〈ニュースなランチ〉
毎日食べる「ランチ」にどれだけ情熱を注げるか。それが人生の幸福度を左右すると信じて疑わない、編集部員や食いしん坊ライターによるランチ連載。話題の新店から老舗まで、おすすめのデイリーランチをご紹介!
人気ベーカリー「VIRON」が作ったカレーとシチューの専門店
一品入魂。その店の全力を注いだ美味を堪能できるのは、専門店ならではの喜び。2021年7月、恵比寿に誕生した欧風カレーとシチュー専門店「BRICK(ブリック)」は、和牛の希少部位など極上の素材とこだわりのフォンとルーからなるカレーが楽しめる店。カレー界に現れた新星にさっそく訪れてみた。
「ブリック」は人気ベーカリー「VIRON(ヴィロン)」の系列で、肉ラバーに大人気だった「ゴッサムグリル」が業態変更して生まれた。
店内はガラッとイメージチェンジ。北欧デザインを代表する家具メーカー、フリッツ・ハンセンでインテリアすべてをそろえた空間は、“カレー屋”さんのイメージを覆すスタイリッシュさだ。
このモダンな空間でいただけるメニューはカレーとシチューのみという潔さ。「ヴィロン」はパンを作る小麦粉にまでこだわることで有名だが、「ブリック」も料理にかける情熱では負けてはいない。今回はランチということで、カレーを中心にご紹介。
フランス料理のテクニックを生かした極上欧風カレー
シェフの佐々木 幸伸さんはフランスで料理修業をした経験もある元フレンチシェフ。
「フランス料理ならではのフォン(だし)や、素材の味を生かすテクニックを使って、ホテルやレストランで食べるような本格的な欧風カレーとシチューを作ろうと思いました」
味の要になるのが、4日間煮込んだフォンと5日間煮込んだデミグラスソース。フォンは牛骨や牛スジの他に、鶏ガラとモミジ(鶏足)を入れて、ゼラチン質と旨みをアップしている。深みのある味を出すために、とんでもなくかかる時間と手間。おいしいだしの利いたカレーを作りたいというシェフの意気込みを感じる。
カレーの奥深さを極めるためのスパイスとルー
経験豊かなシェフとはいえ、カレーを作るのは初めて。スパイスの配合を一から学んだという。オリジナルスパイスは12種類に限定。種類を絞ることで、1つひとつのスパイスの個性を際立たせた。
もう一つの味の決め手が3種類のルーをブレンドしたカレールー。一つは焙煎機で焦がす一歩手前までゆっくりとローストした小麦粉に、牛脂とオリジナルスパイスを合わせたブラックルー。ルーの持つ香ばしさと苦味が奥深いコクを生み出す。
このままでは苦味が強いので、ほどよく小麦粉を焙煎した二つ目のルー、ブラウンルーも加え、味わいをまろやかに調えている。
「ブリック」のカレーは驚くほど甘みがあるのだが、そのベースになっているのが三つ目の玉ねぎのルー。3キロのたまねぎを300グラムになるまで徹底的に水分を飛ばすのだとか。究極の野菜の旨みが詰まったルーだ。この3種類のルーにフォン、そしてショウガを強めに効かせるとBrickならではのカレーのベースができあがる。