タベアルキスト・マッキー牧元さんの連載。一人飲みの攻略法を教えていただいた「一人飲み」なんて怖くないの次のテーマは、意外と怖い?焼肉屋です。第一回では、いい焼肉屋の見分け方、第二回では、基本編・肉を焼く前に知っておくことを伝授してもらいました。ついに完結となる今回は、実践編「焼き方How to」をお届けします。

外食力の鍛え方〜客上手になろう〜

「韓灯」出典:やっぱりモツが好きさん

 

色々エラソーに指南してあるが、僕だって最初からこのように焼いていたわけではない。数々の焼肉名人から叱咤され、なんとか辿り着いたのである。

 

例えばタン塩は、さっと炙るように焼いて、レモン果汁にたっぷりつけて、うまいうまいと食べていた。

 

でもその次は、レモンをタン塩にかけてから焼いた方がおいしいような気がした。

 

その次は、タンの片面をバリッと焼いてから、片面はほんの少し火を通すだけで、焼けた方を外側にして巻いて食べるやり方を発見して、一人悦にいっていた。

 

ところが焼肉名人と行った時、彼がよく焼くのを見ていて、真似してみたらこちらの方がうまいと気づく。

 

さらに料理人と行った時には、「レモンの香りでタンの香りが消えてしまう」と指摘され、間違いを学んだ。

 

冷凍のタンで上の方法を色々試すが、どうにもうまくいかないことを知り、冷凍タンならタレだと気づき挽回する。

 

といった具合である。もし周りに焼肉名人がいないなら、下記のやり方を試してほしい。さらに究めたいなら、一人焼肉をお勧めしたい。一人で焼き肉屋に行くのである。

 

頼むのはまず、カルビとホルモン(大腸)。数枚皿に盛られているので、片面しっかり焼き、両面炙る程度、両面しっかり焼き、頻繁に返し焼き、最初に返すタイミングを秒単位で変えてみる、ホルモンならどっちの面から焼いたらいいか、どっちの面をどれだけ焼くかなど、色々試してみる。

 

その中で自分がおいしいと思ったやり方を見つける。それができたら、あなたにとってベストという素晴らしい基準ができるので、下記のやり方は真似なくとも良い。

 

と言っても一人焼肉はどうも、と抵抗がある人もいるだろう。そういう人は、これから述べるやり方を少しずつ真似していってほしい。焼肉屋なんて怖くない!

まずは基本技を二つ

「月島 在市」出典:毎日外食グルメ豚さん

 

基本1. 二度置き

「焼肉をしていたら、網にくっついて剥がれにくくなってしまった」という経験があるだろう。それを防ぐための基本技である。網にレモンを搾るという技もあるが、レモンが勿体無い。

 

そこで網ないしスリット入り鉄板に肉を横たえたら、すぐに離す。くっつかないように、置いては離しを繰り返して、タンパク質が凝固するとくっつかなくなる。(タレをまぶしている肉は、基本くっつかないので、やる必要はない)

 

基本2. 火と友達に

炭火もガス火もどこが火力が強く、弱いかを見極める。例えば2列になっているガス火でもどちらかが強かったりもする。一番最初に焼く肉の、焼いている面の焦げ具合、変色具合をチェックし、その台のクセをわかるようにしよう。そうすればムラのない焼き色となってうまく焼ける。

さあ、いよいよ実践編だ

実践1-1. タン塩の場合

「銀座 正泰苑」出典:どら身さん

 

タンは、さっと焼く方がうまいという人がよくいるが、火が意外と入らない部位で、中の脂っこさを出さないと気持ち悪くなる。

 

だから脂を出して抜いてやる。脂を飛ばすように焼く。それには、表面にバリッという感じが出るまでしっかり焼くのがいいだろう。

 

タンの脂は意外ときつく、脂の多いものは脂が浮くようなつもりで焼いて行く。表面に脂が出てくる具合を見る。特にアメリカの牛タン(まるっこい奴)は、軽く焼くと脂っこくって食べられなくなってくる。

 

また、半分凍って出てくる冷凍のタンは、残念ながらどう焼いてもうまく焼けないと思った方がいい。これはタン塩で頼むよりタンタレで頼んだ方がおいしく食べられる。

 

