フードライター・森脇慶子が注目している飲食店をレポートする当連載。今回は特別編として、一度は行ってみたいと憧れる名店のテイクアウトメニューをピックアップして紹介。

 

外食もままならない今だからこそ楽しめる名店のテイクアウト弁当。おいしく食べて心と身体のステップアップ、免疫力向上にも繋がるはずだ。

【森脇慶子のココに注目 特別編】憧れの名店のお弁当

【フレンチ】低温調理された上州牛のローストビーフを贅沢に味わえる「ア・ニュ Shohei Shimono」

開店10周年を機に、去年の8月リニューアルした広尾のフランス料理店「ア・ニュ Shohei Shimono」。その一流店の味を詰め込んだ1日20個限定のお弁当を、先月末から店頭販売。バラエティに富んだ味が好評だ。

一日20個限定「ア・ニュ特製 花山椒ローストビーフ弁当」5,000円

“一瞬ごとの最高をありのままに表現する”をコンセプトとする下野昌平シェフ。その思いが、よりダイレクトにお客さまに伝わるようにとカウンター中心のオープンキッチンに生まれ変わった同店は、料理も方向性を一新。お客さまの目の前で素材と向き合いつつ作りあげる一皿一皿は、フレンチに軸足を置きつつも、石垣牛のオムライスやオマールえびのトムヤムクンなど遊び心も満載。そんなレストランの味の数々がこの二段重に詰め込まれているのだから見逃せない。

お弁当に用いた牛肉は赤身に旨味のある上州牛。下野シェフ曰く「ロース肉を塩、胡椒して焼き色をつけた後、陳皮を加えた醤油ベースのソースと共に真空にかけ、57度で3時間ゆっくり火を入れている」そうで、レアに仕上げられたローストビーフは柔らかく、程よく散らした花山椒がアクセントとなっている。

 

また4月21日から、新たなお弁当「花山椒マダムビュルゴーシャラン鴨と自家製味噌漬けフォアグラ弁当」も登場しており、こちらも見逃せない。

一日6個限定「フランス産ピジョン(鳩)のおつまみセット」10,000円

一方、おかずBOXに入っているのは「旬のホタルイカと筍のバーニャカウダ和え」と「稚鮎とネギの南蛮漬け風」。そして、レストランで使っている長野の契約農家「大島農園」の野菜のブレゼ。ビーツや黄色人参、黒大根など10種類以上の野菜をアンチョビやケッパー、ニンニク等と共にココットで蒸し煮にしたものだ。

「野菜がおいしいので、味付けは最小限。水も一切加えず野菜本来の旨味を引き出すようにしている」そうだ。ちなみにこの野菜は、店頭でも販売。お弁当を受け取りに行ったついでにチェックしてみては?

 

■予約概要

予約方法:受取日の前日18時までに、店舗FacebookInstagramのダイレクトメッセージにて以下内容を記載の上、申し込み。

・氏名
・電話番号(連絡の取れる携帯電話)
・弁当の種類と個数

予約システムhttp://bit.ly/anu-reserve からの予約も可能。

受け取り方法:受け取り当日の16時~18時に店頭にて、現金のみ対応。

 

※価格はすべて税込

 

【肉割烹】まるで肉の宝箱! 上質な牛タンがご飯の上にぎっしり「肉匠堀越」

「堀越の肉ばらちらし」8,000円

蓋を開けた瞬間、「おぉ!」という歓声が上がること必至の銘品がこれ。肉割烹の名店「肉匠堀越」の「堀越の肉ばらちらし」だ。表面を覆い尽くす肉の宝石たちは、太田牛の牛タンとザブトン。それも「牛タンは、1本約2kgぐらいの牛タンから300〜400g程度しか切り落とせない芯の一番良い部分しか使っていません」そう胸を張るのは、ご主人の末富信さん。

 

魚料理店の息子に生れながら、自ら焼肉店を始めてしまったほどの肉愛の持ち主だ。それだけに、肉にかける情熱は人一倍。このお弁当にも、そんな末富さんの限りない肉への愛情と肉のスペシャリストとしてのプライドが詰め込まれている。

 

牛タンとザブトンは、真空調理法で仕上げつつも、「真空調理にした後、フレンチのアロゼのように熱した米油をかけながら肉の周りに焼き目を入れています」と末富さん。だからなのだろう。口にすれば、周りはこんがり芳ばしく、それでいて中はしっとりとしなやか。肉ならではの豊かな旨味が口中いっぱいにジワジワと広がる。

