【第4週のカレーとスパイス】カレーそばの概念が変わるかも! ここでしか味わえないカレーそばとの出合いに感動「手打蕎麦 はしば」

カレーそばというと、そば通の中には邪道だと言う人も少なからずいます。「そばは香りを楽しむものだから、香りの強いカレーと合わせちゃいけない」と言われたこともあります。しかし、カレー側の人間から言わせるなら、カレーも香りを楽しむものなのです。だとしたら、そばはひとつのスパイスとして成立するのではないかということを常々考えているのですが、それを証明してくれるお店と出合いました。京王よみうりランド駅近くにある「手打蕎麦 はしば」です。

店名の通り手打そばの専門店。店頭にはそば打ち用の台もあり、外から見ることができるようにもなっています。こちらにはカレーそばが3種類あるのですが、通常の「カレー蕎麦」と、「スパイシーカレーつけ蕎麦」、そして「ラッサム蕎麦」もあります。

「スパイシーカレーつけ蕎麦」

「スパイシーカレーつけ蕎麦」1,250円はスパイスを自家調合し、昆布と鰹節のだしをベースにスパイスカレー的手法で作ったカレー汁にそばをつけて楽しむスタイル。まずこのカレーがおいしいんですよ。たっぷりの鶏肉と味の染みた大根入り。ご飯に合わせてもおいしいであろうカレーです。

さらにはそばにもスパイスカレー的な副菜がのっていて、これがまたそれぞれ手が込んでいて意味のあるものとなっていました。トッピングに「豚天」220円も付けたのですが、こちらも絶妙な揚げ具合。そして天ぷらにもスパイスが振りかけられ、これだけで食べてもおいしく、カレーにつけて食べてもおいしいものでした。

何より凄いのは、カレー、副菜、トッピングそれぞれにスパイスをしっかりと使用していながら、そばが負けていないということ。そばの香りもまさしくスパイス同様に、このカレーや副菜と合わせて成立する状態を狙って作っていることがわかり、感動しました。そばと一緒に食べると、カレーの味のレベルが一段階上がるんです。そして副菜を一緒に食べると、トータルのおいしさのレベルがさらに一段階上がるという。素晴らしい!

ラッサム蕎麦もとんでもない逸品でした。そもそもラッサムとは何かというと、南インドで日常的に食されている酸っぱ辛いスパイススープ的なものです。そのラッサムをそばにアレンジしたという意欲的なメニューです。

「新玉ねぎ天とイチゴの山菜ラッサム蕎麦」

季節限定メニューの、「新玉ねぎ天とイチゴの山菜ラッサム蕎麦」1,300円は、ラッサムの酸味と辛味、山菜のほのかな苦味、イチゴのフレッシュな甘味、程よい塩味という五味のバランスが良く、突出した個性がありながらも変化球としてではなく、直球でおいしいと感じられるものでした。

タマリンドの酸味とコリアンダーの香りが実に爽やかで、凛として上品ながらも芯のあるそばの香りと絶妙にマッチしています。一緒にふき味噌のヨーグルト和えも付いてくるのですが、つまりはライタ(インド料理のヨーグルトサラダ)です。これを少しかけて食べるとまた違う魅力が引き出されて、夢中になって食べてしまいました。

シェフにお話を聞いてみると、趣味であるカレー食べ歩きの中でネパール料理のディド(そばがき的なもの)とカレーの相性の良さを知り、大阪の人気店でカレーの手ほどきを受けてご自分のお店でもこのスタイルのカレーそばを出すようになったそうです。

「そば粉の可能性は無限です」と話してくれました。やはり正しい知識と技術があれば、そばもカレーもどちらも活かすことのできるカレーそばを作れるのですね。スパイスとしてそばを活かす形の新感覚カレーそば、唯一無二と言って良いでしょう。

僕はカレーそばも大好きで、今まで多くのお店でカレーそばを食べてきましたが、その中でもトップを争うレベルの名店であり、唯一無二の個性のカレーそばだと感じました。そば好き、カレー好きはもちろん、そばとカレーは合わないと思っている人にこそ食べて欲しい逸品です。

※価格はすべて税込

※本記事は取材日(2021年3月21日)時点の情報をもとに作成しています。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※新型コロナウイルス感染拡大を受けて、一部地域で飲食店に営業自粛・時間短縮要請がでています。各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。

文・写真:カレーおじさん\(^o^)/