ただし和牛の質のいいタンの薄切りは、生っぽく焼いてもうまく、厚切りは、焼き切った方がうまい。またタンタレの場合は、焼かなくても焼き過ぎてもおいしく食べることができる。

 

余談だが、後輩や部下に焼肉をごちそうする時には、タンをさらっと焼いて、早めに軽い胸焼けをさせること。そうすると満腹感が早く訪れるので、際限なく頼まれるという地獄から逃れることができる。

 

実践1-2. ネギタン塩の場合

 

この場合は、一旦上にのったネギをどける。ネギがのっていた面から焼き、焼き色がついたら返し、ネギをのせてもう一面を焼き、ネギを巻き込むようにして食べる。

 

そしてレモンだが、いいタンの場合は、タンの香りが消えてしまうのでかけない、つけない。だが脂が抜けきっていない焼き方、質があまりよろしくないタン、冷凍タンの場合は、たっぷりかけて食べよう。

 

2. カルビ

いじり倒すことが大切。何回も返すが、最初の返しが早過ぎるとうまく焼けない。おそらく20秒ぐらいで我慢できなくなるが、もうちょっと。最初の返しは、35~45秒は我慢しよう。

 

それには失敗を恐れず、早過ぎることや焼き過ぎることを散々やらないと、ちょうどいい焼き具合は来ない。ちょうどいい焼き具合とは、自分の基準で決めるもの。もし一人焼肉が可能なら、数枚ある肉を色々に焼いてみて、自分が最もいいと思う焼き具合を知る。

 

例え焼き目がつかなくても、レタスやサンチュで挟んで食べると結構おいしい。またタレカルビの場合は、タレが煮詰まって、少しタレに焦げが入るとおいしい。

 

白いご飯を食べる時は、間違いなくバリ焼きにした方がご飯が進む。

 

3. ハラミ

ハラミは生っぽさが残るより、しっかりと焼きたい。イメージは、余計な脂を落とし、生っぽさを残さず、焼き切る。

 

ただし焼き過ぎるとぱさぱさになり、焼いていないとタタキみたいになってしまう。外が焼けていても中は生。熱の通った生の状態は避ける。

 

4. 内臓、大腸、小腸

「韓灯」出典:お店から

 

これら腸類は、色から白物しと呼ぶ。脂がついている部分とツルツルしている方があるが、後者が腸の内側であることから、ここでは便宜上、皮と呼ぶ。

 

まず皮から焼く。皮をさっと焼いてから脂面を焼いて適度に脂を落とし、皮をこんがり焼くとうまい。

 

白物はよく焼いた方がおいしいことを知っておこう。ただし脂を先に焼くと、どんどん落ちて無くなってしまうのだ。

 

片面が焼いてあれば嫌な臭いを飛ばせるので、皮側はバリバリに焼いて、脂側は火を入れるぐらいの感じがベストである。

 

正確には、その時の鮮度とか脂の状態で加減するが、これは素人には難しいので無視していい。

 

脂ぬるぬるは気持ち悪いので、最後に軽く炙ってやって、嫌な脂の臭いを飛ばす。焼き切って、香ばしい香りとともに食べるのがベストである。

 

また炭火の場合は脂が落ちて炎が上がる。炎の上に置きっ放しにしていると、焦げた臭いがつくばかりで焼けない。そのため頻繁に移動させる。炎が出たところは氷をもらって置き、鎮火させる。

 

これさえ守れば、内臓類の中では、白ホルモンが一番簡単である。

 

さあどうだろう。まずこの辺りから挑戦しよう。

 

他にもギアラ、ハチノス、センマイ、ヤン、ロース、ミノ、ハツ、ハツアブラ、レバー、マルチョウなどなどそれぞれに焼き方があるし、炭火とガス火では、さらなる細かい焼き方もある。それはまたいつかお知らせしたい。

 

マッキー牧元オススメの焼肉屋

「焼肉初心者はここへ行け」難易度★「銀座 正泰苑」

「焼肉初心者はここへ行け」難易度★★「月島 在市」

「焼肉上級者はここへ行け」難易度★★★★「韓灯」