こんなものが食べたかった! 絶品アラカルト料理を堪能せよ!
論より証拠、小林さんの料理をご紹介しましょう。こちらはアラカルトのみで前菜8品、パスタ3品、メイン2品、〆カレーにデザートを用意しています。でも「こんなのが食べたい」とリクエストがあれば材料が許す限り何でも作ってくれるという、コース料理が主流となった今、貴重な存在です。イタリア酒場と言うだけあってクラフトビールやナチュールワインが粒ぞろい。上質な食材にこだわった料理もつまみ系からガッツリ肉までと幅広く、どんな胃袋も満たしてくれるのです。
こだわりは“とにかく上質な食材を使うこと”。「体に入るものですから安心して食べていただけるように食材にはこだわります。僕の中でそれが第一条件ですね。食材が良ければあとはどうやっておいしく食べてもらえるかを考えるだけです」と話す小林さんの料理は食材の持つ本来の食感や味わいを改めて感じさせてくれます。
カリフラワーもブロッコリーも程よい硬さに茹であげるからこそ軸の甘みを感じ、イカは中心だけがほんのり半透明の絶妙な食感です。その食材を見事にまとめあげるのは、ハマグリの身とタマネギとディルだけで作るうまみたっぷりの絶品ディルソース。そして仕上げ用にアッツアツに熱した「瀬戸内コラトゥーラ」をかけた瞬間、ジューという音とともにものすごくいい匂いが漂うと期待度はMAX! その期待をいとも簡単に超えるひと皿です。
「尊敬するシェフのひとりから教わった中でいちばん好きなパスタです。オリーブってこんなにおいしいんだと感激しました」と言う「リングイネ メカジキのシチリア風ソース」は、黒オリーブ、ケッパー、魚醤、ディルとニンニクでマリネしたメカジキをタマネギと一緒に炒めてソースにし、リングイネに絡めます。最後にパン粉をニンニクとオリーブオイルでから煎りした“パスタのふりかけ”をかけてできあがるシンプルなパスタ。薄いと感じるギリギリまで攻めているそうだが、食材のハーモニーが作る味わいはとてもふくよか。
仔羊は北海道の「ニニウファーム」から直送してもらっています。すっきりとした脂身とナイフがいらないくらい歯切れが良い赤身は、ほんのりと羊独特の香りを纏い、いつまでも噛んでいたくなります。添えてあるクレソンも新鮮で野生味があふれ、サルサヴェルデソースは酸味がシャープに利いています。
この仔羊、せっかくのサルサヴェルデソースを必要としないほどおいしいので、その秘密に迫ると「めちゃくちゃ愛情かけて育てられていることと、冷凍していないことが大きいと思います」と小林さん。解凍しないからドリップも出ず、パサつきもしない。年間の出荷数も限定されているので一頭一頭に寄り添って育てている。そんな羊をいただける幸せがここにあります。
おいしい料理は良い食材とおいしくするという心が作る!
小林さんが独学とはこれだけの料理を目の当たりにしてもまだ信じ難いので、さらに追求すると「ひたすら見ていました。盛り付け方、味の決め方、下ごしらえ……、何から何まで見ていました。何が入っているかはサービス担当として当然聞くので材料は分かりますよね。味は戻ってきた皿で味見したり、シェフにお願いして食べさせてもらったりしました。盛り付けの真似、結構うまいですよ(笑)。先日もそのシェフにご来店いただき、そのまま提供したら『僕より上手い』と笑っていました」と。
おいしいものは良い食材から生まれるというのが小林さんの料理哲学。前職での縁もあって、魚介は千葉県銚子の「一山いけす」、羊と鹿は北海道占冠村の「ニニウファーム」から直接仕入れ、オリーブオイルも「セドリック・カサノヴァ」など数種類を使い分けています。味を決めるのはだしからくるうまみ。あまり公表したくないと言いながらハマグリを大量に使っていると教えてくれました。
「ここには教えてくれるシェフがいないので自分を信じてやるしかないと思っています。訪れた人たちが店主そっちのけで話してくれて『なんかパスタ作ってよ』とリクエストされる、そんな店でありたいと願っています。『小林の家に遊びに行こう』くらいの感じで来店していただけたらうれしい」と話します。
「HAUS」という店名は夢であるカフェと家具の店、家のように使って欲しいという希望、そして小林さんが好きな建造物「バウハウス(かつてドイツにあった美術学校)」から由来しています。散歩しながら「HAUS」に寄ってみてはいかがでしょう。
【本日のお会計】
■食事
・ブラウンマッシュルームとリコッタチーズのサラダ 1,680円
・銚子産ヤリイカとブロッコリー、カリフラワー ディルソース 2,200円
・リングイネ メカジキのシチリア風ソース 2,180円
・ニニウファームさんの仔羊ロースト サルサヴェルデ 4,400円
合計 10,460円