長野県・北安曇郡白馬村といえば、冬のスキーのイメージが思い浮かぶ人が多いのではないだろうか。しかし今、「白馬のグリーンシーズン」がすごいことになっているという。
前回の“天空のテラス”「ザ シティ ベーカリー HAKUBA MOUNTAIN HARBOR」に続いて、白馬のグリーンシーズンの“食”の魅力をご紹介しよう。
山の麓町で食べる自家製ベーコン
長年、白馬で洋食屋を営む「グリンデル」は、地元民はもちろんのこと、白馬に足繁く通うウィンターシーズンの観光客も通い続ける名店だ。
長野県と聞くと、そばを連想する人は多いだろう。ここ白馬も同様で、そば屋の数は少なくない。その一方で、せっかく白馬に来たのだから、「白馬ならではのものを食べたい!」と思うかもしれない。そんなとき、ぜひ訪れてほしいお店が、ここグリンデル。自家製のベーコンやソーセージをメインとした洋食の数々は、玲瓏たる後立山連峰(うしろたてやまれんぽう)に囲まれた山の町・白馬のイメージとピッタリ。
こちらはグリンデルの目玉メニューと言ってもいい「ベーコンステーキ定食」。まず、厚みがスゴい。少年マンガで主人公が食らいつくレベルの肉感である。そして、写真からも分かるように肉の照り輝き方が美しい。冬の朝の白馬岳山頂のごとくピカピカしている。
表面はカリカリ。噛めば噛むほど、肉の甘さが際立つ。燻製ゆえに「塩けが強いのでは?」なんて思うかもしれないが、塩味はほどよく、肉のうまみがしっかり感じられる。許されるのであれば、いつまでも噛んでいたい……。そんな気持ちになる、スモーキーさがくせになる味わい。
こちらはアラカルトで頼むことができる「スモークソーセージ」。グリンデルでは、「スモークチキン」「虹ますスモーク」「岩魚スモーク」など、自家製のスモーク料理を数多く揃えている。それぞれを食べ比べてみるのも面白いだろう。
それにしても、なぜこれだけのスモーク料理が並ぶのか?
店長さんにお話を伺うと、「かつて勤めていたスキー場の同僚が燻製を作るのがとても上手でおいしかったんです。その人から教えてもらううちに自分も燻製にはまってしまい、お店のラインアップに加えるように」とのこと。趣味が高じて、今や目玉商品になるまでの美味なスモーク料理を作り出してしまったというのだから驚きだ。
グリンデルの洋食はどれもボリューム抜群だが、味はとても繊細。洋食にありがちな、胃がもたれるという感覚はない。
また、自家製スモークは、お土産として購入することも可能だ。宿泊先のホテルでビール片手に舌鼓を打つもよし、帰郷先で白馬の景色を思い出しながら食べるもよし。「富士には、月見草がよく似合う」とは、 太宰治の短編『富嶽百景』に登場する名文句だが、「山の町には、燻製がよく似合う」と思えてならない。