【カレーおじさん \(^o^)/の今週のカレーとスパイス#72】「カレーショップ フェンネル」
カレー激戦区である東京・西荻窪に、新たなカレーの名店が7月13日に誕生しました。その名も「カレーショップ フェンネル」。フェンネルとは葉はハーブとして、種はスパイスとして使われる植物のこと。ほのかな甘みが特徴です。
お店は住宅街の中にある建物の2階にあります。行列の場合は階段で8人まで待つことができ、その先は近隣に迷惑がかからないように一度諦めないといけません。開店初日に行ったのですが、話題のお店だけあって行列ができていました。
なぜ話題になっているのかというと、こちらのシェフはミシュランビブグルマンも獲得した名店「桃の実」の水道橋店(現在は本店と統合して御茶ノ水に移転)のメインシェフだった方なのです。桃の実以外でも数々の名店を渡り歩き、インド・ケララのホテルでの修業経験もあるという、知る人ぞ知る腕利きシェフだからこそ既にファンが多いということ。僕自身もその一人です。
古民家カフェ風の雰囲気の店内。壁に向かう形でカウンターの席が8席。メニューは時期によって入れ替わっていくとのことですが、開店初日は「ドライカレー」「ポークビンダルー」「バターチキン」の3種がありました。それぞれに副菜が付き、2種盛りやあいがけはできません。ここにこだわりを感じます。
昨今流行のスパイスカレーはあいがけできることが多いですよね。元々スパイスカレーは様々なカレーや副菜を混ぜて食べるスタイルのスリランカ料理や南インド料理に影響を受けたものなのであいがけも自然なのですが、フェンネルのカレーは南インド系でもスパイスカレーでもなく、あくまで「インド風カレーライス」なのです。
このインド風カレーライスという言葉。スパイスカレーという言葉が広まる前にはよく見かけられたもので、インド料理の手法で日本の米をおいしく食べられる、単体で完成したカレーのこと。シェフはそのスタイルにこだわっているのです。
あいがけできないならば2皿食べてしまおうということで「ポークビンダルー」1,200円と「バターチキン」1,200円をご飯かなり少なめでいただきました。
まずポークビンダルー。こちらには「味玉」150円もトッピング。一口食べていきなりおいしい! 香りの良いチリをペーストにして使用したしっかりした辛味と酸味のカレーで、食べ進めるごとにテンションが上がっていきます。わかりやすいおいしさでありながら、インド料理としては油は控えめで、豚肉も余分な脂身を落とした状態で使用しているので重くないのです。味玉も辛さを和らげ、満足度を高める好相性のトッピング。
続いてバターチキン。トマトがしっかりときいており、スパイス感も華やか。バターの味わいはそこまで強くなく、それでいて存在感はあるというバランス。聞いてみるとバターではなくギーのみを使用しているそうで。だからこそバター感が強くはないもののちゃんとあるのですね。
副菜はマッシュポテト、茄子のスパイス炒め、ピクルスの3種だったのですが、これを箸休め的に食べたり、カレーに混ぜたりしながら食べることができ、最後まで飽きが来ません。
どちらのカレーも単体で完成しているのですが、ラジマ(金時豆のカレー)が一口サイズでご飯にのっています。これはあくまで主役のカレーを引き立てる為の脇役であり、引き算のおいしさ。桃の実でも同じようにメインのカレーがあり、セットになるとダルタルカが少し添えられていますが、そのスタイルを踏襲しつつ、同じにならないよう工夫されています。
そしてポークビンダルーにしろバターチキンにしろ、とにかく手間暇かけられまくっていて、完成されているが故に他と混ぜない方が確実においしいだろうと理解できる仕上がりでした。
2皿も食べて大満足だったのですが、デザートの「チャイプリン」400円も追加。かためでしっとりとしたプリン。甘さは控えめでチャイの香りがしっかりと感じられ、このカレーにぴったりのデザートとなりました。
やはり何を食べてもおいしい! しっかりとスパイシーでありながら重くならないバランスのカレー。毎日でも食べられそうです。重ねて書きますがスパイスカレーではなく、あくまで「インド風カレーライス」。あいがけにしない理由は食べれば理解できるでしょう。
新しいお店ですが、古くからのカレーファンにとってはどこか懐かしさを感じる仕上がりであり、昨今のスパイスカレーファンにとっては逆に新しさを感じるようなカレーとも言えるでしょう。いずれにしても名店が誕生したことは間違いありません。西荻窪界隈の方が本当に羨ましい!
※価格はすべて税込