行列が絶えない錦糸町店

昼から“おいしい”はしご酒! vol.9 錦糸町編

酒場にも精通し、音楽界の食通としても知られる“グルメ番長”小宮山雄飛さんが教える、昼からお酒を楽しめる店を紹介する連載。まだ明るい時間から飲み始め、ランチやおいしいアテを食するのは至福のひととき。一軒だけに留まらず、また一軒とついはしご酒をしたくなる名店を、食べログでの人気店とともに2軒教えます。連載第9回は、ビールがすすむ老舗の餃子で昼から酔いしれます。

【小宮山さんおすすめの店】亀戸ぎょうざ 錦糸町店 

餃子の名店

今回、小宮山さんが紹介する店は、“マイベスト餃子”と推す「亀戸ぎょうざ 錦糸町店」。1953年創業の老舗餃子は現在4店舗を展開し、亀戸本店、両国店、大島店と、餃子ラバーたちに愛されてきた。全店舗、餃子の味は共通だが、各店舗によってサイドメニューが少し違うので、通たちは使い分けているそうだ。小宮山さんが通う餃子の名店へ、いざ昼飲みへ!

行列必至! 土日は2万個の餃子が出る老舗のカウンター餃子

ランチ時は満席に

賑わいを見せる錦糸町駅南口から、錦糸町マルイの裏手に少し入った、広々とした角地にある老舗の餃子店は、行列の絶えない人気店。

町中華らしいレトロな雰囲気を醸す、店内のメニュー

創業当時からの味はそのままに、女性1人でも、子供連れでも楽しめるカジュアルな雰囲気で、老若男女に愛され続けている。錦糸町店はカウンター18席のみ。アイドルタイムはなく、平日は14時すぎ、最も賑わう土日は15時台が多少落ち着いてくる時間帯なので狙い目。餃子は平日1日1,000皿オーダーがあるという盛況ぶり。場外馬券場が近いため土日は行列必至で、約2万個の餃子が飛ぶように出るというから驚きだ。

「ビール(大)」770円

小宮山さんにとって、錦糸町エリアは、週末に予定を決めずにふらっと立ち寄る街。亀戸、両国まで足を延ばして、安くておいしい居酒屋や、タイやネパールなどアジア系の飲食店を食べ歩きをしたり、昼からはしご酒したりするのが、楽しみの一つ。平日のみ、ビールまたは餃子3皿食べた人に、お通しとして「味付きもやし」がサービスされる。

1人2皿がデフォルト。何皿でも軽くいける餃子の魅力とは

「餃子5個」330円

看板メニューの餃子は、小さすぎず大きすぎずの、ちょうどいい中ぶりサイズ。オーダーから驚きのスピード感で出てくる餃子は、熱々の焼き立てを楽しめる。

いつも注文は決まっている

まず着席した小宮山さんは、慣れた様子で「2枚とビール」とオーダー。さっと出てきた冷えた瓶ビールを流し込む。サービスでついてくる味付きもやしをつまみながら、昼飲みがスタート! 目の前で丸山店長が鉄鍋で休みなく焼く姿は臨場感があって「これから餃子を食べるぞ!」という高揚感が高まりスイッチが入るはずだ。パチパチと鳴る餃子の音と香ばしい香り、立ち込める蒸気に食欲が掻き立てられる。店のL字カウンターを囲む全面の扉がオープンになっている解放感も、昼飲みに最適。餃子のオーダーは2皿(慣れた常連たちは、2枚と呼ぶ)がデフォルト。

焼く前の餃子が並ぶ

2皿オーダーしても、焼き立てをいただけるよう1皿(5個)ずつ出てくる。小宮山さんが錦糸町店に通ってしまう理由は「本店はすごく広くて、わんこそばのようなすごいスピードで餃子が飛び交うので、圧倒されてしまう。こちらは餃子以外のメニューも充実していて、僕は好きです。10~20枚食べる方もいたり、おかわり!と勢いがあったり、カウンターで眺めながら、ゆっくり昼飲みするのが心地よいです」とのこと。

焼き立てをいただけるのが最高

創業からの味を守り続けている餃子は、自社工場ですべて作られ各店舗に運ばれる。材料は国産にこだわっていて、独自の配分の薄皮を使用。平均3皿(15個)食べる方が多いとか。餡は、野菜が多めで軽やかな食感が特徴。にら、玉ねぎ、にんにく、生姜、キャベツをブレンドし、残り50%は国産の豚肉を使用。

