お菓子の歴史を語らせたら右に出るものはいない! といっても過言ではない、お菓子の歴史研究家・猫井登先生が、現在のトレンドを追いつつ、そのスイーツについて歴史を教えてくれちゃうという、一度で二度おいしいこの連載。第29回は、東京・下北沢エリアのスイーツスポットを紹介します。
【猫井登のスイーツ探訪29・後編】下北沢エリアのスイーツショップを巡る(下北沢〜梅ヶ丘周辺)

食べログマガジン編集部
前編は小田急線「下北沢」駅周辺のお店を回りましたが、後編ではどちらへ?

猫井先生
後編は、下北沢駅最寄りのお店からスタートし、最終的に小田急線の各駅停車に乗って「梅ヶ丘」駅のお店を目指しましょう!
【1軒め】「シェ・かつ乃」


食べログマガジン編集部
こちらはどのようなお店なんですか?

猫井先生
看板にもあるとおり、ロールケーキとプリンで有名なお店です。商品は基本的にこの2つだけです。

食べログマガジン編集部
なんという潔さ!

猫井先生
2002年にオープンされたときは、ショートケーキやモンブランなどほかのケーキも販売されていたようですが、2003年に「たまごロール」がヒットすると、ロールケーキとプリンの2つに特化されるようになりました。


食べログマガジン編集部
それだけ人気の2商品なんですね! ではまず、こちらのロールケーキの特徴から教えてください。

猫井先生
ロールケーキは、たまごロール「プレーン」「モカ」「チョコ」などがあり、大きさはそれぞれ丸ごと1本とハーフの2種類があります。特にプレーンが人気ですね。卵は昔ながらの自然な味わいが特徴の、栃木県の契約農場から取れたてを直送してもらっているようです。卵の優しい味わいのするふわっふわの生地で、2種類の純生クリームをブレンドしたクリームを巻いています。クリームの量はそんなに多くなく、全体的にあっさりとした味わいです。


食べログマガジン編集部
確かに、見た目もスポンジの存在感がしっかりと伝わる仕上がりですね! プリンはどうですか?


猫井先生
プリンは黄身だけで作られているだけあって、たまご感が強いですね。濃厚でコクがありますが、重たくはなく、何度も濾してあるのか絹ごし豆腐のようになめらかです。キャラメルは流動性が高く、ほろ苦く、濃厚な味わいの生地とよく調和した大人の味わい。カップから出して、キャラメルを全体に行き渡らせて食べるのがおすすめです。


食べログマガジン編集部
カスタードの艶が美しいです。

猫井先生
ロールケーキもプリンも、何度となくテレビや雑誌などで取り上げられているせいか、有名人も結構買いに来られるようですよ。
※価格はすべて税込

猫井先生
次は、2020年4月に誕生した、下北沢駅と世田谷代田駅の中間地点にある「下北線路街」のエリアのひとつ「ボーナストラック」に移動しますよ。ちなみに「下北線路街」というのは、小田急線の東北沢駅~世田谷代田駅の地下化に伴う、地上の線路跡地全長約1.7kmを開発して生まれた街のことです。

【2軒め】「胃袋にズキュン はなれ」


食べログマガジン編集部
ズキュン! なんともポップな店名ですね。

猫井先生
実は下北沢に「胃袋にズキュン」というフレンチのお店があるんですよ。そちらのお店の「はなれ」という位置づけなんでしょうね。

食べログマガジン編集部
ということはフランス菓子のお店ですか?

猫井先生
それがですね、「日本の魅力再発見」をコンセプトにした、和素材を使った焼き菓子と酒の店なんです。


食べログマガジン編集部
まさかの和! 早速、宮崎の麦焼酎「栃栗毛」を使った「バスクチーズケーキ」の文字が目に入ってきました。


猫井先生
宮崎県柳田酒造の「栃栗毛」というのは、麦焼酎をジャパニーズオークの中でも希少な樹種ミズナラの樽で熟成したものです。琥珀色に美しく輝く色合いで、洋梨やバニラを連想させる穏やかな香りが特徴ですから、お菓子にも合いますね。


食べログマガジン編集部
パウンドケーキも、すべて和の素材を使っているのですね。


猫井先生
一般にパウンドケーキは、バター、卵、砂糖、小麦粉を同割で使用して作るわけですが、こちらのパウンドケーキは、小麦粉の代わりに米粉、片栗粉を、砂糖にはきび糖を使っています。いずれもホロホロとした食感で優しい甘さになっていて、素材の味わいを上手に活かしています。外見だけ見て、黒いのはチョコレートだと思っていると、練りごまだったり、あんこだったり、表面にゴマが付けてあったりと、楽しいですよ。
※価格はすべて税込

猫井先生
最後は、小田急線で隣の「梅ヶ丘」駅まで行きましょう!