〈食べログ3.5以下のうまい店〉

「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて言う人もいるが、それは東京や大都市の話。

口コミ数が比較的少ない地方都市では、「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことも十分あり得る。

そこで、グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。 今回は、沖縄県内でフリーライターとしても活躍する阿久津彩子さんが、古き良き味を新スタイルの店舗で提供する人気店を紹介。

教えてくれる人

阿久津彩子さん

2011年創業の編集プロダクションWORD WORKS OKINAWA運営。グルメや観光、経済などさまざまなジャンルの取材・執筆・撮影に取り組むとともに、沖縄の車と食を楽しむドライブメディア「沖縄くるまーい」の編集員として県内各地の魅力を発信。縦列駐車は苦手だが、さらなるおいしいお店を見つけるために(=目当てのお店に安全に駐車するために)運転技術の向上に励んでいる。

沖縄だから生まれたアメリカンベーカリー「Melrose(メルローズ)」

独特な異文化チャンプルーの店が多い沖縄で、実際にアメリカから来た人も喜んで通う店がある。それは、今では観光の定番コースとなったステーキ店やレストランを手がけたオーナーが、その味とノウハウを注ぎ込みオープンした「Melrose(メルローズ)」。壁紙や飾られた写真、テーブル、ネオンなどは、まるでニューヨークの街に来たかと錯覚するほど完璧な店作りで、並んでいるケーキもカラフルなアメリカンスタイルばかりだ。
食べログでの点数は3.00だが、SNSでも大評判のベーカリーカフェが生まれた秘密、店に込めた思いをオーナーのレイ・ペインさんと奥様に聞いた。

※点数は2022年4月時点のものです。

日本にないスタイルを、日本人の好みに合わせて作る

黒と白のポップなストライプとピンクに乙女心は大盛り上がり!

座るだけで写真映え間違いなしのカフェ席、シャンデリアがその雰囲気に本格テイストを加える。お茶をしている客層は地元のママ会や観光客、カップル、スーツのサラリーマンなど、一見すると男性が入りづらそうに感じるかも知れないが、オープンな店構えと元気なスタッフの空気感で、幅広い人が気兼ねなく利用できる雰囲気が作られている。

実は沖縄の飲食業界を支えてきた重鎮のオーナー、レイ・ペインさん
92歳で書かれた自伝書籍にはその経験や語れる伝説がいっぱい

1960年に来日された後、サムズグループやローズガーデンなど、県民なら誰もが知るアメリカンスタイルの店を出したレイさん。数年前、高齢に伴い大掛かりな経営からは引退するべく大手飲食会社へ店と伝統を引き継いだ。そして関われる範囲でと、これまでの店でも人気だったベーカリーの味を並べた「メルローズ」を開いた。

無駄のないシンプルなケーキはハリウッド映画にも出てきそう
手軽に食べられる、と注目されているカップスタイルのケーキも
 

阿久津さん

店があるのは日本初のショッピングセンターとされる「プラザハウス」(※諸説あり)。県内でも特に、アメリカ文化が色濃く残る空間で「メルローズ」は、ひときわ海外のオシャレな雰囲気を漂わせており、米軍基地に駐屯する在沖アメリカンやその家族の方も多く訪れています。

レストラン時代から人気だったケーキを中心に、日本の店ではあまり見かけないパンや焼菓子も手がける。朝食、おやつ、ディナーにも合う「麦パン」は看板商品で2サイズ販売。そのままでも焼いてもおいしくハチミツ、チーズ、お肉やワインにも合いほんのり甘い。これを食べて故郷を思い出す外国人もいるそう。

外国では定番「麦パン」を日本で人気にした実績もある
コーヒーや紅茶と相性の良いスコーンやマフィン、コーンブレッドなども勢揃い

取材中もテイクアウトの行列は絶えず、手土産に選ばれている様子がうかがえる。日本のケーキとは違うビッグサイズのケーキや焼菓子、パンなどは確かに見栄えがよく万人受けしそうである。どの商品も伝統的なレシピで作られ、昔ながらの本格派の味を守りつつも日本人の好みに合わせ、全体的に甘さや砂糖量を30%カットしているそう。だから食べやすく長く愛されているのだろう。

人気のマカロンも王道だからこその可愛らしさを感じる