〈福岡人のローカル飯〉

数ある福岡グルメの中でも“ローカル飯の最高峰”として愛されているのが「びっくり亭の焼肉」です! 独自の“鉄板焼肉”は類似店や、もどきレシピが出回るほどの人気ぶり。今回は、その元祖である「びっくり亭 本家 本店」をご紹介します。

教えてくれたのは

森 絵里花
福岡生まれ博多湾育ち。地元タウン誌やグルメ情報誌、料理専門誌、WEBマガジンなどを中心に活動。ランチ、カフェ、星付き店から路地裏の酒場まで、オールマイティに楽しむ呑み食い道楽 兼 グルメライター。

本能で食らえ! 鉄板にのったニクいヤツ

「びっくり亭の焼肉」と言っても、網の上で肉を焼くのではありません。初めて見る人は、鉄板にのった“肉野菜炒め”に見えるでしょう。しかし、その味わいや製法はひと味もふた味も違います! 「びっくり亭」をひもとくキーワードは「謎の肉と油」「ニンニクとキャベツ」「鉄板」「びっくり棒と辛味噌」! とにもかくにも、お腹を空かせて突撃しましょう!

南福岡駅そば、昭和38年創業の本家 本店

博多駅から電車で約10分。JR鹿児島本線「南福岡駅」の目の前

「びっくり亭」は福岡県内に6店舗、宮崎県都城市に1店舗あり、今回はその総本山、1963(昭和38)年創業の「本家 本店」へやって来ました。テレビやメディアで紹介される度に話題となり、芸能人や野球選手、著名人にもファンが多いこちらのお店。昼時や週末は行列必至の人気を誇ります。

店長の乗富明広さん

「いらっしゃいませ!」。ハツラツとした声で迎えてくれたのは、店長の乗富さん。「うちの焼肉は『安くて栄養が付くものを、お腹いっぱい食べさせてあげたい』という創業者の思いから生まれたスタミナ料理です。たっぷり食べて、パワーを付けて帰ってくださいね!」

検温、消毒、パーテーションなど、感染症対策もバッチリ

店内はカウンター、テーブル、小上がり席まであり、広々。早速、メニューを見てみると……。

写真では見切れていますが「ハブ酒」550円なるメニューも。パワフル!

食事メニューは、「焼肉」と「御飯」「味噌汁(単品)」「キムチ」のみ、と潔し。「焼肉」はボリュームを選べ、お好みで「御飯」を付けて定食にできるシステム。1人半前を頼み、半分はビールと、残りはご飯で……なんて食べ方をする人も多いのだとか。早速注文しつつ、そのおいしさの秘密を探っていきましょう!

※9月より「御飯」のサイズ表記を特大→大、大→中に変更。容量と価格は変わりません。

厨房へ突撃! ウマさのこだわりを探れ

イケメン店員さんと鍛えられた腕に釘付け……になっている場合ではありません。調査、調査!

厨房で作っている様子を撮影させていただきました! まず、第1のキーワードは「謎の肉と油」。 初見の客には「何のお肉かよくわからない。でも歯ごたえがあってウマい」と言われることも多い謎の肉。

特製油は企業秘密。豚ハラミは「食べやすく、独特の食感が出るように」と切り方にもこだわる

正体は、“豚のハラミ”でした! 厳密に言うと、仕入れによっては少し他の部位も混ぜるそうですが、主体となるのはコレ。「安くてウマいものを」と考えた創業者が、当時安価で手に入った豚のハラミを採用したのがはじまりなのだとか。この豚ハラミを、大量の特製油でガンガン炒めていきます。 

鍋からあふれるのでは!?と言うほどに、大量のキャベツを投下

続いて、第2のキーワード「ニンニクとキャベツ」。同店のおいしさは、ガツンと利いたニンニクと大量のキャベツにあるといっても過言ではありません。豚ハラミに程良く火が入ったら、ニンニクや秘伝の調味料で味付けをして、キャベツを“これでもか!”というほど大量に投入。キャベツは大きすぎず小さすぎず、この切り方とサイズ感も重要なんです。

鍛えられた腕が力強く弧を描く……秘技! フライ返し二刀流!

キャベツを入れたら、フライ返しでガンガン混ぜ合わせていきます。ポイントは、キャベツに火を入れすぎないこと! その理由は……。

直火でアッツアツに熱されている鉄板たち

第3のキーワード「鉄板」です! 高温に熱した鉄板にのせて提供するのが、同店のスタイル。しかし、炒めすぎるとキャベツから水分が出て焼肉はベチャベチャに……。テーブルに着き、食べながら最高の焼き加減になるよう、鉄板の熱さや食べる時間を計算して、炒める時間や加減を判断しているのだとか。

目を、耳を、鼻を、胃袋を猛烈に刺激する焼肉、完成!

創業者がなぜ鉄板で提供するようになったのかは、はっきりとわかっていないそうですが「“最後まで熱々のおいしい状態を楽しんでほしい”という気持ちと、“びっくり亭と言うからには、何かインパクトが欲しい!”という思いがあったのかもしれませんね」と、乗富店長はにっこり。もうもうと立ち上る煙と、ジュワーッ!と勢いよく弾ける音と香りに、確かに“びっくり”です!