ランクや産地だけでなく、生産者にまでこだわり和牛の仕入れを行うお店が増えてきた昨今。しかし卸や生産者との信頼関係が築けていないと、なかなか良い食材は手に入らない。特に希少価値の高い食材はなおさらだ。

そんな中、入手困難な和牛づくしのコースを提供する新店が2022年6月、銀座3丁目に誕生した。「日本焼肉 はせ川 別亭」だ。

希少価値の高い厳選食材を使用した、日本料理仕立ての焼肉コース

「日本焼肉 はせ川 別亭」は「寿司 はせ川」や「日本焼肉 はせ川」など、大阪と東京で6店舗を展開するはせ川グループの新業態。ライブキッチンスタイルですべてのメニューを料理人が目の前で調理し、焼き上げまでをフルサービスで行うなど、既存の「日本焼肉 はせ川」よりもさらにランクアップしたサービスや料理が特徴だ。

メニューは月替わりで旬食材を楽しめる約15品のコース(一人35,000円)のみ。希少価値の高い和牛のみを使った焼肉でありながら、和会席のようなコース構成となっている。例えばコースは小吸物のすり流しから始まり、先附、八寸、お造り、和牛と続いていく。

山田幸隆料理長

料理長の山田幸隆氏は、和食の料理人として20年以上腕を振るう日本料理のベテラン。都内の有名店やホテルにて腕を磨き、30歳の時に六本木の老舗割烹料理店にて料理長を務め、その後も寿司、会席料理店などで料理長を歴任した人物だ。2019年「日本焼肉 はせ川 銀座本店」の料理人を経て、この度別亭の料理長に就任した。

益田宜明総料理長(写真右)

コースのメニュー開発などは「日本焼肉 はせ川」全体を統括している総料理長の益田宜明氏と山田氏が手を取り合って行っている。益田氏もまた20年以上日本料理一筋で、会席、精進料理、茶懐石などいくつもの店で研鑽を積んだ人物だ。

料理に合わせるドリンクは、ソムリエをはじめサービス、飲食店コンサルなど多彩な肩書きと経験を持つ柴田宏史氏が厳選。ロマネ・コンティをはじめとする世界各国の入手困難な一級ワインを300種以上特注セラーに常備しているほか、十四代や黒龍などの幻の日本酒も常備し、料理とのペアリングも提案してくれる。

個室は8名まで利用可

また日本焼肉 はせ川 別亭 銀座店では、空間設計にもこだわり、土壁は重要文化財などの修復も行う左官職人の久住有生氏が、特注の器は陶芸家の内田鋼一氏が手がけた。久住氏初のデザインとなるカウンターや個室テーブル天板、内田氏が製作したカウンターバックの棚や椅子にも注目したい。

未経産雌牛の純但馬牛を使った肉寿司に、日本料理の技術が光る八寸

「純但馬牛海苔巻き 贅沢雲丹乗せ」

6月のコース「水無月」では先附から、希少肉である未経産雌牛の純但馬牛を使った肉寿司が登場した。しかも、余市産蝦夷バフン雲丹とラトビア産フレッシュキャビア、金箔を携えて。越前漆器メーカー「土直漆器」のお椀に盛られた肉寿司は、手にとって一口でいただこう。押し寄せる蝦夷バフン雲丹の濃厚な味わいに、特製の味噌と醤油で味付けした純但馬牛のモモ肉のうま味が広がり、まったりとした赤酢シャリと有明産の特選海苔の豊かな香りが鼻に抜ける。

写真左から「活天然稚鮎天麩羅」「無花果ゼリー寄」「白だつ胡麻浸し」

続く八寸は、シンプルなようで同店の和食の技術が光る一皿だ。白織部の器に並ぶ「白だつ胡麻浸し」は、関西で親しまれている里芋の茎・白だつを大根おろしと鷹の爪を使って湯掻くことでアクを取り、ざるにあげて常温で冷ましてから一度洗い、作っておいただしに潜らせてから沸騰させ、漬け込んでお浸しにするなど手間がかかっている。

トッピングしてあるクルミはオメガ3脂肪酸が豊富な食材であり、脂質をエネルギーに変える作用が期待される食材だ。このように食後の胃の重たさや、脂質の多さが気になる焼肉も、おいしくヘルシーに食べてほしいというお店側の配慮がコースの随所で見られる。

鉢に入れた調理前の生きた千葉県産の天然稚鮎を目の前で披露するパフォーマンスもある