでもある。オムライスの上にたっぷり添えられたハーブはソースの中にも入っており、軽やかな香りが口内に広がるのも新鮮な体験だ。スッキリした白ワインが本当によく合うオムライスだった。
かつての郵便局を改装した店内は遊び心満載

同店のおもしろさは料理だけではない。元の店が、なんと郵便局なのだ。客席のスペースは、かつて郵便局員が事務作業をしていた、いわゆるカウンターの向こう側。写真には写っていないが、壁際には無骨な扉があり、そこはかつての金庫なのだとか。現在はワインセラーとして使っている。

実際に郵便局時代の設備がそのまま使われているのは窓口カウンターのみだが、郵便マークやポスターなど、雰囲気を盛り上げるインテリアは数多くあり、不思議な空間で食事とお酒を楽しむことができる。

この店舗が期間限定なのは、1年半後に建物の取り壊しが決まっているから。この限定期間中に「東京料理」を確立させ、新たな料理、新たな店への展開も考えているという。
それだけにメニューは今後も追加や変更の可能性がある。人気のナポリタンやハンバーグ、オムライスなどは残っていくだろうが、アレンジなどが変わるかもしれない。まさに今だけの店と言える。

これまで名店で腕を振るってきた高橋シェフ。メニューは、これまでのフレンチや洋食の経験を生かした、高橋シェフがおいしいと思ったものたちだ。「普通のデミグラスソースじゃつまらないでしょ」と昔ながらの洋食に独自のアレンジを加え、六本木という地にマッチした洋食を生み出している。これからどのような「東京料理」が増えていくのかが楽しみな店だ。
※価格はすべて税込。