〈広島のソウルフード・ローカル飯〉

1992(平成4)年まで広島市西区福島町に食肉市場があったことから、その界隈では独自の食肉文化が多数生まれた。その代表格であるホルモン天ぷらは、60年以上前から愛されている広島のソウルフードの一つ。昔は廃棄されていた内臓を、もったいないと天ぷらにして食したのが始まりだ。現在は知名度が上がり、エリア外でも提供する店舗が増加中。今回は、話題の「一夜干しホルモン」を生み出した店主が手掛ける、広島中心部のおすすめ店をご紹介。

教えてくれたのは

佐藤 明日香
生まれも育ちも広島の生粋の広島県民。広島のタウン情報誌「TJ Hiroshima」編集部を経て、編集者・ライターとして活動。作り手をリスペクトしつつ、その思いを少しでも読者に伝えるべく、「シンプルに分かりやすく、目に浮かぶような文章」を心掛け情報を発信する。甘いものと紅茶に癒やされ、お好み焼やラーメン、パンといった粉もんも大好き。

食べれば分かる、新しいホルモン天ぷら

広電・立町電停から徒歩3分に位置する
2階は16名まで利用できる空間が広がる。サク飲みはカウンター席がある1階へ。

「一夜干しホルモンを使った天ぷらを提供している」という話を聞きつけ、訪れたのは広島市中区立町にある居酒屋「あかんたれ」。アットホームな空間で、広島名物や地酒が楽しめる一軒だ。

「一夜干しホルモンの天ぷら」720円

運ばれてきたホルモン天ぷらは一見普通。しかし食べると、昔ながらのホルモン天ぷらとは明らかに違う。天ぷらと相性が良い藻塩が添えられているが、ホルモン自体にしっかりと味が付いているので、まずはそのまま食べてみて欲しい。

サクサクの衣と、噛むほどに旨味が増す一夜干しホルモンが絶妙なコンビネーション! イカの一夜干しに近い、肉厚で柔らかな食感が特徴的で「これが本当にホルモン!?」と驚いてしまうはず。

一夜干しで旨味凝縮。調理簡単の万能ホルモン

ガツを食べ応えのある大きさにカットして使っている

今までにない食感の秘密は「一夜干しホルモン」を使っていること。新鮮な豚の胃袋「ガツ」を使い、丁寧に脂を落として下処理し、低温で長時間ボイル。秘伝のたれで下味を付けた後、さらに一夜干しすることで旨味を凝縮させている。硬くてなかなか噛み切れないというホルモンのイメージが覆った、と言っても過言ではない。

「僕は大阪出身で、子どもの頃のおやつと言えばホルモン焼き。移住した広島にも、この地ならではのホルモン文化があって面白いなと思いました」と三代さん

この「一夜干しホルモン」を生み出したのが、「あかんたれ」のオーナーである三代基樹さん。約10年前、鉄板居酒屋を営んでいた際に「不景気の煽りを受けがちな飲食店の新たな武器になる広島の新名物を」と、仲間と一緒に考案。ホルモンとは思えない驚きの柔らかさ、さらに食材としても優秀で、とりあえずのスピードメニューにもぴったり。鉄板焼店やお好み焼店を中心に、あっという間に人気が広がったそう。

現在扱っている店舗は県内外で100店舗以上。煮るとぷりぷりの食感になるのも魅力で、煮込み系料理を提供している店でも注目されている。