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〈これが推し麺!〉
ラーメン、そば、うどん、焼きそば、パスタ、ビーフン、冷麺など、日本人は麺類が大好き! そんな麺類の中から、食通が「これぞ!」というお気に入りの“推し麺”をご紹介。そのこだわりの材料や作り方、深い味わいの秘密に迫る。
今回訪れたのは、食べロググルメ著名人の山本憲資さんがおすすめするダイニングバー、中目黒の「モノポール」だ。オープン当初からお品書きに並ぶタコとミョウガのペペロンチーノを紹介しよう。
教えてくれる人
山本憲資
Sumally Founder&CEO。1981年生まれ。大学卒業後、広告代理店を経て雑誌『GQ JAPAN』の編集者に。テック系からライフスタイル、ファッションまで幅広いジャンルの企画を担当。コンデナストを退職後、自ら起業、現在に至る。スマホ収納サービス『サマリーポケット』が好評。食だけでなく、アートやクラシック音楽への造詣も深い。
お酒とともに食欲を刺激する実力派のダイニングバー
駒沢通りから1本横に入った小道に店を構える「モノポール」。ワインをはじめとしたアルコール類とともに、丁寧に手作りされたおいしい料理も堪能できるとして、雑誌業界や広告業界といった情報感度の高い客たちが足を運び、人気に火がついた。創業から23年を迎える現在は、中目黒に集うおいしいもの好きな客から幅広い人気を誇る。
山本さん
多くの知人が常連で、もう15年以上前から伺っています。
仏リヨンで腕とセンスを磨く
店を営むのはフード担当の野崎美奈さんと、お酒担当の野崎厚夫さんのご夫妻だ。独立して飲食店をやろうと決めたかつての二人は、店を始めるにあたり留学を決意。フランスの美食の街・リヨンへと旅立った。
料理が好きな美奈さんは偶然知り合ったフランス人パティシエの元で見習いとして菓子づくりを学び、お酒が好きな厚夫さんはワインを究めた。
渡仏した90年代はちょうどカフェブームもあり、帰国後はカフェを営もうと考えていたという。ところが2年の留学生活を経て帰国してみると、カフェブームはすでに一段落した様子だった。
「僕はお酒担当だけれど、食べることも好き。だからバーだけど、フードもおいしいお店をやろうということになりました」と厚夫さんは振り返る。
そうして1999年、ワインバー「モノポール」がオープンした。
和の味わいを隠し味にしたオリジナルのレシピ
ペペロンチーノにタコとミョウガを合わせるという珍しい組み合わせは美奈さんが考案した。いわく「私が好きなものを入れました(笑)」。
タコもミョウガも産地は限定せず、特別なものではないと言うが、美奈さんの手にかかれば絶品ペペロンチーノに変わってしまう。工程一つひとつにちょっとした工夫がちりばめられているからだ。
鷹の爪はイタリア・ボローニャにあるカンナメーラ社のものを使うのがちょっとしたこだわりだそう。そして、味の一番の決め手となるのは、なんと昆布茶。昆布茶のおかげでだしの味わいが加わったうま味たっぷりのペペロンチーノになるという。美奈さんが試行錯誤の末にたどり着いた隠し味だ。
しっかり乳化、きちんと計測。工夫の積み重ねでおいしさをつくる
「乳化がきちんとできないと油でベタベタになってしまうから」と言う美奈さんは、この工程を最も重要視する。
使用するのはイタリア・バリラ社の1.78mmの麺。推奨されるゆで時間は9分だが、美奈さんが火を入れる時間はそれよりも少し短めだ。
「麺を茹でるのは7分半。フライパンに移して乳化したソースと合わせて1分。合計8分半で火からあげてお皿へ移しています。毎回タイマーできっちりと計っているんです。盛り付けている時間も余熱で火が通りますから、提供時に一番おいしくなるようにしたいと思っています」(美奈さん/以下同)
そして麺に乳化したソースを吸わせるのだと教えてくれた。
「だから麺をゆでる時も、ソースと合わせる時も混ぜすぎないように気をつけています。麺の表面にある細かい凹凸がとれて、つるっと丸くなってしまうとなかなかソースを吸わなくなってしまうので」
麺にソースを吸わせる1分間のラスト20秒でタコを投入する。このタイミングも美奈さんはきっちりと計る。タコが縮んで硬くならないように、短い時間で軽く火を入れることもおいしく仕上げるポイントなのだ。最後にエキストラバージンオリーブオイルを垂らしてフレッシュな香りを重ね、お皿に盛りつければ完成だ。