【じっくり食べたいハンバーガー】第31回「バーガーズニューヨーク」

さて今回は、本連載では「バーベキューキムラ」以来の炭火焼きのお店です。過去30回の連載で炭火の店の登場回数はたった3回。実際、ハンバーガーを炭火で焼く店はかなり限られていまして、鉄板を使う店がほとんど。直火の店もガスが大半です。そんな数少ない炭火焼きの店の中から、今回は「バーガーズニューヨーク(BURGERS NEW YORK)」をご紹介しましょう。

場所は横浜市保土ケ谷区。横浜駅から相鉄線で3駅目の天王町駅近くにあるお店です。店の前の通りは旧東海道。江戸の昔、この辺りは宿場町でした。そんな歴史ある街道端のハンバーガーショップですが、上の写真をご覧ください……店内のこの質感! コンクリート打ちっ放しの壁に剥き出しの配管と分電盤。「工場萌え」の人などはすごく好きなテイストかもしれません。店が入るこちらの建物、以前は非常に特殊な用途に使われていました。それは……バナナを熟成させる果物倉庫。

バナナ倉庫を改装した建物1階。通路に配置されたテラス席は12席ほど

バナナはまだ青いうちに産地から出荷して、日本国内で追熟させます。その熟成に使っていたムロ(室)がこちらの建物の1階・2階部分です。現在、1階には飲食店が4店。その一番手前がバーガーズニューヨークです。

店内に席はありません。倉庫内部はすべてキッチンになっており、食事はその手前の通路に並べられた“テラス席”でします。常に日陰で雨の日も使えて、すごく夏向きな席だと思います。

お菓子も販売。自家製クッキーはダブルチョコレートとシリアルの2種。そしてトリュフチョコが美味!

オープンは2013年。赤堀さんご一家が営んでいます。発案者はお嬢さんの未歩さん。米国ニューヨークに留学していた未歩さん。現地で食べたバーガーをヒントに、この小さなバーガー店をオープンしました。当初は未歩さんがリーダーシップをとり、ご両親がそれに従う体制でしたが、やがて“父”が大活躍するようになり、今では一家3人が一丸となってお店を回しています。いいご家族ですね。

バーガーメニューは10品+月替わりのバーガー1品。他にご飯もの3品、キッズメニューもあります。まずは最もシンプルな「ニューヨークバーガー」からいってみましょう。

「ニューヨークバーガー」(パティ120g)1,100円。サイドメニュー+ドリンク付きでこの値段。お値打ち!

生野菜はレタスのみのプレーンバーガーです。オニオンはフライドオニオン。トマトは入らず。あとは甘口のピクルスにマヨネーズ。パティは豪州牛120g。バンズはスタッフの今田さんが作る、炊いたご飯粒を生地に練り込んだ自家製。米は特別栽培米を使用。かぶりつけば「もむっ」と弾力あるバンズに、噛むほどに味を増すパティのコンビネーション。ソースなしで食べるとじんわりとした塩味。全体に自然な味付けです。ちょっと物足りないかな?と思い、ケチャップを足すと、酸味が増して一気にポップにまとまりました。それでもなお、ケチャップ味に負けることなく、肉の「かぐわしさ」が漂う――そんな炭火焼きバーガーです。

ガス火のバーベキューグリルをカスタムしたオリジナルの焼き場で調理

上の写真が炭火焼きの様子。まず鉄板で片面を焼いてから、炭火の上でグリル。途中で火から離して一旦休ませた後、再度グリルして焼き上がり。非常に手をかけ丁寧に焼いています。プンとスモーキーな炭の香りとしっかりとした肉の粒感が印象的。

炭火と言えば遠赤外線効果。輻射熱によって中からじっくり焼き上げるのが最大の特徴です。さらにガス火と違って水蒸気が出ないので、余分な水分を与えることなく、焼き鳥などはパリッと焼けるワケですが、反面、それが行き過ぎると、ややドライな食感に思えることも。それを踏まえて、おいしさがより際立つ組み合わせを考えてみました……。

「チーズチーズバーガー」(パティ120g)1,430円+スライストマト+自家製トマトソース増量=計1,595円。クリーム&チェダーのダブルチーズのバーガーをジューシーにアレンジ

それがこちら「チーズチーズバーガー」のアレンジです。トマトの追加とトマトソースの増量と、2つのトッピングを施してジューシー感アップ! ハンバーガーに艶と潤いが加わりました。まったりマイルドなクリームチーズにコリコリ食感の炭火焼きパティ。甘口のピクルスもパリッと歯ごたえよく、さらにフライドオニオンが咀嚼の端でシャリシャリとアクセントを利かせています。決め手は旨味抜群のトマトソース。トマトと言いつつ「ほぼオニオン」なソースですが、バーガー全体の潤滑油の役を果たしつつ、玉ねぎの甘い余韻を醸して、満点のパフォーマンス!

「ステーキバーガー」(240g)2,200円。120gパティの上にステーキ120g。ソースはオニオンステーキソースとテリヤキソースのダブルソース

そして極め付きの一品が「ステーキバーガー」。炭火で焼いたパティの上にステーキ120gがさらにのり、ダブルでスモーキー! 風味が実によいです。ステーキ肉はUSビーフの肩ロース。ご覧のように細かくカットされているのがポイントです。ステーキバーガーと言うと、豪快にはみ出したワイルドなものが多いですが、こちらのバーガーはコンパクトに食べやすくまとめられています。

ステーキをライスにのせた「ステーキオーバーライス」もおすすめ!

ステーキ肉独特の噛みごたえ。喉ごし。そこへ人懐っこくまとわりつくようなオニオンソースの甘味ととろみ。ソースはもちろん自家製。ここは赤堀家の“母”の見せ場。ミキサーを使わず、すべて手切りで玉ねぎをスライスしています。そのカットだけで2時間。完成までに半日を要する労作で、その甲斐あって実に旨味豊かに、ジューシーにステーキをまとめ上げています。食感の主役はステーキ。パティはそのステーキの迫力を増強するような役ですが、両者の力が合わさり、炭火焼きの香ばしさが存分に味わえる一品に仕上がっています。これはおすすめ!

「オレオミルクシェイク ニューヨークチーズケーキ」825円

最後はシェイクで締めましょう。フレーバーは定番5種+マンスリー1種。さらに数量限定の「ニューヨークチーズケーキ」なる変わったメニューがあります。凍らせたチーズケーキと牛乳をシェイクした珍品で……なるほど! チーズケーキ味。ブルーベリーソースなんか垂らすとさらによいかも。

建物の入り口の時点で、すでにスモーキーなバーガー店です。平日も週末も15時までの営業。コロナ禍以来、夜はやっていません。行ける時間帯の限られた、ちょっとレアなお店ですが、かぐわしき炭火焼きの世界をぜひぜひご堪能ください!

※価格はすべて税込

※外出される際は人混みの多い場所は避け、各自治体の情報をご参照の上、感染症対策を実施し十分にご留意ください。

※時節柄、営業時間やメニュー等の内容に変更が生じる可能性があるため、お店のSNSやホームページ等で事前にご確認をお願いします。

取材・撮影・文:松原好秀