酒蔵で生まれた広島名物「美酒鍋」の名店
春は「醸華町まつり」、秋は「酒まつり」が開催される東広島市・西条は、7軒もの酒蔵が集まる全国屈指の酒処。地元産の日本酒をふんだんに使った「美酒鍋(びしょなべ)」は、お酒のアテにもぴったりのご当地グルメです。広島といえば広島風お好み焼きと牡蠣が有名ですが、「美酒鍋」も隠れた名物のひとつ。そんな「美酒鍋」を楽しめるお店をご紹介しましょう。
「美酒鍋」とは?
「美酒鍋」は、鶏肉、豚肉、野菜などの具を炒めてたっぷりの日本酒を注ぎ、塩、胡椒で味付けした鍋料理。「美酒鍋」の発祥蔵とされる賀茂鶴酒造の広報、太田裕人さんによると、この料理が誕生したのは昭和30年代。砂糖や醤油を使わないあっさりとした味付けは、蔵人が作業の合間に食べても利き酒に影響が出ないようにするために考えられたそうです。
「蔵での作業は服が“びしょびしょ”になります。そのため、蔵人が食べる鍋だから“びしょ鍋”と呼ばれていました。酒造りは力仕事ですので、蔵人さんにしっかりと栄養を取ってもらいたいという、当時の賀茂鶴酒造の専務、石川和知さんの気持ちから生まれた酒蔵の賄い料理です」と太田さん。
1. 元祖美酒鍋「佛蘭西屋」
そんな「美酒鍋」の元祖の味を楽しめる「佛蘭西屋(ふらんすや)」は、賀茂鶴酒造直営の和洋食レストラン。酒蔵通りの脇道に面した京の町屋のような建物は、1階が洋食店、2階が和食店となっており、美酒鍋が楽しめるのは2階です。
元祖の味、「佛蘭西屋」の美酒鍋
賀茂鶴酒造の酒蔵の前にある「佛蘭西屋」は、日本酒の仕込み水を使った季節料理と、賀茂鶴酒造のさまざまなお酒を楽しめる和洋食レストラン。2階の和食店の壁はレトロなポスターやお猪口に彩られ、“酒都”西条の旅情緒も満喫できる空間となっています。
膨大なお猪口のコレクションから、好きなものを選んで使える楽しみも
看板メニューの「美酒鍋」は、昼夜共に単品でも楽しめ、一人前1,760円(税別、以下同)とリーズナブル。注文すると、お店の方がすき焼き鍋のような鉄鍋をテーブルに運び置き、目の前で料理を作ってくれます。ニンニク、豚バラ肉、鶏肉、砂肝を炒め、続いて野菜、コンニャク、シイタケなどを足し、お酒を入れて料理を仕上げる様子は、まるで鉄板焼きのような臨場感。お酒を注ぐとふわりと立ち上る香りが、食欲を誘い、お酒を呼びます。
目の前で作られていく美酒鍋
賀茂鶴酒造のお酒で炒め煮にされたお肉やお酒は、クセや臭みがまるでなく、新鮮な素材の旨みだけが引き出された豊潤な味わい。美味しさの秘訣をお店の方に尋ねると、「軟水で醸す西条の酒は“甘旨い”ので、日本料理の控えめな味に深みとふくらみを与え、ひと味もふた味も美味しさが増します。砂糖やみりんの代わりに糖分控えめの日本酒を使用することで、素材の旨味も引き立ち、飽きのこない味が楽しめるんですよ」と教えてくれました。
ランチで食べられる「美酒鍋御前」
賀茂鶴酒造のお酒といえばオバマ前大統領が来日した際に「すきやばし次郎」で飲んだエピソードが有名ですが、味わいの特徴は“やや甘くてきれいな旨味”。「佛蘭西屋」の「美酒鍋」に使われているのは、そんな賀茂鶴の「上等酒」です。
「美酒鍋」とともに楽しみたいお酒のメニューには、大吟醸から本醸造まで様々な銘柄をラインアップ。色々なお酒をゆっくりと楽しむなら、季節の前菜や瀬戸内の新鮮な魚介のお造りなども付く昼の「美酒鍋御膳」(1,580円)や「美酒鍋ミニ会席」(3,000円、3日前までに要予約)、夜の「美酒鍋コース」(4,700円)がおすすめです。