大規模な再開発にともない、しばらくこの地を離れていた大人たちから再びの注目を集める街・渋谷。だけど、いざ来てみたら食事処に迷ってしまうというケースもしばしば。そんな、“シブヤお久しぶり組”の迷える大人たちのため、「食べログ グルメ著名人」で渋谷区初のCEO(Chief Eat Officer)を務める小宮山雄飛さんに渋谷の新&定番グルメスポットを両方教えてもらっちゃおう! というこの連載。

[定番]編10回目となる今回は、真心のこもった味付け&サービスで、渋谷で20年以上愛される洋食店「おまかせ亭」をご案内します。

【大人の渋谷メシ・定番編】第10回「おまかせ亭」

渋谷で大人がゆっくりと、しかも気軽においしい洋食を楽しめる、ちょっとした隠れ家的なお店があります。それが今回ご紹介する「おまかせ亭」です。

宮益坂から少し入った路地にある小さな入り口は、知らないと通り過ぎてしまいそうですが、「食べログ 洋食 百名店 2020」にも選ばれている名店です。

整頓された落ち着いた店内は、どこか知り合いの家に来たかのような安心感があります。

こちらの名物料理は数あるのですが、僕が一番好きなのは、なんといっても「オニオンカレーライス」。カレー専門店のカレーとも、洋食屋さんのカレーとも、家庭のカレーとも違う、唯一無二の「おまかせ亭のカレー」なのです。

「オニオンカレーライス」

ライスの上には素揚げにしたカラフルな野菜と揚げパンがのり、別の容器にたまねぎの甘みが魅力のシャバシャバなカレーソースがたっぷり。

見た目にも鮮やかなこのカレーに、ランチはサラダ・コーヒー・デザートが付いて1,140円と、お得! ライスの上にパンというのも意外な組み合わせですが、このカレーにはおすすめの食べ方があります。

揚げパンはまずカレーソースに漬けてしまう。このときに心の中で「あとでね!」 と呟くのも忘れずに。(伊丹十三「タンポポ」風)

そして素揚げの野菜はナイフで一口サイズに切って、ライスの上に散らします。

これで準備万端。あとはソースをライスにかけていただきます。

洋食屋さんだけあって、ベースとなるオニオンスープの旨味たっぷりソースは、実にやさしい味。ハーブの香りが利いていますが、それ以上に素材そのものの味をしっかり味わうことができます。

ソースはあっさりしていますが、野菜を素揚げすることでコクも加わり、しっかり満足感もあります。

そして、ライスを半分くらい食べたところで、先ほどの揚げパンを取り出していただくと、この旨味たっぷりのソースをしっかり吸い込んで、実に滲み旨なのです! カレーマニアにもファンの多い「おまかせ亭」のオニオンカレーライス、上品な味で老若男女問わず愛される一皿です。

「シフォンケーキ」

さらにうれしいのは食後のデザート。すべて手作りで、甘さ控えめの優しいおいしさ。

「チーズケーキ」

シフォンケーキやチーズケーキなど、その日にあるデザートが付き(デザートは選べません)、コーヒーと一緒に食後もゆっくりできるのも、人気の秘訣。さらに、カレーと並んでこちらの名物なのが「オムレツライス」。

「オムレツライス」1,140円(ランチ)

オムレツライスには洋風と和風がありますが、今回いただいたのは洋風。

ライスの上にトロトロのオムレツ、上から自家製のトマトソース。ソースはトマトケチャップにチキンブイヨン、バターなどを加えたまろやかな味。粒のままのブラックペッパーがところどころアクセントになり、スプーンが止まりません。

硬めに炊かれたライスと、コクがありながらもさらっとしたトマトソースの組み合わせで、オムライスにありがちなモッタリ感が全くなく、一気にペロっと食べ進んでしまいます。

カレーといいオムレツライスといい、「おまかせ亭」オリジナルな一皿にもかかわらず、なぜだかほっと安心する味わいについて山崎シェフにお話を伺ってみると、どちらの料理にも意外な共通点が!

山崎シェフ

元はキッコーマンの直営レストランのスタッフが集まって始めたお店。ベースはフレンチですが、町の洋食屋として大切にしているのは「毎日でも食べられるおいしさ」。そこで意識したのは、実は日本の家庭の味。

「毎日食べられるものってなんだろうと考えたら、お味噌汁とか、卵かけご飯ですよね」と山崎シェフ。

なんとオニオンカレーのイメージはお味噌汁なんだそう! チキンブイヨンにカツオと昆布のだしを加え、お味噌汁のように仕上げたのが「おまかせ亭」のカレーソース。つまりこちらのカレーライスは、実は味噌汁ご飯のようなもの。さらにオムレツライスは、卵かけご飯。だから、日本人の口にすっと合うのです。

言われれば納得ですが、フレンチや洋食の概念を飛び越えて、日本人が毎日食べても飽きない味付けに至るのは、すごい発想の転換です。「おまかせ亭」の味が長年渋谷で愛されているのは、そんな創意工夫があったからなんです。

テイクアウトもしっかり対応。サラダやデザートが付かない分、どのメニューもお安くなっているのもポイント!

ランチ限定、テイクアウトの「ハヤシライス」800円

具がたっぷりなハヤシライスも「おまかせ亭」らしい優しい味で人気。だし巻き卵が付いているのも、日本人の口に合わせたお店らしい工夫。

渋谷で20年以上愛されている「おまかせ亭」は、味もサービスも真心を感じる、素敵な洋食屋さんです。

※店内メニューはすべて税抜、テイクアウトは税込価格

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※新型コロナウイルス感染拡大を受けて、一部地域で飲食店に営業自粛・時間短縮要請がでています。各自治体の情報をご参照の上、充分な感染症対策を実施し、適切なご利用をお願いします。

※本記事は取材日(2021年1月22日)時点の情報をもとに作成しています。

文:小宮山雄飛

撮影:GENIUS AT WORK