スパイスカレーの発信地・大阪に隣接する都市であり、美食の地としても名高い京都。では、カレー文化についてはどうなのでしょうか? 4,000軒以上のカレー店を食べ歩いてきたカレー細胞さんに、おすすめ5軒を含めて聞きました。
教えてくれる人
カレー細胞(松 宏彰)
兵庫・神戸生まれ。国内だけでなくインドから東南アジア、アフリカ南端、南米の砂漠まで4,000軒以上を食べ歩き、Web、雑誌、TVなど各メディアでカレー文化を発信し続ける。年2回、カレーにまつわるカルチャーを西武池袋本店に集結させる「東京カレーカルチャー」など、イベントプロデュースも多数。TBS「マツコの知らない世界」ではドライカレーを担当。Japanese Curry Awards選考委員。食べログアカウント:ropefish
大阪を離れる人気店の受け皿が京都
近年の京都カレーカルチャーを語るうえで重要なのが、大阪との関連性。その背景をカレー細胞さんは、“大阪からの府外流出”があるからだと言います。しかもその流れは、とどまるところを知らないとか。詳しく教えてもらいました。
「実は、大阪カレーの最新トレンドが府外流出。人気店が次々と大阪を離れ、ドーナツ化が起こっているんです。これは、大阪スパイスカレーの店が飽和状態だからという理由が大きいですね。その受け皿の代表都市が京都なんです。大阪で間借り営業し、独立時の店舗は京都に構える、的な。実例はまだ多くありませんが、今後どんどん増えていくでしょう」(カレー細胞さん/以下同)
なぜ京都なのか。それは隣接する大都市だから、観光地だからという理由のほかにもありました。
「京都には、こだわりがあるものには高くてもお金を払う文化が根付いています。結果、客単価が高くなるのでビジネス的に商機がある。これは観光面でも同様で、観光客が潜在的に京都に期待していると言えます。ある意味、京都というブランドに価値を感じているので、多少高くても構わないという心理ですね」
さらに、大阪におけるカレー店が飽和状態であることに対し、美食都市の京都ではまだ頭打ちになっておらず、伸びしろがある。これらさまざまな側面があるので、今後京都にニューオープンするカレー店にはますます注目だとカレー細胞さんは言います。
京都のカレー店おすすめ5軒
カレー細胞さんが今回選んだおすすめ店には、もちろん新店以外も入っています。まずは老舗(100年以上続く名門が多い京都においては老舗と言わないかもしれませんが)のイチオシから教えてくれました。
1. 京都流甘辛カレーの名店「ビィヤント」
関西には古くから「甘辛カレー」と称されるタイプが根付いており、京都を代表する甘辛カレーの名店が「カレー専門店 ビィヤント」です。1975年創業という老舗で、名物のビーフカレーは粘度低めのシャバシャバ具合。最初甘くて後から辛さと牛のうまみがあふれる味わいで、圧倒的な深みを感じることができます。
「ここは京都に現存するカレー店としては最古参のひとつ。玉ねぎやはちみつ、チャツネなどが前面に出た甘辛カレーのお手本的なおいしさで、同カテゴリーでは大阪・浪速の名門『カレーや マドラス』に近いテイストです。昨今のカレーマニアは足を運ばないかもしれませんが、僕にとっては時折帰ってきたくなるようなネイティブ感があって好きですね」
また、古くからある店としては、1986年創業の南インドレストラン「ケララ」の功績は偉大だとカレー細胞さん。
「同店が長年孤軍奮闘してきた歴史のうえに、京都の本格インド料理文化があると思います。後進のおすすめで言えば、2008年創業の『ヌーラーニ』や、2012年創業の『インド食堂TADKA(後述)』。今やどちらも複数店展開していて、見逃せない存在ですよ!」