ビギナー必見! 角打ちの様式、赤壁のルールをご紹介

森野家に代々伝わる「ぬか床」で作る一品は格別

居酒屋は「飲食業(サービス業)」ですが、酒屋は「販売業」。よって、冷蔵庫や棚に並ぶ酒は自分で取って申告するセルフスタイルです。グラスを受け取ったら、お次はつまみを物色。同店では乾き物に加え、手作りの総菜がショーケースにずらり。イチオシは、小倉名物の「さばぬか炊き」450円と「つけもの(ぬか漬け)」200円です。

しっかりと味が染みたおでんネタは約12種類

また、11月頃から春先まで登場する「おでん」もハズせません。ネタはみんな大ぶりで、1つ100円〜150円と安い! 食べたいものを伝え、お皿に盛ってもらいます。

大根、こんにゃく各120円、牛すじ(アキレス)150円

キンキンに冷えた赤星をごくり、アッツアツのおでんをハフハフ。思わず「くぅ〜っ」と声を上げてしまいます。うまい、たまらなく幸せです。

ふらっと寄り、サクッと飲んで、颯爽と帰る。これがかっこいい大人の角打ち

続いて同店のルールをご紹介。グラスの提供は、大瓶グラス3つ、中瓶グラス2つ、小瓶グラス1つまで。飲食後は最後にまとめてお会計。持ち込み飲食は厳禁で、店内を無断で撮影するのはNGです。ビール1本だけを複数人で飲み、延々とその場で盛り上がってしまう人や、写真や動画撮影のためだけに来る人などがいたそうで……。常連さんの迷惑になってしまうのでルールを設けたそう。「マナーを守って楽しくサクッと飲んで帰る」、これが角打ちの流儀ですよ。

「赤壁酒店」は純米酒も充実!

福岡県・古賀市「翁酒造」の「純米大吟醸 稲田重造」半合340円

かつては「一級酒」や「二級酒」と呼ばれた、いわゆる「普通酒」のみの提供だったそうですが、秀子さんに代替わりしてから日本酒メニューを刷新。現在は20種を超える全国各地の純米酒も角打ち価格で楽しめます。純米酒を多彩に楽しめる角打ちは実に限られているので、酒好きとしてはうれしい限り。

「検定コップ」ご存じですか?

ちなみに同店で使われている日本酒用のグラスは、小売酒販組合が販売している「検定コップ」。店舗により差があったコップの容積を統一するために作られたものだそうで、きっちり100ml(約半合)、200ml(約1合)が入ります。
「よく、“升に日本酒がこぼれるくらいに注いでくれ”とお願いされるんですが、あれはグラス一杯注いでも半合や1合に満たない場合にやる“盛りこぼし”と言われるもの。このグラスはぴったり量れるから、うちでは盛りこぼしはやってないのよ、ごめんね〜」と、秀子さん。

いつまでも変わらずに続いてほしい「赤壁酒店」ですが、旦過市場では再整備・再開発の計画が出ており……。「ここで営業している私達へは、まだ具体的な話や相談がされているわけじゃないから、どうなるのかわからないけど」と、寂しそうだった秀子さん。安全性を高めながらも、この古き良き旦過市場の姿は変わらないといいのですが。ひとまず2021年12月現在、まだ本格的な工事や計画は進んでいないそうなので「行ったことない」という人はぜひ、足を運んでみてくださいね。

もう一軒おまけ! “せんべろ”角打ち「平尾酒店」へ

JR小倉駅から徒歩約10分、旦過市場から徒歩約5分

小倉で角打ちといえば、ここもハズせない! 戦前の昭和13年に創業し、平成元年から角打ちを始めた「平尾酒店」です。女将さんとご主人は穏やかで優しく、常連さんも親切なので、角打ちデビューにもぴったり。「赤壁酒店」同様、ビールやワインなどは冷蔵庫から飲みたいものを選び、申告するセルフスタイルです。

昭和の雰囲気たっぷりの店内

日本酒は半合150円〜、焼酎は1杯200円〜、「梅干し」30円や「卵豆腐」100円、乾き物は60円〜とつまみも実に手頃。せんべろ=1,000円でベロベロになれるどころかお釣りがきそうなほどです。名物は山盛りの「ソーセージ玉ネギサラダ」200円なのですが、残念ながら現在は休止中。「温奴はできるよ」ということで、薬味がたっぷりかかったホカホカの豆腐で心地よく飲みました。

若かりし頃の店主・平尾ユカリさん

店主のユカリさんは、現在いつもお店に立っているわけではないそうで、今回は若かりし頃のお母さんの写真で我慢。“今も昔も、お母さんはやっぱり美人ですね〜”と話せば、ご主人はにっこりとうれしそう。また、カウンターで隣合った初対面の人とも、不思議と話が弾んで仲良くなる……なんてのも角打ちの醍醐味の一つです。

安くて、人情味あふれる北九州の角打ち。こんな時代だからこそ、なおさら心に染みますね。

※価格はすべて税込

※本記事は取材日(2021年11月18日)時点の情報をもとに作成しました。 
※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認ください。 
※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

文:森 絵里花、食べログマガジン編集部 撮影:森 絵里花