福井から取り寄せる日本海の恵み。たっぷり野菜と一緒にいただく魚の冷菜

鰺も野菜もボリュームたっぷり「福井産鰺と大根、コリアンダーの一皿」1,370円。

豚肉加工品が得意な天野シェフだが、魚料理にも力を入れている。魚はすべて福井県の魚屋から仕入れ、届いた魚によってどのようなメニューにするかを考えているという。どんなものが出てくるのか、ゲストにとってワクワクする一瞬だ。

この日の冷前菜はたっぷりと脂がのった日本海産の鰺に、厳選した葉野菜をあしらった一皿。日本海の荒波にもまれているからか、「これが鰺?」と思うほどのボリューム感だ。

レモンで軽く〆た鰺の下には、大根を細く千切りにして塩揉みしたものを忍ばせ、ほんのり香るパクチーやわずかに酸味のあるナスタチウム、ディル、セルティーユ、小さいクレソンなどの香草をのせて、サラダ風に仕上げている。

それらをまとめるのが、イタリアの“コラトゥーラ”というカタクチイワシの魚醬を使用して、うまみと塩味を加え入れたドレッシング。野菜の緑に、ブラックオリーブの粒と紅芯大根の鮮やかな赤が映えてなんとも美しい。このたっぷり盛られた野菜を鰺と一緒に、ざっくりと食べるのがよい。

口に入れると肉厚で豊かな脂のうま味と酸味が広がる。そこに、大根の食感や野菜の香り、紅芯大根の甘みなどが合わさり、前菜とは思えぬ満足感ある一皿となっている。

ボリュームたっぷり。体も心もほっとする土鍋料理「カスレ」

「カスレ」(2名分)2,800円。フランスの南西部の伝統的な土鍋料理だ。

メインには伝統料理「カスレ」をチョイスした。トマトやソーセージ、豚足などを煮込んだフランス南西部の郷土料理である。上にのせられているのは、低温のオイルで煮た鴨のもも肉のコンフィだ。白いんげん豆の煮込みの中にはソーセージと豚バラ肉を塩漬けにしたものが入っている。アツアツの湯気と一緒にうまみの詰まった香りが立ち上る。

上にのせられた鴨の皮はサクサクとして、とにかく骨離れが良く柔らかいことに驚く。フォークだけでもサクッと簡単に切れてしまうほどだ。このコンフィを、フォークで崩しながら煮込みと混ぜて一緒にいただけば、まず口の中にあふれるのは、煮込んだ豚バラから染み出す脂部分のじわっとした甘み。さらに、強めの塩気が豆と絶妙な調和を奏でる。うまみの詰まった鴨とソーセージ、豚バラ肉と合わせて三者三様の食感とおいしさを堪能。量も質も、大満足間違いなしの一品だ。

我が家のごとくくつろげる、オーナー夫婦の心遣い

店の奥の4席のカウンター。おひとりさまも大歓迎のアットホームな空間だ。

ここは、一人でふらりと立ち寄っても、まるで我が家に帰ってきたような温かさを感じるビストロだ。アミューズ1品とワインで軽く一杯、という気軽な使い方をする常連さんもいるそう。

天野シェフいわく、「ゲストによって変化はつけるが、基本的にやることは変わらない」。味の好みを伝えて相互のコミュニケーションを楽しむのもよし、季節によって異なる入荷食材をどう変化させるかお任せで楽しむのもよし。気取ったところの一切ないシェフのこだわりは、すべて料理の質に注がれている。

メニューに載っている量は2人前が基本だが、1人で訪れた場合、量を調整することもできる。また、多くの品数を楽しむために、2人前を1人前でオーダーし、2人でシェアするのもOKとのこと。「自由な楽しみ方をしてください」との店の懐の深さに甘えたい。

価格はお手頃ながら、ボリュームたっぷり。安心してお腹いっぱい食べられるのがうれしい。

お財布にも優しく、行きつけの店にふさわしい。素朴なフランス料理とおいしいワインを気軽に楽しめる、自分だけのダイニングシートになりそうだ。

【本日のお会計】(2人)
■食事
・シャルキュトリーの盛り合わせ 1,980円
・福井産鰺と大根、コリアンダーの一皿 1,370円
・カスレ 2,800円
■ドリンク
・グラスワイン 700円×4
■その他
・席料・パン代として 500円×2
合計 9,950円(1人 4,975円)

※価格はすべて税抜

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※新型コロナウイルス感染拡大を受けて、一部地域で飲食店に営業自粛・時間短縮要請がでています。各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。

※本記事は取材日(2021年1月27日)時点の情報をもとに作成しています。

取材:岡崎たかこ(grooo)
文:増山順子(grooo)
撮影:松村宇洋