しっかり混ぜてから食べるのがルール! 汁なし担々麺の作法
汁なし担々麺専門店に初めて訪問した時には食券機の前で悩むと思う。辛さは何を選んだらいいのかと。覚えておいてほしいのは「2辛が基本」ということ。もちろん店によって設定の違いはあれど、私が取材した店の多くは「基本は2辛。辛いのが苦手という人は1辛に。普通より辛いのがよければ3辛に。お子さまなど辛いのが全くダメな人はゼロ辛で」というスタンスだったように思う。参考にしていただきつつ、今回はこの梵天丸でも基本とされる2辛を選んだ。
しっかり混ぜてから食べるのが汁なし担々麺のルールなのである。調理工程を見てもらったように、丼の下層にある少量のタレとスープの上に麺がのり、ミンチとネギがのっただけの状態で提供される。
私がよく言うのは「汁なし担々麺は出てきた時は未完成の料理。お客さんが混ぜることで完成する」ということ。大げさだが例えば、しゃぶしゃぶや関西風お好み焼きなどと同じで、まずはタネの段階で出てくると思ってもいい。
汁なし担々麺は、麺とタレと具材をしっかり混ぜて馴染ませることでその魅力が爆発的に増幅する。可能なら、縦型洗濯機のような回し方ではなく、ドラム式洗濯機のように上下に立体的に混ぜてほしい。丼の下にたまっているタレを上に持ってくるように! あふれ出る食欲を抑えながら、ガマンして混ぜる忍耐と美徳。それはまるで武士道にも似ているとさえ思う。
さあ! 夢と冒険と辛さと痺れの世界へ!
丼が出てきて食欲をガマンしながらしっかり混ぜたあとに待つ至福の瞬間。麺とタレとスープとミンチがまさに「渾然一体」になった状態。混ぜる前と混ぜたあとの姿が全然違うのが汁なし担々麺の面白いところであるのだ。目の前にあるのは、すっかり整った汁なし担々麺。もう一気にすすり込むしかない。
まずは、ラー油の辛さが口の中に広がり、そこにしっかりとタレやスープのうまみ、ミンチのうまみが襲ってくる。まさに至福。波が引いたところで口内に残るのが花椒の爽やかな痺れ。そしてこの花椒には味覚修飾物質が含まれているために、舌が敏感になって2口目からさらにうまみが増幅して感じる。さすが広島名物にのし上がっていっただけのことはある。箸が止まらないスパイラルの秘密はここにあるのだ。