〈福岡人のローカル飯〉

北九州・黒崎に本店があり、福岡県内で5店舗を展開する創業71年の老舗ベーカリー「シロヤ」。小倉駅前の店舗には常に人だかりができ、お昼時の購買部さながら飛ぶようにパンが売れる人気店です。なかでも、一番の名物が「サニーパン」。焼きたてのソフトフランスに練乳を注入した一品で、その素朴で懐かしい味わいが、多くの人を魅了しています。

教えてくれたのは

いわくまみちこ

福岡県北九州市出身。関西の大学卒業後、福岡へUターン。地元の情報誌で旅企画を担当し、九州中を奔走する。2011年より編集とデザインの商店「マイアミ企画」として活動をスタート。企画・編集・ライティングを中心に、撮影、デザインなどパラレルに活動中。主な取材・執筆媒体は、タウン情報誌やウェブメディアなど。守備範囲は、旅、食、暮らし、まちづくり。

いつ食べても変わらない味にほっとする。シロヤの「サニーパン」

とろ〜り練乳がしたたる「サニーパン」100円

ふるさとを誇るとき「わが町にはこんな名物があるんだぞ!」と自慢したくなるもののひとつに、シロヤの「サニーパン」があります。
「サニーパン」を製造・販売するのは、創業71年の老舗ベーカリー「シロヤ」。北九州・黒崎に本店があり、福岡県内で5店舗を展開するお店です。

昭和レトロなお店のロゴもかわいい!

昭和25年に「甲矢商店」という洋菓子製造卸売業としてスタートし、昭和33年に「シロヤ」として開業した同店は、大正5年生まれの初代・奥山信次さんが、戦後の食糧難を経て「食」を支える職業に就きたいという思いで始めたお店。

「人に尽くす、社会に尽くす」が口癖だった初代・奥山信次さん

現在は、初代の娘である奥山祐子さんが二代目となり、初代の思いを受け継いで、おいしいパンを安価で提供するために、日々奮闘しています。

初代亡き後、姉妹でシロヤを発展させてきた奥山祐子社長

昭和41年に発売されて以来、同店で常に人気No.1を誇る名物と言えば「サニーパン」。多い日には一日に8,000個を販売するこのパンは、木村屋の「あんぱん」が人気を極めた当時「パンの中に何を入れれば喜ばれるのか」試作を繰り返した初代が、焼きたてのソフトフランスに練乳を注入してみたところ、大ヒットに繋がったというロングセラーパンです。

ショーケースにぎっしり詰め込まれた「サニーパン」

幼い子どもやお年寄りにもやさしい、歯切れのいい生地から滲み出るたっぷりの練乳。脳がフル回転しそうな甘さがたまりません。パクパクッと食べられる絶妙なサイズ感で、ひとつ、もうひとつと後引く味が魅力。

北海道産の練乳がたっぷり

食べた後に手がベタベタになってしまうことさえ、なんだか誇らしいと思える、まさに北九州市民に愛されるローカルフード!

「サニーパン」の他にも初代が考案したロングセラー商品がいっぱい

手のひらサイズのフワとろ「オムレット」50円

「サニーパン」と並ぶ同店の看板商品で忘れてはいけないのが「オムレット」50円。こちらは昭和39年に考案された商品で、現奥山社長の誕生を機に作られたものだそう。「子どもは手のひらで食べ物を味わうから」と、ふわふわのスポンジに口当たりの軽いホイップクリームをサンドした「オムレット」は、子を思う先代の愛がこもったプチケーキ。“フワとろ”の食感が、おやつやお茶請けにぴったり。

5個入りのパック売りもしている

1個50円というリーズナブルな価格も手伝って、地元ではまとまった個数を大人買いして、差し入れやお土産にする人も多数。「シロヤのオムレット持ってきたよ〜」と言えばハズすことのない、手土産の定番でもあります。

食パンにバウムクーヘンをサンドした斬新さに驚く名物「サーフィン」1個100円

「サニーパン」をはじめ「オムレット」や「サーフィン」などのロングセラーの多くは「日本人の口に合うパンを作りたい」と試行錯誤した初代が、独自の発想で商品化したもの。小倉店だけで一日に500斤は売れるという食パンを使用した「サンドイッチ」や調理パンは、同店の発展を支えた初代の妻・緑さんが開発したもので、そのオンリーワンのアイテムたちは、今もなお多くの人に愛されています。