香港で大人気の女性シェフのお店が、初の海外店舗を西麻布にオープン

西麻布の「CHOY CHOY KITCHEN」の厨房に立つグレース・チョイさん

 

グレース・チョイさんは、香港の食通の間で話題の女性シェフ。2011年に香港で開業した隠れ家レストラン「CHOY CHOY KITCHEN」は、CNNの「香港プライベートキッチン10選」にランクインする人気店です。グレースさん自身の人気も凄まじく、Facebookのファンは50万人を超え、レシピ本は2019年の「グルマン世界料理本賞」を受賞したほど。そんな彼女の前職は、香港のエリートOL。幼少の頃からの料理好きが高じてシェフに転身した情熱や、独自のレシピを惜しげなくシェアする気前の良さも人気の理由です。

香港の市場で早朝買った食材を持って移動中のグレース・チョイさん (C) Alice Ngan

 

3月22日にオープンした西麻布店は、クオリティの高い料理とサービスを提供するため、香港と同じく1日数組のゲストを手厚くもてなすスタイル。そもそもグレースさんが東京に進出したのは、中国料理の真髄を伝えたいと思ったためなのだとか。

化学調味料不使用、旬の味を堪能できる嬉しい料理

そんな彼女が自ら腕をふるうおまかせコースは、前菜からデザートまでの全5品(1万5千円〜/税別)。上海出身の母上と香港出身の義母上から受け継ぐレシピも取り入れて研究を重ねた料理は、香港の伝統料理がベースです。

白い大理石のシェフズカウンターは10席、テーブル席は12席。グレースさんが料理を始めると、店内の空気は次第にライブのような熱気を帯びはじめます

 

旬の食材を生かした料理は、日本の一般的な中国料理と比べると驚くほどやさしい味わい。たとえば牛ばら肉と大根をクリアなスープで煮込んだ「Choysignature Stewed(牛のブリスケットと大根の香港風スープ煮込み)」は、おでんのように柔らかな大根に牛バラの旨みが染み、八角や柑橘の皮がほのかに香る一品です。

「Choysignature Stewed(牛のブリスケットと大根の香港風スープ煮込み)」。日本で提供しているお店は稀ですが、香港ではおなじみの伝統料理。ワインとの相性も抜群  (C) Alice Ngan

 

おまかせコースの中には、香港人が好む白身魚の蒸し物が登場することもしばしば。80年代の代表的な料理である、丸ごと1尾を蒸した魚に高温の油とネギ、甘めの醤油をかけ、香りをつけたものも提供します。白身魚のあっさりとした旨みをネギと醤油の香りが引き立てる蒸し物は、シンプルな直球のおいしさ。蒸したての身を取り分ける時に立ち上る、ほのかな湯気と香りもごちそうです。

香港ではハタを用いるところ、東京では鯛などの旬の白身魚を使用  (C) Alice Ngan

 

新鮮な鶏をオリジナルの醤油ソースに浸しながらじっくり火入れした「Poached Soy Sauce Chicken(国産鶏の中華風醤油煮込み)」は、香港でも評判のグレースさんの自信作。彼女が香港の義母上から受け継ぐ醤油ソースがしみた鶏肉は、しっとりと柔らかく、白いごはんが進む味わいです。

現地でも人気の一品。やさしい醤油味の鶏肉は、だれからも好かれる味です (C) Alice Ngan

 

西麻布の路地に面した扉の奥に広がるのは、心づくしの料理でゲストを手厚くもてなす“香港の隠れ家レストラン”の世界。ちょっとした旅行気分で、西麻布を目指してみてはいかがでしょうか。

取材・文/小松めぐみ