日本中から回転寿司の名店が集う東京

本企画では、100円均一などお手頃価格をウリとする大手チェーン以外の回転寿司の名店を、47都道府県の各エリアごとにスポットを当ててご紹介! 案内してくれるのは、回転寿司研究の第一人者である米川伸生さん。記念すべき第1回は、首都東京の中でも都心に位置する店舗から、厳選した6店を教えてもらいました。

教えてくれる人

米川伸生
2000年から回転寿司評論家として活動をはじめ、TV、雑誌などのブレーン、監修などを多数こなす。2007年、「TVチャンピオン2 回転寿司通選手権」(テレビ東京系)で優勝。YouTubeでは「YOROSUSHI TV」で活動するほか、著書は「回転寿司の経営学」(東洋経済新報社)など。公式サイトはhttp://sushiyone.com

渋谷は今も昔も回転寿司の激戦区

最初に、都心における昨今の回転寿司トレンドを聞いてみました。

新型コロナの影響によって若干風向きが変わっている部分があるものの、大きなトピックは新設の商業施設に有名店が入るようになっていること。また、それに付随して渋谷が激戦区になっていること。「言ってしまえば、第二次渋谷回転寿司戦争が起きています」と米川さん。

“第一次渋谷回転寿司戦争”は1990年代なかばにあり、今はなき行列店「回転寿司築地本店」をはじめ、センター街や道玄坂エリアを中心に4~5店ほど回転寿司があったとか。

「第一次渋谷回転寿司戦争を繰り広げた店舗で現在も営業しているのは『天下寿司 渋谷道玄坂店』ぐらいですね。その一方で、2021年には『無添くら寿司 渋谷駅前店』『スシロー 渋谷駅前店』が新規オープンしました。この2強は商業施設内ではないですが、渋谷は長年続く再開発ラッシュとともに商業施設も新規開業していますから、回転寿司がそこに招致されることが多いんです。そして、商業施設に実力派回転寿司を呼んでヒットさせるという流れを生んだのも渋谷。ということで、まずはそんな渋谷の名店から紹介します」(米川さん/以下同)

米川さんおすすめの回転寿司6軒

ここからは米川さんおすすめの回転寿司6軒について、詳しく聞いていきましょう。

1. 種類豊富で珠玉の寿司は多くが300円以下の「活美登利」(渋谷)

都心の一等地にある商業施設に、回転寿司。今や珍しくないこのトレンドを作ったのが、2011年オープンの「回し寿司 活 活美登利 西武渋谷店」です。瞬く間に大人気店となり、2~3時間待ちの大行列は当たり前だったとか。その人気は立地やネームバリューだけでなく、実力そのものにあると米川さんは言います。

「こんなにおいしくて、この値段でいいんですか?とビックリするほどのコストパフォーマンス。メニュー数も200種ぐらいあってその多くが税込300円以下で食べられるんです。原価率を上げて薄利多売でやっている良心価格だからこその大行列。また、種類が多いと管理が大変なので、一般的なお店では100種も置きたがりません。それを平然とやっているのは、オーダーがきちんと入る証拠です」

種類豊富で選ぶ楽しさがあり、コスパも抜群な「回し寿司 活 活美登利」。寿司ネタとしてもパイオニア的存在の一品があるとのこと。

「『元祖穴子一本付』を回転寿司で初めて提供したのは同店であり、まぎれもない元祖です。見た目のインパクトもさることながら、アナゴの魅力をダイナミックに堪能できる感動のおいしさ。こちらはさすがに300円以下とはいきませんが、ぜひ食べるべき逸品です」

「元祖穴子一本付」(税込671円)
「元祖穴子一本付」(税込671円)   写真:お店から

2. カウンターで大人な回転寿司を楽しめる「三浦三崎港 恵み」(渋谷)

回転寿司激戦区の渋谷で、前記「回し寿司 活 活美登利 西武渋谷店」とともにシーンを盛り上げているのが「グルメ廻転寿司 まぐろ問屋 三浦三崎港 恵み 渋谷ヒカリエ店」。「渋谷ヒカリエ」が開業した2012年に同時オープンし、不動の人気を得ています。同店についてはおいしさもさることながら、ロケーションに合った店構えが秀逸だと米川さん。

「『渋谷ヒカリエ』は劇場やイベントホールを有する文化施設でもありますよね。そのため、観劇好きな大人の女性が多く訪れます。この方々が入りやすい上質な回転寿司になっているのが同店の特徴。落ち着いた雰囲気で、注文しやすい接客とオーダーシステム。おつまみやお酒も充実していて、もちろん寿司のクオリティも舌の肥えた大人が満足できる味わいです」

店内の様子/撮影:米川伸生

三浦三崎港のまぐろ問屋なだけあって、マグロは質もメニュー数も回転寿司業界屈指のレベル。そのほかにも、漁港直送の新鮮なネタをリーズナブルな価格で楽しめます。

「まぐろトロのひっかき」(税込616円)/撮影:米川伸生
「塩漬けマグロ」(税込286円)/撮影:米川伸生

「自慢のマグロを筆頭に全体的にレベルが高く、丁寧な仕事ぶりに驚かされます。かと言って値段がすごく高いわけでもなく、満足できることうけあい。主役は寿司ですが、ちょっとつまんで飲んでという使い方ができますから、特にカウンターで本格寿司店気分を味わうのがおすすめです」

3. 北陸の希少ネタを銘酒とともに味わえる「金沢まいもん寿司」(三軒茶屋)

渋谷と言えば、2019年の「渋谷PARCO」リニューアルと同時に開業した「金沢まいもん寿司 渋谷パルコ店」も人気ですが、その数カ月前に「金沢まいもん寿司 三軒茶屋」もオープンしました。本稿では、三軒茶屋ならではの魅力を紹介します。

「同店はここ数年、首都圏でも出店が加速している強豪。たとえば2017年開業の『PARCO_ya上野』にオープンしていて、そこでの大ヒットが『渋谷PARCO』への出店につながったのでしょう。確か、上野店は東京の回転寿司店全体の中でも上位の売り上げをたたき出しているはずです。ただ、今回紹介したいのは三軒茶屋店。ここは大型商業施設内ではないですが、この街ならではのニーズに合致した手法で、高い人気を獲得しています」

「金沢まいもん寿司」は、北陸随一の回転寿司王国である石川県の中でも王者と言える名店。希少な日本海の新鮮ネタを、東京にいながら味わえるのが大きな魅力です。そのうえで、三軒茶屋店は大人の回転寿司として理想の店作りになっているとか。

「三軒茶屋店は、言わずと知れた飲み屋街。回転寿司にも絶品のつまみや酒が求められるんですが、その需要をしっかりおさえたメニュー構成で、大人の寿司好きを中心に人気を博しています。若者から老夫婦までカップルが多く、店全体に活気があるので僕が一人で行っても楽しい気持ちになれます。回転寿司の原点は、この楽しさだと思うんですよね」

おすすめのメニューは、金沢の食べるべきネタが集結した「加賀百万石握り」という5貫盛りだと米川さん。

「加賀百万石握り」(税込1,485円)
「加賀百万石握り」(税込1,485円)   写真:お店から

「『加賀百万石握り』はノドグロに白海老など、これだけで金沢に行った気分になれる一皿。ほとんどのお客さんがオーダーしますね。ちなみに、同店のレギュラーメニューには僕が酒メーカーさんと共同開発させていただいた『寿司ハイボール』3種があります。(情勢が落ち着いたら)ぜひ寿司とのペアリングを楽しんでください!」

「寿司ハイボール」3種/撮影:米川伸生