2020年の締めくくりにぴったりなクリスマススイーツについて、「猫井登のスイーツ探訪」でお馴染みの猫井先生に教えてもらうこの企画。前編では、お馴染みのクリスマスケーキや手土産に最適なスイーツを紹介しましたが、後編では、今注目されている世界各国のクリスマス菓子について教えてもらいました!

ケーキ以外で祝うクリスマスも素敵! 2020年おすすめの世界のクリスマススイーツ

【フランス】熟成による味わいの変化を楽しむフランス菓子「ベラベッカ」

海外のクリスマス菓子として最も知られているのは、フランスの「ブッシュ・ド・ノエル」だが、マニアの間で人気を得ているのが、フランス・アルザス地方のクリスマス菓子である「ベラベッカ」! 今回は、まずこのベラベッカが秀逸なお店を紹介。

撮影:外山温子

「パティスリー パクタージュ」は、齋藤由季シェフが小田急線・玉川学園前駅近くにオープンしたお店。フランス菓子の伝統を大切にしながら、素材の味わいがしっかりと感じられるケーキ作りを目指されている。齋藤シェフは、日本のパティスリーで修行後、渡仏。フランス南部モンペリエの二ツ星レストランや美食の町といわれるリヨンの老舗パティスリー・ショコラトリーで研鑽を積み、帰国後は東京・銀座「パティスリー・ミツワ」、自由が丘「パリ・セヴェイユ」などを経て、南品川「レ・サンク・エピス」のシェフパティシエールに。2013年に独立され、こちらのお店をオープン。シェフのご主人、久保雅彦氏もパティシエで、お二人でお店を運営されている。

「ベラベッカ」2,180円(税込)/写真:お店から

ベラベッカ(Berawecka)とは、アルザス地方の言葉で「洋梨のパン」の意味。洋梨のほか、レーズン、オレンジ、アプリコットなどのドライフルーツを洋酒漬けにしたものにナッツを合わせて少量の生地でまとめて、焼き上げたもの。寒さの厳しいアルザス地方で、生のフルーツがとれなくなる冬、特にクリスマスの時季を中心に食べられるお菓子だ。

こちらのお店のベラベッカは、多くの種類のドライフルーツを上質の蒸留酒に漬け込み、スパイスを利かせてぎゅっと固めたもの。日に日に変わる味わいが楽しい。最初の頃はそれぞれのフルーツの味わいやスパイスの存在が感じられるが、熟成が進むにつれて渾然一体となったまろやかな味わいに変化していく。赤ワインとの相性が抜群の、大人のクリスマス菓子だ。

【ドイツ】クリスマス当日までカウントダウンしながら味わいたい「シュトレン」

ドイツのクリスマス菓子といえば「シュトレン」! 日本では「シュトーレン」と表記されることが多いが、「シュトレン」が正式。日本でも多くの洋菓子店がクリスマスシーズンに作るようになったが、やはり本場ドイツ流のものを味わってみたいもの。そこで今回は、ドイツでほぼ1世紀の歴史を誇る老舗を紹介!

「シュトーレン」2,808円(税込)

「ホレンディッシェ・カカオシュトゥーベ」は、ドイツ・ニーダーザクセン州の州都ハノーファーで約100年の歴史を誇る老舗。ちょっと変わった店名で、直訳すると「オランダ風カカオ店」という意味。元々オランダの有名なココア店「バンホーテン」のココアの試飲店だったお店を1921年に引き継ぎ、コンディトライ(パティスリーとカフェを併設した店舗)にしたことに由来する。定番商品としてはバウムクーヘンが有名だが、クリスマスの季節限定でシュトレンも販売。

こちらのシュトレンは、バターをたっぷりと使った生地に、芳醇で上品なナッツの香りが特徴のドイツのリューベッカ社のマジパン(アーモンドと砂糖を合わせたもの)を練り込んでいる。そこにレーズン、オレンジピール、レモンピール、アーモンドなどが贅沢に散りばめられ、しっとりとした食感で、奥深く深みのある味わいとなっている。

食後にワインやコーヒーと合わせながら、毎日少しずつ、味わいの変化を感じながら食べるのが楽しい。

【イタリア】焼き上がってからも熟成するミラノの伝統菓子「パネットーネ」

“2020年のクリスマス菓子”として、最も注目を浴びているのがイタリアの「パネットーネ」! イタリア・ミラノの伝統的なクリスマス菓子だ。パネットーネは、パネットーネ菌という特殊な天然酵母を使って作るのが正当。近時、日本でも見られるようになったが、ほかの酵母を使っているものが多い。今日は絶品の正統派パネットーネを作っているお店を紹介!

