目次
36カ月肥育の「神戸牛シャトーブリアン」や、週に約30頭しか出荷されない和牛の「神のタン」「神のハラミ」も登場
6月のコースでは、兵庫県川岸牧場で36カ月間長期肥育された「神戸牛シャトーブリアン」から焼肉がスタートした。肉がピンクではなくあずき色であることからも、その質の高さがうかがえる。
![](https://magazine.tabelog.com/uploads/2022/07/16-1.jpg)
同店では一枚一枚料理人が目の前のロースターを使い、肉を焼き上げてくれるのだが、肉の種類や部位に応じて、ロースターの火加減も調整。「神戸牛シャトーブリアン」は低温で火入れし、広島県産の淡雪塩と、静岡県の丸岩安藤わさび店の本山葵をつけていただく。
![](https://magazine.tabelog.com/uploads/2022/07/23.jpg)
サシが少ないながら肉質はとてもやわらかく、うま味が強いのはさすが長期間肥育の神戸牛シャトーブリアン。パルメザンチーズのように淡雪塩がたっぷりと振りかけられているが、米粉と塩で作り上げているため塩味が控えめで、優しいコクが感じられる。焼き上がる寸前にすりおろした山葵は、内閣総理大臣賞や農林水産大臣賞を受賞しているだけあり、クリーミーな口当たりで、品良くじんわりと辛さが広がっていき、シャトーブリアンの味わいに輪郭をもたらす。
![](https://magazine.tabelog.com/uploads/2022/07/00_2.jpg)
同店のメニューを見て「これを仕入れることができたなんて!」と特に驚いたのが、入荷が少なく新規の取引はお断りという神谷商店の「神のタン」と「神のハラミ」だ。神谷商店といえばあの「SATOブリアン」「西麻布けんしろう」「ホドリ」など肉の名店にのみ卸している食肉卸。そんな神谷商店の「神のタン」と「神のハラミ」は、限定入荷時に出合える貴重なお肉なのだ。
![](https://magazine.tabelog.com/uploads/2022/07/18.jpg)
ちなみに神谷商店で出荷しているタンは1頭から10人前程度しか取ることができないため、その貴重さがうかがえる。
![](https://magazine.tabelog.com/uploads/2022/07/28.jpg)
「神のタン」は厚切りと薄切りで、タンの味を二度楽しむスタイル。厚切りは瀬戸内の藻塩と丸岩安藤わさび店の本山葵をつけて。サクッと歯切れが良く口の中で踊るような弾力のタンは、噛むほどにジュワッと肉汁が広がるが、脂にくどさはない。一方の薄切りのタンは、焼き上げた後に同店特製の味噌ダレを塗って提供される。隠し包丁が入った薄切りタンはググッと力強い食感で、りんご酢なども入った優しい味付けの味噌ダレが合わさり、厚切りよりもタンの味わいをより強く感じるから不思議だ。
![](https://magazine.tabelog.com/uploads/2022/07/29.jpg)
同じく神谷商店の「神のハラミ」は、凝縮されたハラミのうま味を引き立たせるため、宮崎県産の日向夏のソースをトッピング。ハラミは焼く前に、醤油を使いゼラチンで少しとろみをつけた自家製のもみダレにくぐらせており、照りっとした焼き目と日向夏ソースのコントラストも美しい。
![](https://magazine.tabelog.com/uploads/2022/07/31.jpg)
甘酸っぱさだけでなくほんのり苦味も感じる日向夏ソースによって、「神のハラミ」の味わいがより一層深く感じられる。
煙が立ち上る炭火焼き「特産松阪サーロイン」や「フカヒレと黒毛和牛の共演」など高級食材の奇蹟のコラボ
使用される食材の希少性だけでなく、エンターテイメント性に溢れているのも同店の特徴の一つ。そのことを特に体現しているのが、焼いた炭を直接肉に当てて火入れを行う「特産松阪サーロイン」だ。
![](https://magazine.tabelog.com/uploads/2022/07/25.jpg)
そもそも特産松阪牛とは、900日以上肥育した但馬牛だけが名乗れるブランドで、松阪牛の中の約4%に留まる。そんな特産松阪牛のサーロインを強火で火入れし、仕上げに火のついた紀州備長炭を直接肉に当て、表面を香ばしく焼き上げる。ジュージューという音を立て、肉から白いスモークが上がる非日常な光景に気持ちが昂ってしまう。
![](https://magazine.tabelog.com/uploads/2022/07/26.jpg)
焼き上がった「特産松阪サーロイン」の一方は、刷毛で醤油ダレを塗り、好みでカラシをつけていただく。サーロインということでしっかりサシが入っているものの、きめ細かでスッと優しく身体に沁み渡るような脂で、カラシの辛味が味を引き締めてくれる。もう一方は塩漬けした生胡椒と共にいただく。プチッと弾けるジューシーな生胡椒のスパイシーさと、鼻をくすぐる炭の香ばしさが、特産松阪サーロインの堂々たるうま味を際立たせる。
![](https://magazine.tabelog.com/uploads/2022/07/09-2.jpg)
日本焼肉 はせ川 別亭は質の高い希少な食材だけに頼らず、和食料理人の技が光る真っ当な調理法でも勝負をかける。「フカヒレと黒毛和牛の共演」は、その名の通り気仙沼産のフカヒレと黒毛和牛のイチボ、そして冬瓜を炊いた一皿だ。先に肉をやわらかく炊いた後、その肉のだしにたっぷりの酒を加えフカヒレを煮込み、最後にだしにとろみをつけて仕上げている。
イチボはしっとりやわらかく、噛むほどに強いうま味が感じられるものの、脂の重たさはない。酒をたっぷり使った香り豊かなだしにもしっかり黒毛和牛のうま味が溶け出ている。フカヒレはしっかりシャキシャキ感を残しており、味付けは優しい。和牛以上に大ぶりなフカヒレに笑みがこぼれてしまう。
![](https://magazine.tabelog.com/uploads/2022/07/10-2.jpg)
「焼肉店ではなく日本料理店だ」と強く感じたのが、食事ものとして登場した「つりきんめ土鍋ご飯」。焼肉の〆であれば、焼肉のタレの味にも負けないようなしっかりとした味付けの料理であることが多いが、同店は違った方向性で〆にかかる。「つりきんめ」とは、定置網漁ではなく一本釣りした金目鯛のことで、身の損傷が少ないのが特徴。いまの時期はエサのプランクトンが多く、脂ののった千葉県銚子産の「つりきんめ」を使う。このつりきんめの頭やカマで取っただしで、滋賀県朽木ではせ川グループの社長自ら稲刈りを行っているという、自社栽培のコシヒカリを中川一辺陶の土鍋で炊く。
![](https://magazine.tabelog.com/uploads/2022/07/12-2.jpg)
最後、火を弱めるタイミングで下味をつけて焼いたつりきんめを加え火入れし、土鍋ご飯を仕上げている。つりきんめのだしを吸った土鍋ご飯は、焼肉を食べた後の胃に優しく布団をかけてくれるような安心感と満足感をもたらす。香の物、赤だしもつき、アルコールを飲んで高揚した身体を鎮めてくれる。
日本焼肉 はせ川 別亭のコース内容は毎月変わるが、神谷商店の「神のタン」「神のハラミ」などは仕入れが続く限り毎月仕立てを変え提供していくという。7月以降は石川県産の幻の岩牡蠣など、季節限定の希少食材も登場する。銀座にありながら個室はチャージ料不要と良心的なため、接待や特別な日の食事会にも利用したい一軒だ。
※価格は税込