ハンバーガーをこよなく愛し、そのおいしさを探求し続ける、ハンバーガー探求家の松原好秀さん。そんな、ハンバーガー界唯一の存在である松原さんに、一食の主食として満足できる、じっくり食べられるハンバーガーを紹介してもらうこの連載。第9回は、東京・八王子にある「Soul Grill(ソウルグリル)」のハンバーガーの魅力をたっぷり教えてもらいます!

【じっくり食べたいハンバーガー】第9回「Soul Grill」

当連載には、実力はあるのに評価がイマイチ伴わない、“underrate”な店を紹介したいという“裏テーマ”が実はあります。その裏テーマ視点で、これまでの店を振り返ってみると、ひとつ見えてくるものがあります……それは“場所”です。店の立地や所在地のことですが、今回ご紹介する「Soul Grill」も、その場所によって“隠された”店であるように私は思えます。一体どんな店が隠れているのか、ちょっと宝探しに出かけてみましょう。

「ハンバーガーを食べに行こう!」とは普段なかなか思わない、東京西部の八王子にソウルグリルはあります。でも駅からは近くて、JR八王子駅から歩いて5分ほど。ただし、にぎやかな北口でなく、反対の南口。ひっそり静かな住宅地の中にポツンと現れるダイナーです。

 

扉を開けると、中は「美容室か」と思うばかりの明るく立派な造り。木目とティファニーブルーのツートーンが印象的な30坪ほどの店内に席数ゆったり30席。郊外の店ならではの、なんとも贅沢な空間の使い方です。キッチンも都心の店が羨むほどに広々。あと、トイレが立派。

店主の松井さんは都内の有名ダイナーに10年勤めたベテランです。ラスト4年は店長を任され、退職後、親類の縁でここ八王子に店を構えました。福島県出身の松井さんにとって、知り合いも土地勘もない場所でのポツンとゼロからのスタートです。今年の4月で4周年を迎えます。

「バナナシェイク」700円。バニラアイスに牛乳と冷凍バナナを加えてシェイク。「ねとっ」と濃厚

ソウルグリルのひとつ目のポイントは「なんでも手作り」なこと。ベーコン、ソーセージ、ハム、コンビーフ、ミートローフ、スモークサーモン、プルドポーク、ソース7種、ドレッシング3種……「ケチャップ、マスタード、ポテト以外はすべて手作り」と言うぐらい、なんでも自前で作ることに徹しています。相当な仕込みの数ですが、そこは都内ダイナーで鍛え抜かれた松井さん。テキパキと手際よく、しかも丁寧にこなしていきます。

「自家製ソーセージのホットドッグ」1,200円。豚バラ肉とロース肉を豚腸に詰めて、最後はスモーク2~3時間。ドッグパンも西八王子のパン店作

3日がかりで作る自家製ソーセージは全長21cmの230g! 直径が3.5cmもあって(数値は個体差あり)、これを特注のチャコールグリルで焼き上げます。この「炭火焼き」がふたつ目のポイントです。絶えず炭を熾し続けなければならない、手のかかる炭火焼きですが、上手く焼けたときのおいしさは格別。ソーセージも「ガチッ」と張った皮が芳ばしく焼け焦げて、コレ一本で十分満腹のボリュームと迫力!

テリヤキパティの調理中。タレを塗りながらグリル。落ちたタレが焼け焦げて、そのにおいがパティについて芳ばしく焼き上がる

ハンバーガーは全部で9品。パティは125g。手切り肉と挽肉が半々の配合で、使っている4つの部位中3つまでがUSビーフ。生地が黄色いバンズは西八王子のベーカリー特注。「チーズバーガー」を頼んだところ、肉もバンズもやわらかで食べやすく、「スッ」と口に入る素直な食べ口が印象的な一方、塩コショウは控え目で、その分、押しの強さに欠けるようにも思いました。それを踏まえて、ソウルグリルで「食べるならコレ!」というバーガーを2品ご紹介しましょう。

「ベーコンチーズバーガー」1,450円。ベーコンは炭で熱燻。チップはサクラを使用。バターミルクで和えたコールスローにも自家製ハムが入って「プン!」とスモークの香り

まずは「ベーコンチーズバーガー」です。5日かけて作る自家製ベーコン80~90gを薄く3枚にスライス。焦げるぐらい焼き込んでガリッガリになった、まるでベーコンビッツのような食感がチーズバーガーの間に挟まり、これが美味! ケチャップの甘味と酸味。野菜のみずみずしさ。そこにベーコンのゆるい塩気がピタッとハマって、エッジの利いた、非常によくまとまった「ベーチー」に仕上がっています。

「テリヤキバーガー」1,350円。ケチャップ&マスタードは入らず、代わりに少量のマヨネーズ。オニオンはグリルド

もうひとつは「テリヤキバーガー」。テリヤキソースはなんと、昆布だしを取るところから始める自家製。かつおだし(こちらは粉末)、醤油、酒、砂糖などと合わせたテリヤキソースは、確かに「だし」が利いていて、食べ口の素直な肉とバンズにきれいに絡まり、ちょっと食べたことがないような、味わい深い一品に仕上がっています。

 

パティはタレを塗りながらの、まさに「照り焼き」。グリルドオニオンとフライドエッグの旨味も合わさり、旨味成分満載! 残り汁のまぁおいしいこと! コショウをあまり利かせていないので、その味に消されることなく、微細な味わいを深く感じ取ることができる、これは傑作です!

そんな威力抜群の炭火焼きの店なので、ソウルグリルはとにかく「肉」がおすすめ。「ベイビーバックリブ」「リブアイステーキ」辺りが松井さんの推しですが、「ステーキサンド」がこれまた想像を超える絶品!

「ステーキサンド」1,450円。ステーキ肉はむしろこの厚みゆえの食べやすさ・噛み切りやすさ

USビーフのリブアイステーキが約130g。見る限り「薄ーい肉」ですが、炭火の遠赤外線効果で、やわらかーく焼けています。とろける脂の旨味。炭の香りがプンと漂って、その下でグリュイエールチーズのコク味がじんわり。ステーキの味付けは塩コショウのみ。食パンも薄切りを強く焼き込んで「シャリッ!」と歯切れよく、野菜も含め、すべてがシャープにまとまった、キレッキレのサンドイッチです。

ということで、私のレイティングでは、「ベーチー」「テリヤキ」「ステーキサンド」、これらはわざわざ八王子まで食べに行く価値の十分ある逸品です。仕込みから、焼きから、いろいろ手間暇かかっていますから、いつまでも隠れていないで、もっともっと知られてほしいお店ですね。

 

※価格はすべて税抜

 

 

取材・文・写真:松原好秀