かつてない串料理に、食欲と好奇心が刺激される!

各席に置かれた献立には、食材の名前だけが書かれているので、供されるまで想像するしかない。では、早速その未知なる串料理を紹介していこう。

シグネチャーメニュー「ブーダンノワール りんご」

「ブータンノワール りんご」

まずは、シグネチャーの「ブーダンノワール りんご」。初来店の場合、1品目はこれと決まっている。

どうやって完成されたのかを問うと、中がトロッとしたブーダンノワールの串揚げをフロリレージュの川手さんが提案したそう。すると「ブーダンノワールにはりんごが合うよね」と、傳の長谷川さんが薄切りにしたりんごをガリに見立て甘酢漬けに。味のアクセントに添えた和がらしは試食した結果、ふたりで決めた。

こうしてこの「ブーダンノワール りんご」は、それぞれ得意分野での技術とセンスを生かし融合させた、芸術的な傑作となったのである。

食べ合わせの妙に感動する「いわし レバームー」

「いわし レバームー」

2品目は「いわし レバームー」だ。レバームースではなく“レバームー”と記載しているのは川手さんたっての希望とのこと。

まずはそれぞれ単品で味わってみる。つくねはネギ、味噌、生姜を使った、まるで「なめろう」のよう。また、一瞬にして口の中で溶けるフワッフワのレバームースには塩昆布のパウダーをふりかけ、和のうまみを加えながらしっかりとレバーの香りが残るように仕上げている。

次につくねにレバームースをたっぷりのせてみる。なんということだろう、つくねは完全に和食で、レバームースは完全にフランス料理だが、ここまで“おいしい関係”が生まれるとは! 食べ合わせの妙とはこういうことなのだろう。

伝統的な料理を、独自のセンスで再構築「がんも キャロットラペ」

「がんも キャロットラペ」

3品目の「がんも キャロットラペ」は、まるでがんもを分解して再構築したような料理。細かくした豆腐を丸く成形し、パプリカ・七味・胡麻・鰹節をミックスしたパウダーをたっぷりとふりかけて、白菜の塩漬けから出たエキスで作るマヨネーズソースを4箇所にのせている。

食べると確かに記憶にある味わい。最後に「あ、がんもだ」と感じるのは底に塗った醤油のせいか。口直しのようにキャロットラペをつまむ。やわらかい酢の加減に食欲が増してくる。革新的に見えても、根底にあるのは伝統的なレシピだ。それを独自のセンスで再構築しているのである。

ドリンクはビール、ワイン、日本酒、サワー、ハイボール、お茶割り、焼酎、台湾茶などが揃う

熟成したテキーラ3種をブレンドし濾過した「クリスタリーノ」でつくるハイボールは、ウイスキーに比べスッキリしているので、料理の繊細な味を邪魔しない。そんな料理に合うドリンクを提案してくれるのが、女将の橋本恭子さん。「フロリレージュ」のマネージャーであった橋本さんは「こんなにワクワクするお店とは二度と出逢えない」と自ら移籍を志願した。

フロリレージュはワインが主体だったが、こちらでは前述のテキーラハイボールのほか、沖縄の柑橘「カーブチー」や「アップルジンジャー」などのオリジナルサワー、台湾茶割りなど“割りもの”にこだわる。料理同様、未知のものにぜひトライしてほしい。