「LESS」は、2019年9月にイタリア人シェフのガブリエレ・リヴァ氏と坂倉加奈子氏がタッグを組み、オープン。通年、パネットーネを販売する希少なお店。

リヴァ氏は、イタリア・ミラノにある実家のパティスリーで修業を積んだ後、22歳でロンドンのレストランのシェフパティシエに就任。ニューヨークではUSAカカオバリーアンバサダーを務めた経歴も持つ。パネットーネは、卵やバターのほか、ナッツ、ドライフルーツといったリッチな食材を使うため、膨らませるためには、強い天然酵母が必要。日々変化する気温や湿度の中で、天然酵母の管理、発酵の調整など、高度な職人の技量が要求され、上手に作るのが非常に難しい発酵菓子だ。

「GR PANETTONE」(ミルクチョコレート/オレンジ/ヘーゼルナッツ)1/4サイズ 各864円

こちらの店では、リヴァ氏の実家のパティスリーで50年以上に渡って受け継がれたパネットーネ種を使用してパネットーネを製造。定番の「GR PANETTONE」(ミルクチョコレート/オレンジ/ヘーゼルナッツ)、「AGRUMI PANETTONE」(レモン/オレンジ/日本の柑橘)のほか、栗や桜といった季節の食材を使った季節限定商品も登場。

「AGURUMI PANETTONE」(レモン/オレンジ/日本の柑橘)3,780円

パネットーネは天然酵母による発酵食品の一種なので、焼き上がってからも熟成していく。LESSでは店内の工房で作っているため、作って日が浅いフレッシュな状態のものから楽しめる。

フレッシュなものは軽やかな食感で、爽やかな甘酸っぱい香り。紅茶、浅煎りのコーヒーと合わせるのがおすすめ。熟成すると生地が内容物となじみ、しっとりと奥深い味わいに変化。濃い目のコーヒーや赤ワインなどと合わせるのがおすすめ。

今回はクリスマス菓子特集ということで、パネットーネにスポットを当てたが、実はこちらのお店、生菓子も秀逸だ。それもそのはず、リヴァ氏とタッグを組む坂倉氏は、日本で製菓の基礎を学んだあと渡仏、パリのパティスリーやレストランでパティシエとして修業。ノルウェーのレストランではシェフパティシエに。帰国後、ヒルトン東京では、初の女性シェフパティシエに就任。フレンチレストラン「NARISAWA」などで活躍された輝かしい経歴を持つ。

「無花果のスカッシュ」825円と「苺とバラのタルト」990円

「無花果のスカッシュ」は、熟した果肉を炭酸に溶け込ませたようなフレッシュでフルーティーな味わい。「苺とバラのタルト」は、優雅なバラの香りのクリームと苺、カスタードの組み合わせ。バラの雫として飾られたナパージュ(透明ゼリー)の中にバニラビーンズの種を入れて本物の花に似せるこだわりよう。飾られたエディブルフラワーの花びらまでもがフルーティーな味わいだ。

「ゴルゴンゾーラのチーズケーキ」880円

「ゴルゴンゾーラのチーズケーキ」は、ゴルゴンゾーラの味わいを活かしつつも角をとり、濃厚でありながらクリーミーでミルキーに仕上げられたチーズを、スペキュロス(ジンジャークッキーの一種)のようなスパイスがほのかに香る極薄の生地で包み込んだ逸品。上部の塩味を利かせたクリームが味わいを引き締める大人のケーキ。

こちらのケーキは、ビジュアル、味わいともに、もはや「ケーキ屋さんのケーキ」ではなく、「レストランのデセール」と言ってよいほどの完成度だ。こちらのお店を訪れたら是非、生菓子も味わってほしい。

※クリスマスの時期はイートインは利用できない場合があります。

※価格はすべて税込

※記事内で紹介した商品は予約商品・期間限定商品も含まれるため、店舗によっては販売数終了の可能性があります。予めご了承ください。

※時節柄、メニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。

※本記事は取材日(2020年11月15日)時点の情報をもとに作成しています。

撮影・文:猫井登