角切りにした牛タンは、厚みのあるタンならではのカシッと歯が入る心地よさに加え、弾力のある歯応えが小気味よい。一方、ザブトンは黒毛和牛特有の甘やかな肉の香りが、噛みしめるたび味蕾(みらい)の奥に沁みわたる。ご飯に忍ばせた旬の筍や表面に散らしたたくあんが程よく味覚をリセット。食べ飽きさせない工夫もさすがだろう。さらにご飯にもひと工夫。昆布や干し椎茸で天然の旨味を補充。肉とのバランスを取っている。自家製だし醤油がついているものの、何もつけずとも、このままで充分。

 

通常のコースで出される牛タンの2.5人前とザブトン2人前の量がたっぷり入って8,000円。ちょっと贅沢したい夜に是非。

 

■予約概要

予約方法:予約専用サイトより事前申し込み、事前決済方式。

https://omakase.in/ja/r/ay444511

受け取り方法:店頭にて受け取り。

 

※価格は税込

 

【焼肉】予約困難の名店から衝撃のワンコイン焼肉弁当が登場!「炭火焼肉 なかはら」

一日限定20食「頑張れ日本弁当」500円

まずは写真のお弁当をご覧いただきたい。果たして幾らと思われるだろうか。手前から、牛の肉そぼろにタレ味のサーロイン、塩味の肩三角とブリスケ(前足の付け根部分にある胸肉で肩バラの一部)の肉3種類。もちろん、いずれも黒毛和牛。そして、長ネギ、ししとうの炭火焼とキムチ入り。しかも、あの予約困難の人気店、市谷「炭火焼肉なかはら」謹製―とくれば、値段の方も推して知るべし……。と思いきや、なんとたったの500円!!!! これには、誰しも身を乗り出さずにはいられまい。

 

「お弁当作りの目的のひとつは、おいしいものをお客さまに召し上がっていただいて元気をつけてもらいたい。そんな気持ちと、僕たち自身もお客さまの笑顔に少しでも触れて元気をもらいたいという思いから。そして何より、食材を回して生産者さんを支えること。これが急務です。一度止めてしまった歯車は、簡単には元に戻りません。だから、いま、この状況でも以前と変わらず肉を仕入れて、いつもお店でお出ししている内容と全く同じ肉をお弁当に入れています」と、ご主人の中原健太郎さん。

 

ワンコイン弁当に入っている肉は、コース一本に絞る前にお店でも出していた、いわゆる切り落としの部分を使っているとか。

一日限定40食「炭火焼二段重」弁当

また、5,000円の二段弁当には、17,000円のコースで出している肉がひと通り、塩とタレの二箱に分かれて詰め込まれている。そう、これらの焼肉弁当は、中原さんの男気から生まれた努力の結晶なのだ。

 

肉の内容はお任せゆえ、日によって変わるが、5,000円のお弁当には、「なかはら」の顔とも言えるサーロインは必ず入るそう。上質なサシの入ったサーロインに甘みを控えスッキリとした後口のタレが絶妙に絡み、冷めても充分、否、冷めていればこその落ち着いた肉の余韻を楽しませてくれる。これぞ、質高い肉ならではのおいしさだろう。

 

500円の方にも必ずとは言えないが、今回のようにサーロインが入ることも。タレと塩、サシの入った部分や赤身、歯応えのある柔らかな肉等々、バランスを考えて選んでいるそうだ。その肉の配分もさることながら、絶妙な歯ざわりを生む肉の微妙な厚さ、さりげなく入れた切れ目など肉のカットに対する中原さんのきめ細かな仕事が、冷めた肉だからこそ発揮されているのに気づかされる。冷めても遜色なく食べられる所以だろう。

 

また、意外なヒット作!?が肉そぼろだ。肉そぼろといえば鶏肉がおなじみだが、こちらは珍しい牛肉そぼろ。牛ならではのコクにタレとくれば、白飯との相性は上々。厚みのある旨味が粒の立ったご飯にぴったりだ。

 

■予約概要

予約方法:受け取り日の前日12時〜18時に以下内容とともに電話にて申し込み。

・氏名
・電話番号
・弁当の種類と個数

受け取り方法:受け取り当日16時~17時、店頭にて。現金のみ対応。

 

※価格はすべて税込

 

 

※外出される際は、感染症対策の実施と人混みの多い場所は避けるなど、十分にご留意ください。
※テイクアウトは期間限定の場合も多く、予約方法含め日々内容も変化するため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

 

取材・文:森脇慶子

撮影:佐藤潮