丸鍋を並べてひたすら焼き続ける

餃子を焼くのに、8皿分(40個)入る丸鉄鍋2つを並べてフル稼働。まずは餃子をラードが入った器に少しディップして、ラードを少量底につけてから、鉄鍋へ並べる。やかんに入った湯を少なめに入れて、蓋をして強火で焼き上げるのがこちらの焼き方。

からしが添えられた小皿がデフォルト。小宮山さんはシンプルに、酢醤油+自家製ラー油が好み

長年、餃子を焼いてきた丸山店長の熟練の加減が、餃子のおいしさを支える。蓋を開けてちらちらと様子をうかがいつつ、ラードを少し足して微調整しながら、蒸らして焼き上げていく。たまに鍋を回して火の通りを均等にすることが、最高の餃子を作るコツだ。

餃子とのベストな相性を考えた自家製ラー油は、540円で販売もあり

餃子だけじゃない。ちゃんとおいしい料理と酒もはずせない

中華には老酒、という小宮山さん

ビールを終えた小宮山さんは「中華料理のときは必ず飲みたくなる」という老酒をオーダー。最初はビールで喉を潤し、でもおなかいっぱいになってしまうのは困るから、老酒へと移行するのが理想だそう。

「老酒」275円

昼から目の前で一升瓶から並々と注がれる老酒を見ると「14時からの酒はうまい!」とテンションも上がる。

まずはグラスから

グラスから溢れんばかりに満たされた老酒。こぼれた小皿の分まで飲めるスタイルがうれしい。これで300円以下は高コスパ!

「チャーハン スープつき」990円

「昼から並々と注がれた老酒をすするかんじ、いや~最高の休日ですね」と小宮山さん。

やさしい味わいのチャーハン

「餃子が主流ですが、チャーハンもまた絶品です! めちゃくちゃシンプルで、やさしい味わい。しっとりとパラパラの中間くらいで、飽きずに最後まで食べられる味。チャーハンをつまみに老酒が、ここでの僕のルーティンです」。餃子を楽しんだあとの空腹具合によって、チャーハンをオーダーしてもいいし、餃子とのセットを最初にオーダーしてもよし。

温かくておいしいスープ

チャーハンについているスープも、ちゃんとおいしい一品。醤油ラーメンと同じ出汁を使用。お酒や食事の箸休め的存在だ。

本格的なスープがしみる、餃子の〆に食べたいラーメン

「醤油ラーメン」770円

はしご酒をするのに胃袋が許すなら、ぜひとも食べておきたい本格ラーメン。店舗によってラーメンの味は異なるが、こちらでは鶏ガラやキャベツ、切った野菜などを出汁のベースにした、あっさりスープが魅力。自社工場で作られる自家製麺は、もっちりスープによく絡む。

店頭でオーダーするテイクアウトの生餃子も人気だが、店舗から徒歩1分の道端に、冷凍餃子の自販機が! 店が閉まっている時間にも利用でき、手土産にも喜ばれる

「僕の中で餃子といえばこちらというくらい、通ってしまうほど好きな餃子。食感も軽くて酒のつまみにもちょうどいい。30年前、餃子の専門店としては早かった本店に行ってから、ずっとこの味のファンですね。2枚食べてゆるくお酒を飲んで、チャーハンを食べてもすべてが軽やかだから食べ疲れない。はしごするのに大事なこと。いつも、餃子がおいしすぎて、テイクアウトも買って帰ろうかな!という気分になります。このエリアのなんだか危なっかしさみたいのが好きで、つい街歩きしたくなる場所です」。錦糸町マルイの中を通り抜ける馴染みのショートカットルートで、慣れた様子で小宮山さんは錦糸町の街へと消えていった。

教えてくれた人

小宮山雄飛

1973年原宿生まれ原宿育ち。ホフディランのVo&Key。音楽界のグルメ番長の異名を持つ。特にカレー好きとして知られ、著書に「カレー粉・スパイスではじめる 旨い! 家カレー」(朝日新聞出版)、「簡単!ヘルシー!まいにちカレー」(主婦と生活社)などがある。2018年に日本初のレモンライス専門店「Lemon Rice TOKYO」を渋谷にオープン(現在はEC、イベント出店限定)。渋谷区初のCEO(chief eat officer)を務める。