素朴な味わいだからこそ厳選された材料を使用
毎朝10時の開店とともに、行列のできる同店。食事パンから菓子パン、調理パン、サンドイッチ、ケーキまで、その数約35種類が店頭のショーケースにぎっしり詰まっています。購入する際は外からショーケースを覗いて、欲しいパンを店員に伝えて購入するスタイル。ひっきりなしに客が訪れるその様子は、学校の購買部さながら。
余分なものを極力使用しない、素朴な味わいのパンだからこそ、原材料には気を配ると語る奥山社長。「おいしいだけでなく、体に良いものを届けたい」という思いで、最高級の小麦粉や乳製品、福岡県産の味宝卵などを使い、手間のかかる中種法でじっくり発酵させた生地を焼き上げています。
小倉店、黒崎店に併設された工場で活躍するのは、先代が設計したホイロや窯など特注の機械。朝一番にたくさんの商品を並べるために、今もなお24時間体制で製造中。
「シロヤ」のパン全般に言える、少し甘めの生地の秘密は、保存技術の乏しい時代に、おいしさが長持ちするようにと先代が工夫したことから。そういった歴史によって生み出された必然性のある味だからこそ、シンプルで飽きが来ず、本質的なおいしさがあるのでしょう。
ロングセラーと新商品の融合でオンリーワンの企業に
昔ながらの味を守るだけでなく、若い職人のアイディアを活かした新商品の開発にも力を入れる奥山社長。なかでも、季節限定販売の「フルーツサンド」は、上質な果物を扱う地元青果店「いかど」とコラボした人気商品で、春は「あまおうサンド」、夏は「高級マンゴーサンド」などその時々で旬のフルーツを使ったものが登場。
また、流行中の“台湾カステラ”もいち早く商品化。味宝卵をふんだんに使用したふるふるの生地に、オリジナルキャラクター「サニくん」「オムちゃん」が刻印されたかわいいビジュアルが特徴の「ふるしゅわ台湾カステラ」は1斤790円という価格もあり、ちょっとした手土産にぴったり。こちらは小倉店と博多店で販売されています(博多店は土日のみ)。
サニーパンを通じて、みんなに笑顔を届けるためにパンの国からやってきた「サニくん」と、スイーツの国のプリンセスでオムレットを通じて幸せを広めるためにやってきた「オムちゃん」は、奥山社長が考案した同店のオリジナルキャラクター。SNSなどでも活躍しているのでぜひチェックしてみて。
「世界にシロヤの味を広めたい」という初代の夢を叶えるために
平成27年にJR博多駅へ出店したのを機に、関東や関西、海外のバイヤーからも出店の声がかかるようになり、各地の百貨店などでのイベント販売にも力を入れている同店。これまで、市街の店舗は福岡市内の2箇所にとどめていましたが、生産体制を整え、市外への進出にも意欲を見せています。
同店が福岡市に進出したとき、正直筆者も少しだけ寂しい思いをしました。同じく、北九州市民の中には「シロヤ愛」が高じるあまり、北九州だけのものでなくなることを残念がる声もたくさん寄せられたのだそうです。だからこそ「シロヤを愛してくださるたくさんの方の思いに応えていくためにも、シロヤを維持し発展させていくことが私の仕事です。先代の夢は『世界にシロヤの味を広める』ことでした。その夢を叶えるためにも、シロヤは前進していきます」と奥山社長は語ります。「それに今では『私がシロヤを全国に広める』と仰って応援してくださるお客様もたくさんいらっしゃいます。そのことが、とてもうれしいんですよね」
※価格はすべて税込