イクラ、ウニ、車エビの高級ネタが続く

そして、生イクラの醤油漬け、宮城県産のムラサキウニ、ほんのり温かい蒸した車エビと、高級ネタが続く。イクラは一般的な軍艦巻きではなく、酒器にシャリとイクラを盛ったスタイル。海苔が邪魔をしないため、シャリとイクラのシンプルな相性のよさを堪能できる。

また、ウニは一般的な寿司の2.5倍もの量が盛りつけられており、存分にウニを味わったという強い記憶が残る。提供するネタは季節で変わるため、時節によってはムラサキウニとバフンウニの食べ比べが楽しめることもある。

高級な寿司ネタの“三連投”も満足感が高い。

本マグロ“三連投”の贅沢な時間

高級な寿司ネタがつ3つ続いたなら、それに負けじと、本マグロの赤身のひら漬け、トロ、炙りトロとマグロの“三連投”が来た。“お好み”での注文の場合、食べる側にある程度の経験値がないと、こうした一歩踏み込んだ注文は難しいが、それができるのも握り手を信頼して任せる「おまかせ」ならではのもの。同じマグロでも、こんなに味わい方が違うのかと、寿司の楽しみ方がグングン広がっていく。そして、神奈川・佐島の煮ダコの酒肴で最後の小休憩を。

本マグロの赤身は5分ほど漬けにし、トロと炙りトロには煮切り醤油を塗る。

個々の味をさらに引き立てる組み立ての妙技

クライマックスに向けてのラストスパートは、みじん切りの玉ネギを中具に加えたネギトロ巻きからスタート。トロの濃厚さと玉ネギの辛みが互いの持ち味を引き立て、実に贅沢な手巻き寿司に仕上がっている。さらに、ホクホクに炙った煮穴子が来て、お椀いっぱいに入ったシジミの味噌汁が来て、玉子焼き、カンピョウ巻き、デザートでフィニッシュとなる。

かんぴょう巻きは海苔の風味を味わってもらうため、巻かずに下に敷く。その他の寿司も魅力がいっぱい。

「おまかせ」の内容は、一品目の一番だしや、トロ、ウニ、イクラ、ネギトロ巻き、カンピョウ巻きなど、ほぼ固定のものもあれば、固定だがその時々で微妙に異なるものもある。また、提供する順番もすべての客がみな同じではなく、お腹がいっぱいになりそうな人には高級なネタを最初の方に持ってきたり、飲んでいる人には本来は寿司で出すものを握らずに刺身で出したりすることも。それくらい客一人ひとりの“食べ方”に気を配りながら、当意即妙な仕事で満足感を高めている。これぞ、「おまかせ」の醍醐味である。

これだけ濃密な時間を過ごせば誰もがきっと「おまかせ」の寿司を再び食べたくなることだろう。店側の出すがままに身を任せ、寿司の奥深さを体感する。何も難しいことは考えなくていい。感じればよいのだから。6,600円という金額が、実際の価値以上に何倍もお得に感じられる組み立ての妙技。一つひとつの寿司と酒肴がさらに輝く、最高の時間だ。

写真左から、海老塚勇介さん、日下部徹哉さん、大将の山元 慎さん。

※価格は税込です。
※本記事は取材日(2021年9月21日)時点の情報をもとに作成しています。
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取材・文:印束義則(grooo)
撮影:玉川博之