なんだか最近目にする機会が増えた気がする……そんな、“今まさにキテる”フードを紹介する不定期連載。今回は、現在ブレイク中の“チョコミント”フレーバーのスイーツと、そのブームの秘密について、お菓子の歴史研究家の猫井登さんに教えてもらいました!

【今これがキテる!】~チョコミント編~

「チョコミント・フレーバー」の歴史〜日本でブームに至るまで

チョコミントブームの最大の特徴は、チョコミントという特定の「商品」がブームとなっているわけではなく、チョコミントという「フレーバー」がブームとなっている点にある。

 

では、「チョコミント・フレーバー」は、いつ頃、どのように登場したのか? 日本では、「B-R サーティワンアイスクリーム」が昭和49年4月23日、一号店としてオープンした目黒店でチョコレートミントフレーバーのアイスクリームを販売したのが始まりとされることが多い。世界的にはどうなのか? 少し視野を広げて、チョコレートの世界史をひもといてみよう。

写真:Getty Images

チョコミント・フレーバーは、海外では、いつ頃からあったのか? カカオが中米からヨーロッパ・スペインにもたらされた16世紀初頭、カカオは苦く、脂っこい「飲み物」だった。飲みやすくするためにさまざまな工夫がなされ、最終的には砂糖を加えて甘くして飲む方法が広く浸透していくが、その過程でハーブを合わせることも考えられ、ミントも試された可能性は大いにある。

 

その後、19世紀半ば、固形チョコレートが登場し、チョコレートは「飲み物」から「食べ物」へ変貌していく。19世紀後半、固形チョコレートは、より舌触りの良いものへと改良が加えられ、20世紀初頭には、チョコレートにナッツなどを合わせる、いわゆる「ボンボンショコラ」が考案される。

 

このような中、1920年頃に、アメリカにおいてチョコレートにミントを合わせたフレーバーが登場し、1940年に「ペパーミントパティ(Peppermint Pattie)」、1949年に「ジュニアミンツ(Junior Mints)」といった商品が発売されて人気を博し、現在では全米菓子協会承認の「ナショナル チョコレート ミント デー (National Chocolate Mint Day)=毎年2月19日」まで制定されるに至っている。

 

イギリスにおいても、1962年に「アフターエイト(After Eight)」、1968年に「ミントマッチメーカーズ(Mint Matchmakers)といった商品が登場し、大人のお菓子として人気を得た。

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B-R サーティワンアイスクリームのチョコミント   出典:sword19841229さん

さて、再び、日本のチョコミントブームに話を戻そう。1974年に登場したチョコミント・フレーバーは、「B-R サーティワンアイスクリーム」がその後もレギュラーフレーバーとして年間を通じて販売を続けたこともあり、徐々に浸透していく。1999年には、「ガリガリ君」で有名な赤城乳業がチョコミント・フレーバー商品の販売を開始。2016年頃には、スーパーやコンビニ、スイーツチェーンで販売されるチョコミント・フレーバーのスイーツのバリエーションが増加していく。

 

チョコミント・フレーバーの認知度を一気に広め、ブームへと押し上げるきっかけとなったのが、2017年8月8日放映のTBS「マツコの知らない世界」といわれている。

 

チョコミントで精神を安定させるという大学生が登場し、定番商品のほか、自作のチョコミント・フレーバースイーツを紹介。最後に、B-R サーティワンアイスクリームのチョコミントアイスをマツコ・デラックス氏が気に入ったところで、終了。着ていたパーカーのほか、リュック、スマホケースに至るまでミントグリーンという大学生の個性的なキャラクターも手伝い、話題となった。

写真:Getty Images

そして、全国的な猛暑が続いた2018年の夏、チョコミントは大ブームとなった! メーカーにより発表内容は異なるが、5年前に比べて、チョコミント・フレーバー関連商品の売上は1.5倍〜2.0倍に拡大したといわれる。

 

売上が伸びれば、各社は新たな商品を開発し、提案してくるわけで、アイス以外でも、飲み物、菓子、パンなどでも、チョコミント・フレーバーの商品が急増中である。商品数が増えれば、消費者の選択の幅も広がり、愛好者も増えていく。まさに、チョコミント・フレーバーは、人気上昇のスパイラルに乗っているのである。

「チョコミント・フレーバー」ブーム拡大の理由とは?

