銀座のど真ん中で発見した口福スポットは、魚介が主役のイタリアン!

「マグロが自慢のイタリアンがあるんだけど、どう? 行ってみない?」

 

そんな誘い文句に惹かれて訪れたのが、ここ。銀座の繁華街のど真ん中に潜む「オステリア チケッティ」だ。“潜む”とは言っても、別に隠れた場所にあるわけではない。いや、路面店ゆえ、むしろわかりやすいと言ってもいいぐらいなの>だが、周りのビルに埋もれてしまっているのか、仕事で頻繁に行き交っているエリアにもかかわらず、今まで全く気付かなかった。オープンして2年近くの月日が経っているというのに。

「店名のチケッティというのは、おつまみのこと。スペインでいうタパスみたいなものですね。ここでは、そんなチケッティをいろいろ取り揃え、ワインと一緒に気軽に楽しんでほしいと思っています。」カウンター越しに笑顔で語るのは、シェフの石田大輔さん。

イタリアンの名店「アルポルト」で修業後、イタリアで7年間研鑽を積んだベテランだ。聞けば、ヴェネツィアの“バーカロ”と呼ばれる立ち飲み居酒屋をイメージしているとか。去年の12月にリニューアルした店内は、中央に大テーブルとやや高さのある椅子が設けられ、どこか角打ちのような気さくさがうれしい。

黒板メニューに目をやれば、「本日鮮魚のカルパッチョ」980円や「芝海老フリット」690円、「シチリアパルマ式 真イワシのベッカフィーコ」990円(1個)に「カジキマグロのハラモ 香草パン粉焼き」1,380円などなど。魚介系小皿前菜がずらり。その充実ぶりに目を丸くしていると、石田シェフが一言。

「うちで扱っている魚介は、全て豊洲の仲卸『やま幸』さんから仕入れています」。なるほど! マグロが看板料理であるのも道理だ。やま幸〜!! 食、特に寿司にちょっと詳しい方なら、その名を耳にしたことがあるだろう。そう、今やマグロ仲卸店のトップともいうべき実力を持ち、東京の、否、日本のマグロ業界を牽引する一軒と言っても過言ではない、まさにカリスマ的存在だ。

当然ながら寿司屋からのラブコールは熱く、引く手も数多。東京だけでも「青空」、「紀尾井町 三谷」、「はっこく」等々名だたる寿司の名店が、こぞって「やま幸」のマグロを使っている。そんな寿司の名店御用達のマグロを、なんとイタリア料理店で、しかもリーズナブルに食べられるのだから、これはちょっと見逃せない。

贅沢に召し上がれ。寿司の名店から熱いラブコールを受ける「やま幸」の本マグロをイタリアンで

「豊洲やま幸の生本マグロ  イタリア産魚醤コラトゥーラとシチリアのオリーブオイル」

「豊洲やま幸の生本マグロ  イタリア産魚醤コラトゥーラとシチリアのオリーブオイル」。黒板メニューのトップに燦然と輝くメニューがそれで、取材時の本マグロは長崎産。もちろん、天然だ。シチリアでもマグロを生で食べることがあるそうで、現地の食べ方を「チケッティ」風にアレンジしたものだ。

 

小皿に盛りつけられてお目見えしたマグロは、赤身が2枚。この一枚が思いのほか大きく、カットも厚め。1cm弱ぐらいはあるだろうか。重さにして約70g。鮨にしたら2〜3貫は取れそうだ。このクオリティ、このボリュームで一皿1,290円から! これはかなりのお値打ちだ。

艶々とした光沢を放ち、しっとりと潤いを帯びたその一切れを口にすれば、舌に吸い付くようなウェットな食感の中、コラトゥーラ特有の多重的な旨味が赤身ならではの鉄分の香りやコクと絶妙に絡み合いつつ味蕾(みらい)に広がる。

 

オリーブオイルで軽くマリネしているせいだろうか。後に残るやや酸味を帯びた余韻が不思議とワインを呼ぶ。白ワインもいいが、この店なら、イタリア生まれの赤スパークリングワイン「ランブルスコ」がおすすめだ。甘さを抑えた微発泡のそれは、飲み口も軽やか。ぶどうジュースのごとくゴクゴクと飲めてしまいそうで、私のような下戸には、ちょっと危ない酒かもしれない。

「季節のイカのアーリオオーリオ ソテー カラスミ かけ」

また、「季節のイカのアーリオオーリオ ソテー カラスミ かけ」1,180円〜も人気のメニュー。オリーブオイルとニンニクで軽くソテーしたヤリイカは、炒め加減も塩梅よくムッチリと柔らか。アスパラガスのシャキッとした食感とも好相性な上、そこにたっぷりのカラスミとくれば、もうおいしくないわけがない。ワインが進むこと請け合いだ。

「桜海老の小さなピッツァ」とワイン「ランブルスコ」

その他、おつまみ感覚で楽しめる「桜海老の小さなピッツァ」1,360円や、わずかに加えたレモンが清凉感を呼ぶ「ズワイガニと枝豆の冷製スパゲッティ ジェノヴェーゼ」2,480円なども石田シェフおすすめの自信作だ。

「ズワイガニと枝豆の冷製スパゲッティ ジェノヴェーゼ」

アペロ気分で軽く一杯やるも良し、小皿前菜数品をワインとともに、パスタでフィニッシュも良し。もちろん、メインも頼んでガッツリフルコースを堪能するもまた楽しい。TPOに合わせて使いこなせる勝手の良い一軒と言えそうだ。

※メニューは、その日の天候・入荷状態によって異なります

※価格はすべて税抜、2019年10月1日の消費税増税後の価格となります

 

取材・文:森脇慶子
撮影:外山温子