【じっくり食べたいハンバーガー】第32回「WAYBACK BURGERS 表参道店」

今年3月、また新たなアメリカのハンバーガーレストランが日本に上陸しました。その名は「WAYBACK BURGERS(ウェイバックバーガーズ)」。全米に160店以上、世界38カ国に約600店を展開するハンバーガーチェーンです。

場所は東京・表参道。名だたるハイブランドが建ち並ぶ表参道のまさに中心地のような場所に位置します。以前「モスカフェ 表参道店」があった場所で、1階はチョコレートの「リンツ」のブティック。その横の階段を上がると、2階は白と黒とグレイから成るモダンなハンバーガーショップ。この色遣いの時点で、すでに表参道の街によく溶け込んでいます。

お店に行ったら写真中央にある壁の時計の針の向きに注目してみて!

都会的なセンスの店ですが、実は米本国では「郊外型」のバーガー店です。ニューヨークやロサンゼルスなどの中心地ではなく、少し離れたベッドタウンに店を構えて、コロナ禍で他のバーガーチェーンが業績を落とす中でも着実に売り上げを伸ばして来た――そんな昨今大注目のハンバーガーブランド。創業は1991年。本社はコネチカット州。発祥の地はデラウェア州。

そんな店が「なぜ表参道に?」というのは記事の最後で触れましょう。席数は店内46席+テラス32席。ラウンドソファもあり、かなりゆったり過ごせます。注文はレジで。呼び出しベルが鳴ったら自ら取りに行きます。バーガーメニューは4品+ヴィーガンバーガー1品。さらにサンド4品などもあり。今回も「3本勝負」で参ります。まずは基本の「クラシックバーガー」から。

「CLASSIC(クラシックバーガー)」単品1,200円/セット1,700円。シングルパティも注文可。値段は単品860円/セット1,360円

早速ですが、ここでポイント1……ウェイバックバーガーズのバーガーは基本「パティ2枚のダブルバーガー」です。ダブルにすると単にボリュームが増すだけでなく、ビーフの味や風味が2倍、3倍に強調されるメリットがあります。USビーフ94gパティが2枚なので、ビーフだけで188g。専用の調理具(コテ状のもの)を使ってスマッシュしながらグリルしています。バンズはてっぺんにクープ(切れ込み)が入った特注品。さらに分厚く切ったトマト、刻んだオニオン、レタス、ピクルス4枚、チェダーチーズ2枚、ケチャップ&マスタードが入る一品。

「つぶつぶいっぱいオリジナルレモネード」セット300円は強い酸味が“バチッ!”と来ます

まずは2枚重ねのパティから漂う、芳ばしいビーフのフレーバー。かぶりつけば、やわらかな食べ口の中に噛み締める挽肉の粒感があり、終始主役にふさわしい存在感を発揮しています。一方、バンズはしっとりウェット系。ソフトな食べ口で、でも、口の中で「だま」にならず、絶妙な生地感でパティをサポート。ここでハッとするのがトマトの温度……冷たいです。熱いパティの上に冷たいトマトがのるバーガー。これがポイントその2です。

確認したところ、この温度は「仕様」だそうで、敢えて低温のままのせているそう。この低温がフレッシュなトマトをより一層フレッシュに感じさせて、ジューシーこの上なし。よーく味わうと、このバーガー、厚切りトマトを筆頭に、端々から食材の質の高さが感じられます。とにかくモノが良いですね。ケチャップとマスタードはもう少し減らしても良いかなと思いましたが、それを除けば、やさしく上品な食べ口。のどごしのいいバーガーです。

「CHEEEESY(チージーバーガー)」単品1,350円。シングルは900円。後ろの「チキンテンダー」800円はバッファローソースが激辛。「キャラメルシェイク」800円を飲んでほっと一息

対照的なのが「チージーバーガー」。マフィンで挟んでいるように見えますが、然に非ず。クラウン(上バンズ)を上下逆さまに引っ繰り返してのせています。これも「仕様」です。バターオイルを塗ってトーストした裏面が表に来て、食べるとシャリッシャリ! バターの風味プンプン! ほぐれのよいUSビーフパティ2枚にチェダーチーズ4枚。生野菜は一切入らない、パンと肉とチーズだけのバーガー。これがまぁ~とんでもなく“ギルティ”な味わい!「そう来なくっちゃ」というぐらいの背徳感! これは理屈抜き。何も考えないで食べておいしいバーガーです。よくぞ作った! 快作!

「NEXTフォアグラバーガー」1,800円。通常メニューの「グリルドマッシュルームネクストバーガー」をベースにした期間限定ヴィーガンバーガー

最後は「NEXTフォアグラバーガー」。期間限定メニューですが、非常に重要な一品なのでご紹介します。大豆などを主原料とする「代替肉パティ」と、新開発の「植物性フォアグラ」をヴィーガンバンズで挟んだ、植物性食材のみからなるヴィーガンバーガーです。調理工程も動物性食材を使ったメニューとは完全に分けています。

まずはフォアグラの話から。カモやガチョウに無理矢理エサを与えて太らせる生産方法が議論を呼び、生産・販売を禁止する国が相次いでいます。日本のフレンチ業界も実はフォアグラが枯渇状態だそうで、そんな中、俄然注目されるのが植物性フォアグラ。ドクターフーズ社が開発した「ヴィーガンフォアグラ」の主原料はカシューナッツです。日本の「麹」を使って発酵させたもので、フライパンで焼けるようになったのが大きなポイント。パティはネクストミーツ社の「NEXTバーガー」パティ。こちらは大豆、エンドウタンパクなどが主原料のサイズ80g。これらを挟むのは生地にほうれん草を練り込んだヴィーガンバンズ。

ソテーしたヴィーガンフォアグラ一切れがパティの上に。ほうれん草のヴィーガンバンズは、むしろ「よもぎ」に近い風味

味付けは和風バルサミコソース。テリヤキソースをベースにバルサミコ酢、トリュフソースなどを加えたもので、金山寺味噌のような強い甘味を感じます。あとはソテーしたマッシュルーム、生オニオン――という内容。ヴィーガンフォアグラはねっとりクリーミーで、なるほどフォアグラ的な余韻あり。一方、パティも実に収まりが良く、一個の「ヴィーガン食」としてよくできています。1,800円はやや高めですが、いまどきのヴィーガンバーガーの実力を知るには絶好の一品に思います。8月末までの期間限定販売。

夏季限定のミルクシェイク「とろけるチョコミント」700円

この植物性フォアグラを開発した「ドクターフーズ」と代替肉の「ネクストミーツ」、さらに、ウェイバックバーガーズの日本ならびにアジアの運営法人は、実はグループ会社。各社は今後、国内はもちろんアジア諸国、米本国、さらには全世界へ向けた、代替肉・培養肉のビジネス拡大を目指しています。ですからこの表参道の日本1号店は、広く“アジア”の旗艦店。世界の食糧事情の未来を見据えたフードビジネスの入り口でもあるワケです。

一軒のバーガー屋から思わぬ壮大な話が出て来ました。“way back”とは「戻る」「帰る」といった意味。つまり「原点に立ち返ろう」という名のハンバーガーショップですが、日本のウェイバックバーガーズは、同時に“way forward”(前へ)な店でもあるという。表参道の中心で、食の過去と未来について、ぜひ考えてみてください……な~んて話の前に、まずはご賞味を! ハンバーガーはかぶりついてこそ!

※価格はすべて税込

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

取材・撮影・文:松原好秀