食べログ3.5以下のうまい店

食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。

食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。

点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

そこで、グルメなあの人にお願いして、まだまだ知られていない“とっておき”の「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。

今回は、株式会社サマリーのFounder&CEOを務め、全国の“うまい店”に精通する山本憲資さんが、愛知県屈指のタコの産地・日間賀島のタコを使った「元祖もずくタコしゃぶ」が自慢の一軒を紹介。

教えてくれる人

山本憲資

株式会社サマリーFounder&CEO。一橋大学商学部でゲーム理論を専攻した後、電通に入社。その後、コンデナスト・ジャパン社へ転職し、雑誌『GQJAPAN』の編集者に。テック系からライフスタイル、ファッションまで幅広いジャンルの企画を担当。退職後は“モノ”を通じてユーザー同士が繋がるSNS「Sumally」を立ち上げ、スマート収納サービス「Sumally Pocket」をローンチ。食にも日々強い情熱を注いでおり、東京のみならず地方の店にも造詣が深い。

日間賀島や全国の新鮮な魚介が揃う「晴快荘 東新町店」

名古屋・丸の内で創業五十年の歴史を重ね、日間賀島をはじめ全国各地の新鮮な魚介を使ったメニューが豊富な「晴快荘」。丸の内の本店の他、再開発が進む栄エリアのやや東側にある東新町に2014年から店を構え、昨年現在の場所に移転したばかりだ。客層が30代からとやや高めなことからも、舌の肥えた大人を満足させる店であることが分かる。

移転して間もないことから「晴快荘 東新町店」の食べログでの点数は3.12だが、長年多くの著名人を満足させてきた料理の味に間違いはない。

※点数は2022年3月時点のものです。

熱帯魚が泳ぐ大きな水槽を眺めながら食事が楽しめる人気のテーブル席。店舗入口には生簀も完備

個室はもちろん、テーブル席やカウンター席など抜群の使い勝手

愛知県南知多町の離島・日間賀島にある老舗旅館「ホテル晴快荘」の屋号を継ぐ姉妹店として、昭和40年代初頭に本店を名古屋・丸の内にオープン。地元である日間賀島の漁師から直接仕入れる魚介をはじめ、各地の漁港から届く新鮮な海の幸が味わえる老舗海鮮料理店として広く知られている。

日間賀島はもとより、旬の新鮮な魚介が全国から届く。その日のおすすめが並ぶ冷蔵ケース前のカウンター席は、調理の様子も見られる特等席だ

ここ東新町店は2021年に現在の場所へ移転し、モダンでスタイリッシュな設えにリニューアル。少人数から使える個室を多く有していることもあり、コロナ禍においても客足が絶えない人気店だ。

ビルの地下1階に店がある。エレベーターを出ると和テイスト溢れるディスプレイが出迎えてくれる
少人数から利用できる個室はテーブル席と掘りごたつ席を用意。また28名まで対応可能な座敷も完備
 

山本さん

初回の利用は、名古屋に住むグルメな知人に薦められたのがきっかけでした。店の雰囲気も良く、新鮮な魚介を使った料理が豊富に揃っており、他では見かけない食材や調理法も楽しめる、全国的に見ても貴重な店だと思います。

また、各店の女将も名物で、政財界や芸能界の大物も多数訪れる本店を取り仕切る大女将のひで子さんは、客から「お母さん」と呼ばれるほど親しまれており、気さくではっきりとした物言いが気持ちいい人気者。東新町店は明るく元気な女将のあゆみさんが笑顔で出迎えてくれる。

大女将の鈴木ひで子さん(左)と女将の鈴木あゆみさん(右)

名物「元祖もずくたこしゃぶ」はマストオーダー。シメの雑炊まで堪能せよ

てっさのように薄く引かれた新鮮な生タコを、もずくがたっぷり入った香り高いダシにさっとくぐらせて食べる「元祖もずくたこしゃぶ」は店の看板商品。日間賀島直送のタコはもちろん、生ワカメや薄切りの白ネギ、アサリなども具材として盛り込まれており、鍋から立ち上る磯の香りが食欲をかき立たせる。

名物の「元祖もずくたこしゃぶ」は1人前2,200円(写真は2人前)。来店者の9割以上が注文する
鍋底が見えないほど入れられたもずくの中をさっと泳がせて、半生の状態でいただく。軽く熱が入ったタコは柔らかく、噛むほどにうま味が溢れる

タコやその他の具材を食べ終わったら、すべてのうま味が溶け込んだダシを使ったシメがお約束。シメは雑炊かラーメンを選ぶことができるが、圧倒的に人気なのはやはり雑炊。後入れの卵黄がコクをプラスし、満腹でも箸が止まらないおいしさに。

ちなみにシメの雑炊はお店の方が作ってくれるため、最高の状態で提供される。薬味には刻んだ小ネギと海苔が添えられ、漬物までがセット。

シメ用の雑炊セット(写真は1人前)450円。ラーメンも同額で、ラーメンの後に雑炊でシメるというパターンもOK
後入れの卵黄を崩してしっかり混ぜてから食べるのがお店おすすめの味わい方
 

山本さん

タコともずくという奇をてらわない、そして間違いのないおいしさながらも、意外にも他では出会ったことのない組み合わせが楽しめました。薄くスライスされたタコをダシでしゃぶしゃぶして、レアの状態で食べると……もう最高です。ハマります。