関西の本場たこ焼きを楽しめる

〈食べログ3.5以下のうまい店〉

巷では「おいしい店は食べログ3.5以上」なんて噂がまことしやかに流れているようだが、ちょっと待ったー!

食べログ3.5以上の店は全体の3%。つまり97%は3.5以下だ。

食べログでは口コミを独自の方法で集計して採点されるため、口コミ数が少なかったり、新しくオープンしたお店だったりすると「本当はおいしいのに点数は3.5に満たない」ことが十分あり得るのだ。

点数が上がってしまうと予約が取りにくくなることもあるので、むしろ食通こそ「3.5以下のうまい店」に注目し、今のうちにと楽しんでいるらしい。

そこで、グルメなあの人にお願いして、本当は教えたくない、とっておきの「3.5以下のうまい店」を紹介する本企画。アートディレクターの秋山具義さんが紹介するのは、オープン当時に偶然見つけたというたこ焼き店だ。

教えてくれる人

秋山具義さん

1966年秋葉原生まれ。1990年日本大学芸術学部卒業。広告代理店I&S(現 I&S BBDO)を経て、1999年デイリーフレッシュ設立。広告キャンペーン、パッケージ、写真集、CD ジャケット、キャラクターデザインなど幅広い分野でアートディレクションを行う。
主な仕事に、東洋水産「マルちゃん正麺」広告・パッケージデザイン、AKB48「ヘビーローテーション」CD ジャケットデザインなど。著書に「世界はデザインでできている」がある。2016年より「食べログ」グルメ著名人としても活動。J-WAVE「ALL GOOD FRIDAY」にランチのスペシャリストとして出演している。

魚介出汁と古き良き大阪の香りが立ち込める店「天風(テンプウ)」

渋谷駅と代官山駅の中間地点、猿楽橋のたもとにある不思議な形の交差点は、ほぼ大阪だ。日暮れ頃から、たこ焼きのおいしそうな香りが漂いはじめ、今日もさまざまな人が引き寄せられる。

真剣にたこ焼きを作り続ける店主

アパレル店員風の若者、身なりの良い中年男性、日本語を話す外国の方……気づけば先ほどまで自転車でフードデリバリーをしていた若者まで混ざり、熱々のたこ焼きを頬張っている。食べログでの点数は3.39だが、人気のお店ということがわかる。象徴的なのが、壁一面に貼られた名刺だ。

手前はJリーガー興梠慎三選手のユニフォーム

IT系、金融業、医者、スポーツ選手、ミュージシャン、クリエーターなど、あらゆる職種の名前が並ぶ。なかでもひときわ目立つキラキラの名刺が、今回お店を紹介してくれたアートディレクターの秋山具義さんのものである。

 

秋山 具義さん

常連になったのは、店がオープンしてすぐの頃だと思います。深夜、いきつけの飲食店からの帰り道で、こんなところにたこ焼き店が! とうれしくなって入ったのがきっかけです。周りの関西出身の人はみんな、ここのたこ焼きが東京で一番おいしいと言っています。

大勢の人を惹きつける理由は香りや味だけではない

昭和を感じる佇まいだが、意外にも創業は2014年

大阪そのものの味と雰囲気を作り出すのは、店主のさくちゃんこと櫻本政秀さん。「地元は奈良やけど、高校からは大阪やから……」と、たこ焼き屋をはじめた理由を威勢のよい関西弁で語り出す。元々は建設コンサルタント会社に勤務していたが、東日本大震災で炊き出しボランティアに参加し「食べ物と、人が集まる場所がなによりも大切」と実感。脱サラしキッチンカーでの販売を経て、この路地裏の交差点に出店したという。

大阪仕込みの出汁が利いているから香りも味も豊か

外はカリッと、中は熱々トロトロの焼き立てもおいしいが、冷めて軟らかくなっても味は落ちない。その決め手は、わざわざ大阪から取り寄せているという魚介出汁。カツオや煮干しが香るオーソドックスなものではあるが、出汁に敏感な関西人には違いがはっきり伝わるようだ。