“今ドキ”はオシャレな空間で新感覚なモツ料理を食べる!

店名の「kogane」は縁起の良い色とされる黄金色から名付けた

 

店があるのは東京・外苑前から7〜8分歩いたあたり。一見、モツ×燗酒の居酒屋とは思えないその店構えに、「ここ何のお店?」「え、モツだって」「おもしろそうだから入ってみようよ」と通りがかった人々が扉を開けて入っていく。外観同様、内装もかなりスタイリッシュでさすがは青山という感じ。入ってみると噂どおり1〜4人で来ている女性客が多く、男女比は4:6くらいだろうか。確かにここなら女性ひとりでも楽しめる雰囲気である。

 

カウンター、テーブル、小上がりがあるシンプルでスタイリッシュな店内

 

こちらではモツ料理と日本酒、特に燗酒をおすすめしているとのことだが、冷酒の銘柄もなかなかのもの。さらに「国産有機レモンの濁りレモンサワー」や専用サーバーから直接注ぐ「メーカーズマークハイボール」、ソムリエが厳選した日本のナチュールワインも30〜40種類あり、日本酒以外もかなりの充実度である。

 

料理は「白い牛スジ煮込み」「特選和牛もつ鍋」などの定番から「ブーダンブラン(モツ入り白いソーセージ)」「ローマ風牛モツのトマトソース」のような変わり種まであり、さらには「ポテトサラダ」や「アジフライ」といったモツが苦手な人でも楽しめる多彩なメニュー。おまけに塩辛や自家製ベーコンなどの酒肴は400円からとくれば、これだけ賑わっているのも頷ける。

 

まるで豪華なお弁当のような「モツ料理5種盛り合わせ」。たっぷり3〜4人分はある

 

名物の「モツ料理5種盛り合わせ」は蓋を開けた途端「うわっ! 美味しそう」と言ってしまったほど、彩り良くバラエティ豊か。取材時は「ぷるぷる酢モツ」「牛ハツのタタキとパクチーのヤム風サラダ」「白センマイとクルミのサラダ」「ランプレドット(牛の胃を煮込んだフィレンツェの伝統料理)」「牛タン西京焼き」の5品。酢モツは韓国唐辛子を和えてマイルドな辛さをプラスしたり、ランプレドットはシェフがフィレンツェで食べた味を再現しながら栃尾揚げと合わせて和食テイストにしたりと、どれもモツの味わいを生かしながらも工夫が凝らされた新感覚の料理だ。

 

モツの脂で膜が張られ、ずっと熱々のままでいただける「テールスープのチャンポン麺」

 

料理はスタッフ全員で意見を出し合い決めていくそう。スタッフはイタリアンや韓国料理、和食とさまざまなジャンル出身とあって好みもいろいろ。「何でもできるのが居酒屋の良いところです。だからそれぞれの得意なものを出し合うことで、他の店にはできないことができるのです」とオーナーソムリエの渡部武志さんは言う。

 

5時間以上煮込んだテールスープは韓国料理のコムタンからのアイディアだ。とろっとろのモツが溶け込んだスープと、大阪の小さな製麺所で特別に作ってもらっているチャンポン麺が絡み、とんでもない相乗効果を発揮する。

ジャンルレスのモツ料理×燗冷まししながら飲む日本酒で“美味しい”が進化した!

「リードヴォーとトウモロコシのかき揚げ」。燗酒は冷めにくい徳利と、ロゴの入ったオリジナルの平杯で。食器にもこだわりがある

 

人気メニューの「リードヴォーとトウモロコシのかき揚げ」はサクッとした衣とプリップリのリードヴォー(子牛の胸線)が交互に現れる食感が見事。クリーミーなリードヴォーにトウモロコシの甘みとペコリーノロマーノチーズのコクが重なり、さらにたっぷりと胡椒を利かせ、まるでカルボナーラを思わせる味わい。

 

これはぜひ燗酒と合わせてみようとのことで、渡部さんおすすめの火入れ(※)した「悦 凱陣 手造り純米酒」をいただく。55度くらいの熱燗だとシャープでドライ感が強く、胡椒のピリッとした刺激を緩和しペコリーノロマーノに良く合う。40度ほどのぬる燗になると味にふくらみが出てくるので、クリーミーなリードヴォーにマッチしてくる。時間とともに変わる酒の香りと味によって料理の味も変わってくるとは何ともおもしろいではないか。そんな燗酒の楽しみ方を渡部さんにもっと訊いてみよう。

 

※瓶詰めする前に、お酒を低温加熱する加工法

1年経つと古酒になるという日本酒。初めての人はアルコール度数12%くらいのものから試すのが良い

 

「温度帯で味わいの変化を楽しむのが燗酒の醍醐味なので、最初は熱めの60〜65度につけたものを燗冷まししながら飲んでいただいています」と話す。こちらでは、香りが立ちやすく、火入れしたものより飲みやすく感じられる生酒の燗も楽しめる。その香ばしさと米由来の甘みがモツの旨味に合う。「それに燗酒は酔いやすく冷めやすいと言われているので、最初と最後に燗酒を飲むと翌日の体調が違うと思います」とも。

 

銘柄がわからなくてもご安心あれ。日本酒は季節ものなのでリストが作れず、ストックしているわけでもないので、飲み終えたら同じものは出せない。だから、「辛口が良い」とか「フルーティな感じ」とか、ワインと同じように好みを伝えるのがいちばんなのだそう。

 

厨房から見えるお客さまの笑顔と「美味しい」という言葉がいちばん嬉しいと言うシェフ

 

肉料理を中心にしたイタリアンを3店舗経営している渡部さん。だからこそ仕入れられる、これだけ鮮度が良いモツにもっとスポットをあてて世の中に出したい、と考えてできたのがこの居酒屋スタイルだ。新鮮で良質なモツでしか作れない、ジャンルを越えた料理の数々と温度によって様々な顔になる燗酒が出会って生まれた、枠にとらわれない楽しさがここにある。

取材・文/高橋綾子

撮影/三好宣弘(RELATION)