食べログユーザーの評価により決められる食べログ独自の年間レストランアワード「The Tabelog Award」その受賞店の魅力とともに、店主の行きつけ店をご紹介。中国料理「茶禅華」の店主が唸る名店とは?

〈一流の行きつけ〉Vol.4

中国料理「茶禅華」東京

高評価を獲得した全国536の飲食店の中から、食べログユーザーが“ここぞ”という店に一票を投じる「The Tabelog Award」。食通たちの信頼を勝ち取った受賞店は、どれも一生に一度は食べたいと言われる名店ばかり。

受賞店の魅力とこだわり、店主が行きつけにしているお店を知ることで一流店のエッセンスに触れることを目的にスタートした当連載。

第4回は2021Goldを受賞した「茶禅華」。中国料理に和の魂を込める川田智也氏にお話を伺った。

中国料理を新たにする“和魂漢才”の心

カフェモカ男
出典:カフェモカ男さん

「茶禅華」は伝統的な中国料理に日本料理の精神性を織り込む料理で客人を魅了する。店主の川田智也氏が掲げているのは“和魂漢才”という言葉だ。中国伝来の文化や学問、芸術に日本古来のオリジナリティをあわせてひとつにする思想を自身の料理に重ねる。中国料理の大胆な旨さと日本料理の滋味深いおいしさ、双方の味わいを豊かに引き出し、中国料理の新しい価値を切り拓いている。

写真:お店から

幼少の頃から中国料理の魅力にとりつかれていた川田氏。「料理人になる」という夢を叶えるべく、中国料理界の重鎮・長坂松夫氏が率いる「麻布長江」の扉を叩いた。腕を磨くことおよそ12年。いざ独立かと誰もが思ったタイミングで川田氏は日本料理の世界へ飛び込んだ。日本の食材に眠る価値を世界に伝える料理人・山本征治氏のいる「龍吟」へ修業の舞台を移す。28歳でゼロから再出発した理由をこう語る。

写真:お店から

「日本で中国料理を究めたいと思ったからです。中国には何度も足を運び、本物の技術と真剣に向き合いましたが、日本の食材で中国料理を作ってみると何かが違うと感じていました。上海、四川、広東、北京。それぞれの土地の恵みを最大に活かす中国料理が各地にあるように、日本の食材で中国料理を作るためには、日本の料理を熟知しなくてはいけないと考えるようになりました」

研鑽を重ねて2017年に開業した「茶禅華」。「龍吟」のように素材の扱いには徹底してこだわる。産地やシーズンに気を配るのはもちろんだ。例えば魚や蟹であれば、漁獲の方法、血の抜き方、神経の締め方、流通時に梱包される状態。店へ運び込まれ、厨房のまな板に上がってくるところまで、誰がどのように行うのかを把握しコントロールをする。食材が活きる最良の調理を施し、サーブのタイミングを1秒単位まで追求していくのだ。川田氏は「海、山からひとつの料理が始まり、お客様の口に入れていただく瞬間に料理が完成します」と言い、一連の営みを「素材の天性を活かすため」と表現する。

嗜好を捉えたコース料理とお茶・お酒のペアリング

うどんが主食
出典:うどんが主食さん

「茶禅華」の醍醐味は料理・お茶・お酒を三位一体で堪能できること。中国茶と和洋中の酒類を豊富に取り揃え、ベストなペアリングを提案するのが川田流のおもてなしだ。 中国茶・太平猴魁(たいへいこうかい)は淡白な味わいにはじまり、飲み進めるうちにビターな風味に傾いていく。そんな太平猴魁に合わせる料理は清蒸北貝(ほっき貝の蒸し物)である。蒸し物にひいてあるXO醤のソースに箸が辿り着く頃には、お茶のビター加減がちょうどいいタイミングでマッチする計算だ。段階構造の妙に感嘆するだろう。

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出典:_takelogさん

川田氏は客人の表情から料理に合うお茶・お酒をその都度アレンジしていく。時を重ねるごとに嗜好をより正確につかむこととなり、客人の喜びも深まっていく。付き合いが長ければ長いほど「茶禅華」の虜となってしまうのだ。

川田智也氏のおすすめ4軒

川田氏に行きつけの店を挙げていただいた。地元のラーメン店から都会の夜に花を添える中華バル、日本の美を感じるそば屋、四川料理の先駆けとなる店まで、川田氏自身のルーツや料理観を体現するような店が集まった。

ランチのおすすめ①:日向屋

川田氏のランチのおすすめ1軒目は「日向屋」。出身地である栃木県のご当地ラーメンである佐野ラーメンの店。帰省の折によく訪れているそうだ。

うどんが主食
黄金色に澄み渡るスープ。   出典:うどんが主食さん
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ちぢれが入った麺はスープがよく絡む。   出典:kenta601229さん

スープはあっさりとした和風で、ツルツルとした麺はのどごしがいい。「栃木の水の質のよさを感じています。青竹を使った昔ながらの手打ち製法で麺を作っているのもおもしろいです。職人さんの愛を感じますね」と称賛する。

杏仁どうふ
ジューシーな豚バラ肉の太巻を柔らかなチャーシューに。   出典:杏仁どうふさん

川田氏はチャーシューがトッピングされる工程も見逃さない。「こちらのお店のチャーシューは麺が器に入ったあとから切っているようです。スパッスパッと切っていき、器の麺の上にのせて完成させます。チャーシューはあらかじめ切って置いておくこともできるはずですが、こちらのお店ではそうしないのですよ」と観察する。「日向屋」は「すべての食材を常に最高の状態で扱う」という川田氏のポリシーと通じている店なのだ。

・らーめん、餃子5コ 予算:1,000円~