お財布にやさしい、コスパ寿司

今や、寿司バブルと言ってももさしつかえない東京。コースが3万円を超えたり、何カ月も先まで予約が取れなかったり、なんてお店も珍しくありません。

もちろんそんな高級店には、価格なりの理由や良さがありますが、もう少し気軽に行けるお店も知りたいもの。お財布にやさしく、お腹も満足する寿司店をご紹介します。

外観は余計な緊張感など無用の造りに

「まんてん鮨」は東京のビジネス街の丸の内、日本橋、日比谷に店舗を構える、非常に満足感が高いと評判の寿司店。中でも、一番新しい店が「まんてん鮨 日比谷OKUROJI」で、開業は2020年12月。外観は寿司店に不慣れな客でも足を踏み入れやすい、ほどよく落ち着いた雰囲気に仕上げてある。

外から中も見え、ほどよく開放感のある外観

だが、店内に入るや一転。「実は、けっこう高い店なのでは?」と心配してしまうほど、高級感のある客席が目の前に広がっている。テーブル席もあるが、カウンター席がメインのため、カウンター席初心者としては、「何から頼めばよいのかよく分からない」といった緊張を強いられてしまう。しかし、 そんな心配はご無用。間違いなくこちらの寿司店は、3,300円と6,600円の2種の「おまかせ」に特化した、カウンター席初心者にもやさしい店なのだ。

2種の「おまかせ」の内容は、基本的に昼が3,300円、夜が6,600円。それぞれ時間帯によって分かれているが、昼の営業のみ希望すれば6,600円の「おまかせ」も食べることができる。なお、6,600円の「おまかせ」は予約可能だが、3,300円の方は予約を取っておらず、確実に席に着くには早めの来店がおすすめである。

客席はL字形カウンター席と、テーブル席で構成される。

まずはしじみの一番だしから

2つの「おまかせ」の違いは、3,300円はにぎり寿司を中心とした食事利用客を意識した構成なのに対し、6,600円はさらに酒肴をバランスよく取り入れて、酒を存分に楽しめる内容に組み立てられている。どちらもお得な内容に変わりないが、カウンター席に座るとするなら、酒も一緒に堪能したいところである。そうなると、ここはやっぱり6,600円の「おまかせ」を推したい。

この日、最初に出てきたのはシジミの一番だし。猪口で供されるこの小粋な一品で喉をほぐし、これから出てくる寿司や料理に思いを巡らしていこう。シジミは季節でアサリや小ハマグリなどにも替わるため、季節ごとに同店を訪れるのも、また楽しい。

シジミの一番だしは時節で、アサリや小ハマグリなどに替わる。

挨拶代わりの旬の一貫

シジミの一番だしで胃の準備運動ができた頃合いを見計らい、塗りの寿司台にポンッと出されるのが旬の一貫。一番初めに食べる寿司ゆえ、その時期の一番おいしいネタを持ってきており、言わば「当店はこういう店ですよ!」とのメッセージを込めた、挨拶代わりの一貫である。秋は、京都・舞鶴の釣りアジが登場し、“長ネギ醤油”をのせて提供される。

カウンター席の客には、塗りの寿司台に一貫ずつ寿司を出していく。シャリは赤酢を用いてコクを出す。

序盤は酒肴が続く

この流れで寿司が続くと思いきや、次は2種の刺身が登場。それぞれ2切れずつ盛られ、1つは北海道産の帆立貝で、煮切り醤油を塗って、ワサビを添えたもの。もう1つはカツオで、おろし玉ネギと醤油の中にくぐらせたものが出てくる。寿司も酒肴もすべて味つけされているので、余計な気を遣わず、そのまま食べればよい。

帆立貝とカツオの2種の刺身。

続いて、メカブや湯葉豆腐の酒肴が来て、さらに序盤の山場、ごちそう感のある蝦夷アワビのやわらか煮が登場。ここでいったん客を驚かせ、「この後は何が出てくるんだろう?」とさらに期待感を高めていく。そんな役割をこの蝦夷アワビが担っているのである。

アワビは序盤で提供し、客を驚かせる。
昆布だしで1時間炊き上げ、ふり柚子をして提供する。

寿司と酒肴が切り替わる絶妙なタイミング

中盤にかけては、たたみかけるように寿司が出てくるので、しばし至福の時間を楽しもう。朝絞めのヒラメが出たかと思えば、次は口の中をさっぱりさせる昆布じめのエノキ茸と、この緩急が何とも心地よい。さらに、千葉・八街のゆで落花生のホクホクした食感を味わいながら、ホッとひと息つく。

そして、皮目を炙った香ばしいサワラ、玉ネギ醤油をかけて和辛子をのせたカンパチと寿司が続き、またもや茗荷の甘酢漬け、ズワイガニの茶碗蒸し、旬の一品と、いったん寿司は小休止に。この日の旬の一品はモロヘイヤのおひたしで、後半に差し掛かる前のアルコールタイムといったところ。