粘度大。濃厚濃密なスープ

地元福岡民、観光客、そして外国人も虜にする同店のつけ麺の魅力。第一は旨みが凝縮した高濃度のスープです。豚骨や鶏ガラの動物系素材にカツオなどの節系、煮干し主体の乾物、香味野菜などを加え、“一本炊き”にして旨みを詰めていく手法。力強い重厚感、とろみがあるので、強火でグツグツ豪快に炊き出しているイメージがありますが、実はとても緻密な計算で作られています。

例えば、弱火も駆使し、豚骨ラーメンと比べると短時間(それでも約7時間ほど)で煮出す、というのもキー。臭みを出さないよう火加減に注意しながら、丁寧に砕いた豚骨など肉系から旨みを搾り出し、各素材の香りが花開くタイミングで、節や煮干しを追加で大量投入。そして、提供直前に手鍋で再加熱するスタイルをとっています。

これはブレを出さず、より熱々で、という狙いもありますが、手鍋の中に魚粉などをさらに加え、濃度を積み上げていくことが主たる理由。卓上に運ばれてきた時に香り、味わい、パンチ、すべてが最良の状態になるよう、手間暇惜しまず仕込まれているのです。
鮮烈な辛さの“辛魚粉”

また、同店を語る上で外せないのが「辛魚粉」の存在。2013年に初めてこのつけ麺を体感した時は、赤い粉がこんもりと盛られたビジュアル、そしてヒーヒーとなる辛さ、ともに鮮烈なものでした(かなり辛い!)。

もちろん、辛くない「濃厚つけ麺」950円もありますが、つけ麺、ラーメンとも「辛辛(からから)」シリーズは、福岡で根強いファンが付いています。

麺は現在、開業時より使っている東京「三河屋製麺」の太麺と、近年取り組んでいる全粒粉入りの自家製麺とを、店舗により使い分けています。

高濃度スープに負けない存在感、高加水のモチモチ感が魅力。全粒粉入りは小麦のふすまの粒感を残しているので、より小麦の香りが豊か。麺量は茹で前200g、300gが同料金。

福岡、九州全体のつけ麺店で見ても、人気が頭一つ抜けている印象の同店。昨今の状況下になっても、ほとんど変わらない、むしろ増加傾向の来客数を誇っていることが、福岡市民にもつけ麺がしっかりと浸透していることを表していると思います。

「麺や兼虎」は現在、天神本店、博多デイトス店、福岡PARCO店の3店舗があり、系列の太宰府市「濃いに焦がれて」も状況を見ながら再開予定です。
福岡のソウルフードへと昇華されつつある、濃厚つけ麺をぜひ体感してください。
※価格はすべて税込