〈福岡人のローカル飯〉

カレーの名店がひしめく、グルメタウン・福岡。そんな福岡でちょっと変わり種のカレーを食べたい人に訪れてほしいのが「不思議香菜 ツナパハ」です。全国的に見ても南アジア料理が珍しかった昭和の終わりに、福岡で誕生したスリランカレストランで、創業当時は珍しい異国の味に不評も多かったといいますが、それも過去の話。今では多くのファンを持つ人気店に! 一度食べると病みつきになる、福岡人のローカル飯「スリランカカリー」の魅力をご紹介します。

教えてくれたのは

戸田千文
愛媛県出身。広島、東京生活を経て、転勤族の夫とともに2018年夏に福岡暮らしをスタートした。情報誌やレシピ本、WEBコンテンツの企画・制作を通して出会うローカルのおいしいモノ・楽しいコトが大好き。

1988年に福岡初のスリランカ料理専門店をオープン

天神西通りを望む店内には、スパイスの香りが漂う

「不思議香菜 ツナパハ」が店を構えるのは、天神西通り沿いにあるビルの5階。エレベーターを降りるとすぐ店内で、ランチタイムにはフロアに入りきらないほどの行列ができることもあります。

スリランカ料理レストランを運営するツナパハグループの代表・前田勝利さん

迎えてくれたのは、前田勝利(まえだ・かつとし)さん。ツナパハをはじめ「不思議香菜 ツナパハ+2(ツナパハプラスデカ)」「東方遊酒菜ヌワラエリヤ」など、福岡でスリランカレストランを展開するツナパハグループのオーナーです。
前田さんは「東方遊酒菜ヌワラエリヤ」を1988年にオープン。その後、1995年に「不思議香菜 ツナパハ」を開きました。今でこそ、行列ができる人気店へと成長しましたが、「オープン当時は辛口の意見もたくさんいただきました」と前田さんは当時を振り返ります。

店内奥のテーブル席やカウンター席からは、キッチンの様子がうかがえる

「ツナパハグループでは、創業時からスリランカ人コックが腕を振るってきました。でも当時はスリランカ料理をはじめ、スパイスをきかせた南アジアの料理に馴染みある人が少なかったんです。『辛い』『臭い』なんて言う人もいたほど。しかし若い人が東南アジアへ旅行する機会が増えて、徐々に馴染んでいきました」

スリランカのお母さんの味をワンプレートで楽しむ「スリランカカリー」

ツナパハの看板商品「スリランカカリー」は、かつて前田さんがスリランカを訪れたとき、現地の友人のお母さんが振る舞ってくれたカレーをヒントに誕生しました。
「スリランカでは、豆や野菜、チキンなど実にさまざまなカレーが一度に食卓に並ぶんです。みんなでシェアしながら、自分の好みのカレーを選んで、混ぜながら手で食べていく。ただ、日本でまるっきり同じ形で提供するのは難しかったので、現地の味はそのままに、日本人でも食べやすいようにと今のワンプレートスタイルを編み出したんです」

店の看板商品「スリランカカリー」990円。17時まではサラダ、アイスクリーム、紅茶付き

スリランカカリーはターメリックのほか2、3種類のスパイスを加えて焚き上げたスパイスライスを中心に、チキンカリーとポテトカリー、異なるスパイスを使った2種類のカレーのあいがけスタイルです。赤味があるチキンカリーは辛さが強い刺激的な味。ピリリッと辛味が舌に広がり、食べ進めるうちにじんわりと汗が吹き出てきます。一方、ポテトカリーはマイルドで、ほくほくのジャガイモの甘さが辛味を抑えてくれる、まるで救世主のような存在。バランスを取りながら食べ進めていきましょう。

辛いものがあまり得意でないという方は、オーダー時に伝えれば調整もしてくれます。プラス料金で豆カリーを追加するのもおすすめ。豆の旨みが特徴で辛さは控えめなので、チキンカレーと混ぜながら食べると辛さが中和され、スパイスの香りや風味を、余裕を持って楽しむことができます。

店で使う数十種類のスパイス。同じカリーでも具材によって異なるスパイスを組み合わせている

「クミンやチリペッパーなど、特定のスパイスを強調する味を得意とする店もありますが、当店では一つのスパイスが突き出ることなく、バランス良く作ることにしています。すると、チキンやポテトなど素材の味がしっかり活きたカレーになるんです。目指すのは、スリランカで食べた友達のお母さんが作るカレーです」と前田さんは話します。