大規模な再開発にともない、しばらくこの地を離れていた大人たちから再びの注目を集める街・渋谷。だけど、いざ来てみたら食事処に迷ってしまうというケースもしばしば。そんな、“シブヤお久しぶり組”の迷える大人たちのため「食べログ グルメ著名人」で渋谷区初のCEO(Chief Eat Officer)を務める小宮山雄飛さんに渋谷の新&定番グルメスポットを両方教えてもらっちゃおう!というこの連載。

[定番]編27回目となる今回は、スペインとフランスの両方にまたがるバスク地方の料理を楽しめる「サンジャン・ピエドポー」をご案内します。

【大人の渋谷メシ・定番編】第27回「サンジャン・ピエドポー」

渋谷でおいしいバスク料理を食べられるのが「サンジャン・ピエドポー」。特にランチはお手頃に本格料理が食べられると連日沢山の人で賑わっています。

お店があるのはビルの2階、ウッディな看板が目印
気取らない雰囲気が良い店内

とにかくコスパの高さがすごいと人気のランチ。前菜+メインディッシュ+デザート+ドリンクでも、2,300円! メインディッシュは常時3種類用意されています。

メインディッシュは週替わり ※写真は取材日とは別の週のメニューです

今回はせっかくなので、メインディッシュ3種類に単品の追加メニューまで、サンジャン・ピエドポーさんのこの日のランチメニューを全制覇しちゃいます(通常は、メイン3種類の中から一つを選びます)。

前菜とパン

まずは前菜、この時点で豪華! サラダに、サーモンタルタル、キャロットラペ、南仏野菜のピペラード。

色鮮やかで量がたっぷりなのもうれしい

ピペラードとは、唐辛子を意味する、バスクの家庭でよく親しまれる煮込み料理のこと。驚くことに、だしに生ハムが使われているんだとか。バスクと言えば高級生ハムの産地。こんなところにもそのおいしさが活かされているのです。

「バスク産生ハム」600円

ということで、さっそく単品の生ハムを追加。バスクのキントア豚の生ハムは、脂の甘味と肉の旨味のバランスが見事。濃厚なのにあっさりとしています。お店では脂身から骨まで、すべて余すところなく料理に使っているそうなので、文字通りこちらのお店の屋台骨となる食材です。

メイン料理「国産豚ロースと夏野菜のブロシェット」

ブロシェットとは串焼きのこと。グリルで香ばしく焼かれた豚肉はもちろん、茄子やパプリカなど野菜一つひとつがまた力強い旨さ!

肉汁と香辛料の相性が良い!

肉の上にポツポツと見える赤い粉。実はこれがバスク料理に欠かせない香辛料ピマン・デスペレット。

ピマン・デスペレット

辛さだけではなく、唐辛子本来の甘みや風味が強く、高価で日本ではなかなか手に入りにくいのですが、バスク料理に欠かせない調味料です。

ここでさらに単品を追加。

「パテバスク」600円

しっとりとした食感が魅力の自家製パテは、生ハム同様、バスクのキントア豚の背脂を使っていて、フレッシュで軽い旨味が魅力。

メイン料理「鮮魚のパエリア」

色鮮やかで見るからにおいしそうなパエリア。海老や帆立など、魚介類から出た旨味をたっぷり吸ったお米がとにかくおいしい! オイルと絡んだ表面のねっとり感も良く、もはや、このパエリアをおかずに白米を食べたいくらい(笑)。レモンを搾ってさらなる味変も楽しめて、実に満足度の高い一皿です。

ここでもう一品、絶対に頼んでほしい単品メニューを。

「キッシュ」600円

「これがキッシュ!?」と誰もがびっくりするであろう、とろっとろの見た目。こちらはバスク地方の料理法というわけではなく、シェフが独自に学んだものだそうで、とにかく既存のキッシュの概念が吹っ飛ぶおいしさなのです。

フォークですくうと、今にもこぼれ落ちそう!

口の中でとろけるキッシュ。食感的にはプリンやとろとろのオムレツのような感じですが、優しい塩味で旨味もしっかりあり、頭の中がちょっと混乱するおいしさ。こんなおいしいキッシュ初めて! これはマストで追加すべき一品。

メイン料理「子羊のナヴァラン煮込み」

メイン3種類のラストは「子羊のナヴァラン煮込み」。ナヴァランとはフランス料理の羊と野菜の煮込みのこと。

しっかり煮込まれた子羊肉

繊維がほろほろと崩れるまで煮込まれた子羊の肉は、柔らかくゼラチン感があって絶妙な口当たり。ここまで煮込まれていても、しっかり旨味が残っているのもすごい。ブロッコリー、カリフラワー、いんげんなどそれぞれの野菜の食感や味もしっかりしていて、羊独特の風味とよく合います。夜だったら絶対赤ワインを飲みたくなる一品ですね。

バスクチーズケーキとアイス

日本では、バスクと聞いて思い浮かべる食べ物と言えば、バスクチーズケーキかもしれませんね。ここ数年すっかりブームにもなっているバスクチーズケーキは、濃厚なクリームチーズの旨味がさっぱりとしたアイスと相性抜群。

フランス産グループジュースとお茶菓子(フィナンシェ)

食後のドリンクは、甘すぎないグレープジュースをセレクト。さっぱりと口の中を流してくれて、デザート後のちょっとしたご褒美のようなミニャルディーズ(食後の焼き菓子)もうれしい。

噂通り、この値段でこの内容は、大満足を通り越して申し訳なくなるくらいのお得ランチ。気取らない店内で、おいしく楽しいお昼のひと時を過ごしてみてください。

※2022年8月20日〜25日は夏季休暇のため休業

※価格はすべて税込

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

※営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、最新の情報はお店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

取材・文:小宮山雄飛

撮影:GENIUS AT WORK