さて、全体の流れがわかったところで、チョコミント・フレーバーがブームとなった背景、理由を分析したい。

1. ラインアップが豊富になり、店頭で目立つようになった

まずは、上記で述べたとおり、メーカー各社より新商品が提案され、アイスにとどまらず、クッキーサンド、ブリオッシュ、ベーグル……など、チョコミント商品の多様化により店頭で目立つようになったことが挙げられよう。

2. 印象的な色→コントラストが強い色の組み合わせはインスタ映えする

チョコミントの見た目は、青×黒。これが、チョコミントブームを主に形成する若者層たちには「カワイイ」と認識される。可愛さのほか、色合いの持つ「新鮮さ」、独特の「未来感」も、チョコミントのビジュアルには備わっているとされる。若者層は、「おいしそう」という観点と同じくらいインスタ映えする「ビジュアル」も重視する。

写真:食べログマガジン編集部

3. 刺激的な味わいがトレンドとなっている

近年のコンビニ商品などの売れ筋を見ると「強炭酸系」の炭酸飲料がヒット、カラムーチョの人気が再燃、山椒や花椒などのシビレ系やブラックペッパー味が人気となるなど、より刺激的な味わいを求めるトレンドがある。料理の世界でも、唐辛子が利いた四川やタイ料理、スパイスをたくさん使うインド料理などが人気となっており、外国の刺激的な味も、受け入れるようになっていることも理由として考えられるだろう。

4. 論争が起こることで認知度が高まった

チョコミント・フレーバ―ブームの特徴は、「おいしそう」「可愛い」という「肯定」意見だけではなく、「歯磨き粉の味」という「否定」意見が大きくぶつかり合うところ。チョコミン党とも呼ばれる「肯定派」とアンチチョコミント・フレーバーの「否定派」という対立軸が明確で、ネット上で論争が起こり、盛り上がり、さらに認知度やブームを押し上げていくという流れがある。

 

そんな大ブーム中のチョコミント・フレーバーの商品の中から、その魅力を堪能できるおすすめのスイーツを紹介したい。

専門家がおすすめするチョコミントスイーツはこの3つ!

1. 「クロスロードベーカリー 渋谷店」のブリオッシュ君 チョコミント

クロスベーカリーは、恵比寿に本店を持つ人気のベーカリーカフェ。ブリオッシュ君はこちらのマスコットキャラクター。

こちらで注目なのは、渋谷店で限定販売している「ブリオッシュ君 チョコミント」。ふわふわのブリオッシュ生地に、チョコチップ入りのミントの白あんを挟んだもの。ミントは穏やかで、爽やかな甘さ。キュートなルックスが人気の逸品!

2. 「コールドストーン クリーマリー サンド ヒカリエSinQs店」のミントミントチョコミント

アイスクリームで有名な「コールド ストーン クリーマリー」の新業態。アイスクリームをクッキーでサンドするのではなく、バタークリームをサンドしているのが特徴。要冷蔵商品だが、常温でのテイクアウトも可能。

 

こちらの商品は、上下を固めのココアクッキーにすることでクリームを挟んでも湿気ないように工夫がされている。ミントクリームは、ほど良い清涼感があり、中にはチョコチップが入っている。要冷蔵だが、食べる前に少し常温に戻すとクリームのコクがよく感じられる。

3. 「豪雪堂」の北見ハッカパン

グリーンパフェ
出典:グリーンパフェさん

豪雪堂は、豪雪地帯 北海道・北見の食材をサンドするコッペパン専門店。「北見ハッカショコラ」は、北見名物ハッカ(北見は、明治末期以降ハッカの街として有名で、ハッカ飴なども生産している)と、ミルククリームをベースに作ったハッカショコラを塗ったもの。ハッカの清涼感とチョコチップの甘みがベストマッチ。

 

「ミントとハッカは同じ?」と思われる方も多いはず。ミントというのは、一般的にシソ科ハッカ属の「総称」として使われ、そのうちハッカ(薄荷)というのは、日本で自生している和種のものを指す。なので、ハッカはミントの一種ということになる。ちなみに和名でいうと、ペパーミントは「西洋ハッカ」、スペアミントは「オランダハッカ」。

 

チョコミントの清涼感&爽快感で、暑い夏を乗り切りましょう!

 

教えてくれた人

猫井 登

1960年京都生まれ。 早稲田大学法学部卒業後、大手銀行に勤務。 退職後、服部栄養専門学校調理科で学び、調理免許取得。ル・コルドン・ブルー代官山校にて、菓子ディプロム取得。フランスエコール・リッツ・エスコフィエ等で製菓を学ぶ。著書に「お菓子の由来物語」(幻冬舎ルネッサンス刊)「おいしさの秘密がわかる スイーツ断面図鑑」(朝日新聞出版刊)がある。

 

文・写真:猫井登