お菓子の歴史を語らせたら右に出るものはいない! といっても過言ではない、お菓子の歴史研究家・猫井登先生が、現在のトレンドを追いつつ、そのスイーツについて歴史を教えてくれちゃうという、一度で二度おいしいこの連載。第29回は、東京・下北沢エリアのスイーツスポットを紹介します。
【猫井登のスイーツ探訪29・前編】下北沢エリアのスイーツショップを巡る(下北沢駅周辺)
食べログマガジン編集部
下北沢といえば、雑貨屋や古着屋が多くて学生の街というイメージがありますが、スイーツ的にはどんな街なんですか?
猫井先生
そうですね。国士舘大学(世田谷キャンパス)、明治大学(和泉キャンパス)、東京大学(駒場キャンパス)が近くにあるので学生が多いですし、本多劇場を中心に小さな劇場も多いので「演劇の街」「サブカルチャーの街」でもありますね。スイーツ的には、一言でいうと新旧両方のお店が共存する地域ですが、新しいお店は、従来とは異なったことをやってやろうという、チャレンジングな熱量が感じられるので面白いですね。というわけで、早速1軒めから参りましょう!
【1軒め】「甘味処 甘寛」
食べログマガジン編集部
こんなところにお店のランプが! これは知らないと通り過ぎてしまいそうですね。
猫井先生
2階ですからね。「新雪園」さんという下北沢で人気の中華料理屋さんの赤い看板を目標にされると良いでしょう。右側の階段を上がっていくとドアがあります。
食べログマガジン編集部
うわぁ~、雰囲気の統一された店内! オレンジ色っぽい照明とステンドグラス。なんかノスタルジックで竹久夢二の世界みたいですね。こちらの店主は一体どのような方なんですか?
猫井先生
まさに、大正浪漫をテーマにしたお店です。店主は青山真浩さんという方ですが、日本の文化や良さを広める仕事に就きたいと思って、和菓子職人になられたそうです。わらび餅で有名で平日でも行列ができる京都の「ぎおん徳屋」のご出身です。原宿店の店長を務められたのち、子供の頃から慣れ親しんだこの地にご自身のお店を2019年2月にオープンされました。
食べログマガジン編集部
となると、こちらでまず食べるべきは……。
猫井先生
なんといっても、高級な本わらび粉を使った作り立ての「生わらび餅」でしょうね。店名の「甘寛」は、「甘」いものを食べて、ゆっくりと「寛(くつろ)」いでほしいという、店主の思いが込められているそうで、磯辺焼きなどもテーブルで、自分で焼くスタイルです。ビールなどもあるので、磯辺焼きで一杯、という楽しみ方もできそうです。
食べログマガジン編集部
甘味とお酒、いいですね! わらび餅は、どんな特徴があるのでしょうか?
猫井先生
お店でいただく場合は、お皿に氷を敷き花模様のように盛り付けられ、黒蜜と、焙煎の深さが異なる大豆をブレンドしたきな粉が別添えされるスタイルです。練りたてで供されるわらび餅は、とろり~んとした、軟らかな食感です。せっかくの高級わらび餅ですし、和三盆でほんのり甘味がつけられているので、まずはそのまま、何もつけずに食べるのがおすすめですね。
食べログマガジン編集部
ぷるぷるですね〜。テイクアウトもできるんですか?
猫井先生
できますよ! 持ち帰り用はわらび餅が硬くならないように、黒蜜の中に入れた状態で渡されます。それでも時間を置くと硬くなるので、その日中に食べてほしいとのことです。しかしながら、店主の意には沿わないのでしょうが、翌日食べても、黒蜜のおかげで軟らかです。当日はわらび餅の味わいがよく感じられ、翌日はわらび餅が黒蜜を吸い、一体感がある味わいになります。作り置きのものは用意されていないので、テイクアウトを希望される場合はあらかじめ時間指定で予約をされた方がよいでしょう。
※価格はすべて税込