〈これが推し麺!〉

ラーメン、そば、うどん、焼きそば、パスタ、ビーフン、冷麺など、日本人は麺類が大好き! そんな麺類の中から、食通が「これぞ!」というお気に入りの“推し麺”をご紹介。そのこだわりの材料や作り方、深い味わいの秘密に迫る。

今回訪れたのは、食べロググルメ著名人の山本憲資さんがおすすめするラーメン店、西早稲田の「らぁ麺やまぐち」だ。やや意外にも、山本さん絶賛の一杯は定番ではなく個性的なつけ麺だった。

教えてくれる人

山本憲資

Sumally Founder&CEO。1981年生まれ。大学卒業後、広告代理店を経て雑誌『GQ JAPAN』の編集者に。テック系からライフスタイル、ファッションまで幅広いジャンルの企画を担当。コンデナストを退職後、自ら起業、現在に至る。スマホ収納サービス『サマリーポケット』が好評。食だけでなく、アートやクラシック音楽への造詣も深い。

3年ぶりに全面刷新。超人気店だが味の探求に余念なし

山本さんの推し麺、「らぁ麺やまぐち」の「辛つけそば」1,200円に、味玉150円をトッピング

「らぁ麺やまぐち」と言えば、押しも押されもせぬ有名店だ。「食べログ ラーメン 百名店」が始まった2017年から毎年選出されていて、その他さまざまなグルメアワードを何度も受賞している。

「食べログ ラーメン 百名店」をはじめ、数々のグルメアワードを受賞

この人気店を生み出した山口裕史さんも、業界屈指の有名人。もともと趣味だったラーメン作りが高じてプロフェッショナルへ転身した、独学の天才職人だ。

山口裕史さん。自身の名を冠する「らぁ麺やまぐち」や「らぁ麺やまぐち 辣式 本店」ほか、グループの名誉総料理長としてメニューの研究や開発などを行っている

聞けば、2022年の9月16日にメニューのほとんどをフルモデルチェンジした。つまり、スープ、麺、タレ、トッピングなど細部に至るまでリニューアルさせたのである。

「らぁ麺やまぐち」の麺と言えば、京都の名門「麺屋棣鄂(ていがく)」特注。ラーメンにもつけ麺にも同じ麺を用いるが、今回は太さや量などのスペックを変更した

同店は業界をけん引する存在だけに、ベンチマークする店も後を絶たない。ならば、さらにその先へ向かって味を進化させ続ける。この飽くなき探求心も、激動のラーメンシーンで確固たる地位を長年維持し続けるゆえんだろう。

 

山本さん

2013年に「らぁ麺やまぐち」がオープンした時から、23区内のベストラーメン店だと思っています。「辛つけそば」との出合いは2017年ごろ。「たまには違うメニューを食べてみよう」と思って注文したのですが、そのウマさ、完成度の高さにハマッてしまい、今では定番の「鶏そば」以上の頻度で3回に2回くらいは頼むようになりました。

山口さんは「次のフェーズに行きたいという思いもありますし、僕自身が開発好きなんですよね。山本さんにも進化した一杯をぜひ味わっていただきたいです」とはにかむ。

スープの根幹から大胆に変え、さらなるおいしさへ

モデルチェンジにより、いっそうおいしくなった「辛つけそば」。その概要を追っていこう。リニューアルの全体テーマは“ラーメン店らしさ”。「らぁ麺やまぐち」のスープと言えば代名詞の会津地鶏100%から少しずつ進化していったが、今回はさらに根幹からブラッシュアップされた。

スープは会津地鶏の丸鶏のほかに伊達鶏と吉備黄金鶏のガラを使い、軸となる会津地鶏は2倍に増量。さらに羅臼昆布と低温抽出した豚肉のダシを加え、奥深さと厚みをプラスした。そのため、麺も変更している。やや太くなり、量は1玉140gから150gに(つけそばは1.5玉となるため210g→225g)。

醤油ダレは、島根・奥出雲の森田醤油が醸す生揚げと再仕込みの2種の醤油と、愛知・知多の丸又商店伝統のたまり醤油をブレンド。さらに分量を増やすことで、力強いスープとしっかり調和させるのだ。

「辛つけそば」の場合、そこに自家製ラー油と唐辛子粉を加え、インパクトのあるつけ汁に仕上げる

加えてチャーシューも変更。いまや珍しくなくなった低温調理チャーシューはあえてやめ、手間のかかるオーセンティックな吊るし焼きの“叉焼”を採用。部位は肩ロースを使うが、脂身の量で2種を使い分け、少ないほうを焼豚に、多いほうを煮豚にしている。

吊るし焼きのチャーシューは、専用の機器で約1.5時間じっくりと火を入れる

そして同店のつけ麺に欠かせないのが、都内でもいち早く採用した昆布水だ。これは提供時の麺を浸しておくもの。とろみのある昆布水が麺をコーティングするため、つけ汁に浸しても麺本来の味を楽しめるのだ。

羅臼昆布と北海道産のがごめ昆布を使用。滋味深い旨みにも寄与してくれる
 

山本さん

昆布水入りの器で提供される中細の麺も絶品。独特の舌触りとのどごしが素晴らしく、まずはつけ汁に浸さずそのまま味わうのがおすすめです。

おいしさもさることながら、同店は料理の美しさも必見。それは提供時の“麺ならし”から生み出される。山口さんがその所作を含め、スピーディーかつ丁寧に盛り付けて「辛つけそば」が完成した。